十四段 青紅葉㊀
r指定を考慮し若干カットしています。ノーカット版はカクヨムで。
「えっ!? 男子と……ですか?」
楓はスタートで重要なバサロ泳法を練習していた。背泳ぎでの潜水は、当然、仰向けで行う。難易度が高く、得意な部員に指導を仰ぐ必要があった。
「サメ君は背泳ぎのエキスパートだから一番上手いし、適任だと思うよ」
部長が、背泳ぎ最速の部員を指導者に充ててくれるのは有難かったが、楓は男子に習うのは気が進まなかった。
――あの新入部員の所為だ……。
ちらりとプールに目をやる楓。
そこには教えてくれると思っていた女子の背泳ぎ選手がいたが、彼女は入部したばかりの男子を指導していて忙しい。手を引いてあげても沈んでいくカナヅチの一年坊が、彼女にとっては愛らしいようで笑っている。
――どこ見てるんだか……!
自分もカナヅチを克服する為に入部した楓ではあったが、あの男子は、間違いなく女子のハイレグのスク水が目当てであり、不純と決め付けた。
「分かりました……」
楓は仕方なく、三年の男子部員、サメ君こと、村雨と練習をする事となった。
「―服部だっけ? 確かまだ一年だよな……! まぁ、直ぐに上手くなるさ」
「お、お願いします」
爽やかな印象の村雨は、背泳ぎの選手だけあって背が高い。しかし「だからどう」と言う事はなく、楓は露出している足の付け根を少しでも隠す。
「よっ、オレも手伝ってやるよ!」
「潜水なら村雨よりオレのが速いからな!」
「お前らは潜水しか出来ねーだろ!」
困った事に、コバンザメのような男子部員も村雨にくっ付いて来てしまい、楓は非常に落ち着けない環境で練習する事となった。
「まずはどれくらい出来るか見てやるよ」
「は、はい」
一緒に水に入って、村雨達が並走しながら見守る中、楓は泳ぎ始めた。
「まずまずだな。一旦、水面で練習しよう。亀田、カメラ!」
「えっ、撮るの!?」
「自分でフォームを確認した方が速く上達するぞ」
村雨の提案で、楓は泳いでいる所を撮影して貰う事になった。女子部員の撮影に命を懸けている、男子マネージャーが召喚される。
「じゃ、浮いて。両手、真っ直ぐ」
「力抜いてー。リラックス」
「顎引き過ぎ。目線、上」
男子に囲まれ、プールサイドからカメラが向けられる中、楓は、言われるがまま仰向けで浮く。カラダを曝け出す格好にならざるを得なかったが、練習なので我慢するしかない。
「そのまま上下に波打って進んでー」
手先から足先まで、うねるような動きで進もうとする。「指導」と言う大義名分を掲げた村雨達が、楓のカラダを注視する。
楓は、とても集中できず、バタバタした動きになってしまう。
「焦るな、焦るな! もっとゆっくり!」
「は、はいっ」
村雨に注意され、楓はゆっくりになるが、動きが強張っている。
「ちょっとぎこちないなぁ。下半身、滑らかに動かして」
「きゃっ」
村雨の手が下半身に翳され、楓は触られるかと思いビクっとする。
「よしっ、このリズムに合わせろ!」
「……!! ……!! ……!! ……!!」
村雨はそのまま手を上下に動かす。楓は下半身の動きが手とズレてしまったら、触れられてしまうので、必死にタイミングを合わせた。
「―もっとダイナミックに動かしていいぞ」
撮った映像を見ながら、村雨が改善点を指摘する。楓は自分の水着姿を確認されるのが恥ずかしく、サッパリ頭に入ってこない。
その後も楓は全く集中できない。男子の目があるので、ハイレグが食い込んできても直せず、益々、精彩を欠いた。
――速く……終わって……っ!!
そう思ったが、中々、上達しないので、楓は長時間、みっちり指導されてしまった。
「もう限界だってばっ!!」
練習が終わりシャワー室に入った時には、とっくに楓の羞恥心は限界に達していた。
村雨達は終始、紳士的な態度だったが、楓はそんなの信じない。男子達は明らかにニヤ付いていた。
「ゼッタイ、変なトコロ見てた!」
これが女子同士なら、そんな疑いは掛からない。例え変な目で見ていたとしても、こんなに激しい気持ちにはならない。
「ゆ、許せないっ。まだ一年だよなとかっ! もっと成長できるとかっ!」
楓は村雨の言葉に過剰反応しつつ、順調に膨らむ自分の胸に触れる。
「男子なんてサイテー……! ヘンタイっ! ヘンタイっ! ヘンタイっ!」
ストレスを発散するように楓は言う。
「……なのに……どうして…………///っ」
――どうして、こんな気持ちになるの……っ♡!?
男子の存在が、文字通り楓の心を揺さぶってくる。
男子が居ないと、こんな複雑な気持ちにはならない。
出しっぱなしのシャワーの音が、楓には心地良く聞こえた。




