↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

十三段 勝負の赤㊀

 「抹茶パフェに抹茶ケーキ! 抹茶パンケーキも☆! 後、抹茶ドリンクもいいなぁ!」

 

 「抹茶あんみつと抹茶ジェラートは、どうです?」


 「食べ切れなくならないようにね」


 千代、楓、さくやは、抹茶スイーツキャンペーンで話題のメイド喫茶に来ていた。あれもこれも頼みたいが、お小遣いの限度額もあるので、オーダーを決めるのに時間が掛かる。


 「ごめんね。私、お月謝が高いの無理言って習い事してるから、お小遣い少なめなの」


 「大丈夫! 今日はわたしが奢るから! 巫女のバイトで稼いでいるし!」


 さくやに、千代は「大船に乗ったつもりいて!」と、ない胸を叩いた。


 「でも、今月は洋服買って使っちゃったって、言ってませんでした? 先月もだけど……」


 楓に指摘され、千代は真顔になった。千代はお金があると、直ぐに散財してしまうタイプだった。


 「だって可愛いかったんだもん、これ……」


 千代は、着ている赤いワンピースの裾を広げて見せ、衝動買いの言い訳をした。


 「うわーんっ、折角、来たんだから色々、食べようよー! ねっ、楓ちゃんも沢山、食べたいでしょ?」


 「あたしは別に……。パフェとあんみつとアイスとラテがあれば……」


 「じゃ、どうにか予算内で注文して、みんなでシェアしよっか!」


 スイーツ大好き千代と楓の意見を汲み、さくやはベストなオーダーを考えた。


 「でも良かった。さくやちゃん、こういうお店NGじゃなくて」


 「えっ、なんで? 別に嫌じゃないって。メイドさん可愛いよ」


 「そっちじゃなくて、さくやちゃん本物のお茶とか習ってるから、中途半端な和風とか認めない! なんて怒り出すかなぁって」


 「どんな風に見えているのよ私は……。そんな頑固者じゃないってっ。みんな好きに取り入れればいいよ。私だって、その道じゃ半人前だし」


 千代の心配は、完全に取り越し苦労だ。さくやは拘りが強いが、それは自分に対してだけだった。

 

 「そっちより、この店に私達が居てもいいのかの方が心配なんだけど……」


 さくやは周囲を見て、少しソワソワする。

 隣のテーブルでは、露出が多い、へそ出しのメイドさんが、男性客の口に付いたクリームを取ってあげている。男性客は完全にメロメロだ。その向こうのでは、過度に前屈みになってテーブルを拭くメイドさんのパンツが、丸見えだった。


 「サービス……すごいね…………」


 「中もフリフリ……千代先輩みたいだ…………」


 さくやと楓はリアクションの困った。

 お店は千代が好きな可愛い系だが、ちょっとH(えっち)だった。当然、お客は男性が殆ど。レジでは、気に入ったメイドさんのブロマイドも買えたりする。


 「あぁ、メイド服欲しいなぁ〜」


 「どこで着るんですか?」


 直ぐに欲しがる千代に、呆れて楓がツッコんだ。


 「ご注文の抹茶パフェ。抹茶あんみつ。抹茶パンケーキ。抹茶ラテです」


 暫くしてメイドさんが注文の品を持ってきた。ツイテールのメイドさんは、とても美人で、とても胸が大きく、とても見覚えがあった。


 「こ、今宵さん……! どうしてここに?」


 「あら、貴方達じゃない。私? ここでアルバイトをしているのよ」


 さくやは意外な場所で今宵に出会い、戸惑った。

 しかし、正直、とても良く似合っているし「いいなぁ」と思った。加えて、もうお金を稼いでいる事に、素直に尊敬する。


 「お嬢様方。シェアをするのなら取り分けて差し上げます」

 

 「け、結構ですっ。私達でできます」


 今宵はさくや達を揶揄っているのか、あくまでメイドを演じる。


 「はい、あーん♡」


 「あ、あたしには、そう言うのいらないですってっ!」


 楓がつい狼狽えた。


 「いいなぁ今宵さん! わたしもここで働いてみたい! 雇って! 雇って!」


 千代は、誰よりもメイド姿を羨ましがった。


 「残念ね。ここのアルバイトは高校生になってからよ」


 今宵が「だめよ♡」と言った。

 実は千代がこの店を気に入っている理由は、メイドやスイーツだけではない。


 「ここって和HOO(わふー)四十七士の会社が運営しているお店なんだよ! 働いてれば、スカウトされるかもしれないんだよ!!」

 

 「あら、貴方アイドル志望なの?」


 今宵は千代の趣味を初めて聞く。


 「志望っていうか、憧れてるっていうか……。アイドルは、わたしの理想……!」


 千代が真剣な表情で言った。


 「……それなら、丁度、美味しい話があるわよ♡」


 今宵が耳打ちをする。前屈みになった彼女の後ろ姿は、余程、絶景なのだろう、男性客の視線が釘付けになる。


 「ここのオーナーの話では、今度、四十七士に二期生を入れたくて、近々、そのオーディションがあるそうよ」


 「ほ、本当っ!? それ、わたしも受けたりできないのかな!?」


 「私もスカウトされたくらいだし、若い娘(こ)を探しているらしいから、貴方にもチャンスがあるんじゃないかしら」


 突然の重大情報に、千代のテンションが爆アゲする。


 「うそでしょっ!? 四十七士のオーディションが受けられる……っ!? 私、メンバーになれる!!?」


 「バイトが終わったら店長に話を通してあげるわ。まぁ、許可が出るかは貴方次第だろうけど♡」


 今宵は、微笑みながらそう言ってテーブルを離れ「いらっしゃませ、ご主人様」と入店した客をお出迎えに行った。


 「どうしよっどうしよっ!! 幸運の女神、降りて来たっ!!?」


 「お、落ち着いて下さいよ。まだ、本当に受けられるかどうか分からないですし……」


 男性客より興奮してしまった千代を、楓が宥める。さくやは抹茶アイスでクールダウンさせようとした。


 「ほ、ほら、これ食べて……あーん///。……あれ? 溶けたっ!?」


 「口に入れる前にっ!?」


 楓が驚く程の熱量を持った千代は立ち上がる。


 「わたし和HOO(わふー)四十七士の、四十八人目になる☆!!」

 


 「…………ふーん、あれがね……」 


 別のテーブルにいる学生くらいの年齢の二人組が、この店には珍しい女の子の客を観察していた。

 注文を取りに、今宵がやって来る。


 「ご主人様、何に致しましょう?」


 謙った態度の今宵に、子供っぽい印象を受ける一人が嬉しそうに答える。


 「えっとね。ぼくオムライスとおっぱいプリン! 後、搾りたてミルク!」


 もう一人は、太極拳でもやるかのような道着姿で、キザな印象を受ける男だった。


 「ボクはブロマイドが欲しいな。キミの名前、教えてくれるかい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。