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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第96話 どうして雫と一緒に風呂に入れんのだ

 リンの自己紹介は受け入れられ、宴会場はまた賑やかになった。飲んで食べて歌って、ある程度のところで歓迎会はお開きになった。

 座敷で寝ている老人たちを尻目に、リンたちは屋敷の大浴場へと向かった。


 ささっと服を脱いで、雫とまひるとアリスの三人は露天風呂に飛び込んだ。旅館と見紛うほどの岩風呂は、黒みがかった半透明の温泉で満たされていた。


 岩に背中を預けた雫は、だらんと湯に浸かっていた。


「ふわぁ、お家に温泉があるとかチートすぎるぅ」


 まひるは湯に口を沈めて、ぶくぶくと泡を吐いた。


「ですけど、リンさんがいないのは、ちょっと寂しいです」


 全身を真っ赤にしたアリスは、岩に座って月を眺めていた。


「混浴指定でわぁ、ガーディアンもやむなしデぇす、うひぇ」


 ちゃぷちゃぷと湯の流れる音が、露天に響いていた。



 動きやすい服に着替えてから、大浴場の入口に座り込んでいるリンは、当初はあぐらをかいて、しかし考え直し、今では膝を抱えていた。


 股を開いて座るのは、まるで男のようだから。


 巷では体育座りともいうその姿勢で、目を光らせる。蟻の一匹ですらも叩き潰す、特にオスはなにがあろうとも通さない。人間ならばなおさらだ。


 屋敷に仕える者が通るたびに、視線を向けられた。中には「いじめられてるのかい?」などと心配してくる者もいた。


「その発言は快く思いませぬ。某は自分の意志でここを守護しているゆえ、どうかお気になさらず」


 伝えると、誰もが首を傾げて去っていった。


 そうやって人払いをしていると、じきに往来は落ち着いた。静かになると、かえって胸の奥がざわついた。


 雫は今頃、身体を洗い終えて湯船に浸かっているだろうか。襲撃はないだろうが、同行者が怪しい。

 まひるはさておき、アリスに良からぬいたずらをされていないだろうか。身体検査などと称して身体の至る所を……太ももの側面を、拳で殴った。


「今日限りになるよう、対策を考えなければ」


 普段と勝手が違いすぎる。なぜ混浴なのだ、なぜ守護が必要なのだ。


 なぜ、一緒に風呂に入れないのだ。


 膝をより一層深く抱え込んだ。腹が出ていない上に筋肉にも乏しいから、膝頭が胸に接触した。


 歯ぎしりしていると、また人がやってきた。通りすがるのではなく、入口の前で足を止めた。

 毛の多い、男のすねだった。


「失礼、この時間は男子禁制ゆえ、出直されたし……む」

「あれぇ、リンちゃんじゃん、なにやってんの?」


 山に置いてきたはずの集だった。風呂桶などを抱えて、のほほんと立っていた。


「気安く呼ぶな。雫たちが入浴中のため、ここを守っている。引き返せ」

「えぇ、わざわざ来たのに、参ったな、だめかぁ?」

「池の水でも浴びていろ。そもそも貴様にも住居はあるはず、なぜこちらに来た」

「こえぇ女に泥だらけにされちったから、屋敷の風呂で汗流そうかなって。ここ実は俺の実家みたいなもんなの、知ってた?」

「知らん」


 顔を逸らした。


 集は『湯』と書かれたのれんの奥を覗こうとした。


「あの子たちが湯浴みしてんのかぁ」

「貴様」


 リンは立ち上がった。クナイを抜いて、集の首に突きつけた。


「もう一度やるか、今度こそ命はないぞ」

「リンちゃんさあ、屋敷内で流血沙汰を起こすつもり?」

「それがどうした。罰だろうがなんだろうが甘んじて受けよう。命に代えてもこの場は死守させてもらう」

「まじかぁ。ならいいや、勝てる気しねえもん、おっかねえ」


 集はぼやくように言って、その場に腰を下ろした。入口の右側をふさぐように、あぐらをかいていた。


 リンは集を睨んだ。


「なんのつもりだ」

「風呂が空くまで守護に付き合うよ、女の子一人じゃ酔っぱらいの相手とか面倒だろうし」

「屋敷内で性欲に負ける者がいるとは思えんが……まあいい、大人しくしていろ」


 こちらは座らずに、立っていることにした。肩で入口を塞ぐようにして、壁に寄りかかった。


 横目で集を見た。なんとも面倒くさいやつだ。男とは、こんなにガサツで配慮のないものだったか。金輪際近づかないように強く言っておくべきだろうか。

 特に雫には近寄らせてはならぬ、絶対に。


 目を瞑って、時間が過ぎるのを待った。


「なんかさあ、懐かしいんだよねえ、君見てっと。女の子っていうかさ、ダチと話してる気分なんだよねぇ、あいつ元気してっかなあ」


 しかし、集は突然そんなことを口にした。

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