十四段 青紅葉㋥
この日、火宮神社では祭事が執り行われていて、親戚一同が神社に集まっていた。千代は歳下の従兄弟の面倒を見る係になり、祭事の間は従兄弟と一緒に風波公園で遊ぶ事にした。
連絡を入れると、さくやと楓も快く手伝いに来てくれた。しかし、従兄弟は双子の男の子。中々のやんちゃ盛りだった。
「えっと……こっちがひさし君! こっちがこう君だね!」
「違うよー!!」
「あれ!? 逆?」
さくやは、そっくりな上、同じ服装の双子を、中々、判別できなかった。
「なに言ってるのぉ。こっちがひーちゃん、こっちがこーちゃんで合ってるでしょ!」
「ばれたー!!」
見慣れた千代は双子の見分け方が分かるらしい。
「口を開いているのがひーちゃんだよ☆」
「それ状況次第じゃないっ!?」
さくやは子供と目線を合わせるように、屈んで挨拶する。
「私、さくや。さくやお姉ちゃんだよ。宜しくね」
「おっぱい!!」
「きゃっ!」
突然、さくやの両胸に、それぞれが触ると、双子は逃げるように公園内へ駆け出した。保護者、千代が、その後を追う。
「こらー、そう言うことしなのー! 千代お姉ちゃんにはしないに、どうして他所様にやるのー!」
「こ、転ばないようにねーっ!」
さくやは預かった子供(と千代)が怪我でもしないか、ちょっと心配だった。
一方の楓は、相手が男の子と言う事で、一緒に遊ぶのが乗り気ではなかった。はしゃぐ双子に振り回されているさくや達を、遠巻きに見守る。
「まぁ、このくらいの男の子ならいいか……」
双子は六歳との事。流石に幼く、弟のように変に意識する必要はない。
部活での出来事もあり、最近、異性へのアレルギーが強まっている楓だったが、一先ずは安心した。
風波公園は海の近くにある公園で、青々とした葉が生い茂る木々の影に入れば、夏でも涼しく、時折、吹いて来る海風が心地良い場所だ。
しかし、双子は風情を楽しむより、もっぱら遊具で遊びたがった。
「そんな高い所、危ないよー。二人共、降りてー!」
さくやが、行動を過熱させないよう優しく言った。
「ほらっ、私、毛糸持ってきたの! 日陰であやとりでもしよー!」
「やだー!!」
やんちゃとは聞いたが、案の定、双子は全然、言う事を聞かない。落ちたら危ないからと言ったジャングルジムにどんどん登り、見ている方をヒヤヒヤさせる。
「こっこまで、おいで〜!」
「さくやお姉ちゃん登れないのー?」
双子が生意気にも煽る。
「あのねぇ。こっちの立場も少しは考えて……」
さくやは六歳の運動能力なら「このくらい平気かもしれない」と思ったが「何かあったら!?」と思うと、気が気ではない。少なくとも、おっとりとした子供だった自分は、この手の遊具のてっぺんまでは登れなかった。
「さくやちゃん。ここはわたしが助けに行くね!」
「お願い、千代ちゃん!」
千代が従姉妹のお姉ちゃんらしさを発揮し、ミニスカの機動力を活かしてジャングルジムを登り出す。尊絡みではない所為か、本日のスカートが長いさくやは、万が一に備えて下で待機する。
「今行くからねー!」
「ぎゃー! 千代お姉ちゃんが登って来たー!」
「捕まるぞー! 逃げろー!」
千代が登って来ると、双子は素早く、その反対側から降り始めた。ある程度の高さまで降りたら、飛び降りて、着地ですっ転がる。
「ちょっとっ大丈夫っ!?」
さくやは慌てて駆け寄ったが、双子はケロッとしていた。
「よかったぁ……。怪我はない?」
肝を冷やしたさくやは、着いた砂を払ってあげようとしたが、ジッとしてくれない。
「あーあっ。折角、いいお洋服着てるのにっ」
「ちょっとっ二人共降りちゃったの!? 待って……えっとっ……えっとっ…………っ」
てっぺんまで登ったが、徒労に終わった千代は、戻って来ようとしていたが、まごまごし出す。
「千代お姉ちゃん、降りられなくなってるー!」
「高い所、怖いんだー!」
さくやは「まさか」と思ったが、千代は、へっぴり腰で両足を少し広げた、ちょっと格好悪い体制で固まっている。
「パンツ見えてるー! パンツ! パンツ!」
「いちごのパンツだー! なんで、いちごなのー!?」
下からミニスカートの中が見え、双子は真下に入って大喜びする。千代は真っ赤になりながらも、怖いので手を離せず、覗かれ放題だった。
「きゃーっ見ないでよー! 助けてーっ!」
「わはははははは!!」
「千代ちゃん……」
中学生のお姉ちゃんとは思えない有様に、さくやは顔を伏せた。
「こらっ! 変なトコロ見るんじゃないの!!」
突然、楓の怒った声がして、さくやがびっくりする。
「お姉ちゃん達を困らせないの!」
「えー! だって面白いよー!」
「お姉ちゃんなのに、降りられないんだよー!」
「いい加減にしなさい!!」
楓は双子を叱り付ける。
「女の子を辛かうの禁止! パンツとかも見ちゃだめ! そもそも、そう言うのに興味を持つのも禁止!」
楓はキツく言い、ジャングルジム中の双子を少々、萎縮させた。
「まあまあ。男の子だし、多少はね……」
さくやが言ったが、楓に睨まれる。
「先輩達みたいな大人がいるから、助長した行動を取るんです!」
さくやはVネックを気にする。
「健全な教育をすれば、この世にヘンタイなんて生まれない筈……!」
楓は何かを決心したようだ。腰に手を当て、既にヘラヘラしている双子を見下ろす。
「あの……。早く助けてよーっ!」
てっぺんに放置されている千代が、泣き出しそうな声を上げた。
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