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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第609話 独立の要塞

ロシア遠征に失敗して撤退するフランス軍を逃すまいと、ロシア軍が気象魔法を使ってもたらした、早すぎる冬。

フランス軍は寒さから逃れようと、南のウクライナを通った撤退を図る。

そして、追撃するロシア軍を食い止めるため、ダヴー軍団は砦を急造して拠点とした。

この砦建設を阻止しようとロシア軍が放った騎馬襲撃隊は、オスカルとアンドレが幻覚魔法を使った幻のフランス騎兵隊で引き付け、砦を完成させたダヴ―は本隊を逃がす事に成功。

だが、敵地で孤立した二人は、吹雪の中を彷徨って行き倒れ、ウクライナ人の親子に助けられて命を繋ぐ。

そしてロシアによる支配に苦しむウクライナ人たちの現状を知ったオスカルは、抵抗運動の指揮官役を買って出た。

フランス人軍人が指揮するこの活動は、周囲のウクライナ人たちに支持され、その指導者の出所と噂されたダヴ―の砦に、人知れず食料を届けるウクライナ農民が現れる。

そんな農民たちによって、砦に残されたオスカルの部下たちは、彼女の生存を知った。



その頃・・・・・・・・・。

ロシアから撤退したフランス軍本隊は、イタリアを経由して、ようやく帰還を果たした。



ウィーンの宮殿では・・・・・・。


テレジア元女帝の元にナポレオン帰還の報が届くと、大臣や将軍たちががっかり顔で、あれこれ・・・・・・。

「ナポレオンは生きて帰れないんじゃ無かったのかよ」

「けど、大敗して逃げ帰ったんだろ? 今や敗戦国じゃん」

「けど、まだ兵力に余裕があるぞ」

そんな彼等にテレジア元女帝が激を飛ばす。

「戦勝国のロシアを味方につけて、今度こそフランスを破り、屈辱を晴らすのです」


その時、侍従の一人が報告。

「皇帝陛下、ロシアに派遣した外交使節団が帰還しました」

ナポレオンの退却とロシア軍による追撃開始を知ったテレジアが派遣した外交官が、報告書を持って入室。


テレジアは報告書を受け取り、パラパラとめくりながら、ワクワク顔で「ピュートル陛下は軍を出してくれると?」

「それが、焼土作戦で多くの死者を出し、国力に余裕は無いとの事で・・・」と、外交官。

「あの国の兵は畑で獲れると聞きましたが」

そうテレジアが言うと、外交官が「その畑が壊滅状態なんですよ。それに、ウクライナにフランス軍が築いた要塞が未だに抵抗を続けているとかで」

「そんなの、孤立した残党ですわよね?」とテレジア。

「それが、現地で独立派勢力を味方につけて、容易に落とせる状態ではないとの事で」と外交官。


すると、将軍の一人が言った。

「ここは別の味方と組むのが得策かと」

「別の味方って・・・。まさかプロイセンとか言いませんわよね?」

そうテレジアに突っ込まれ、将軍は「・・・・・まさかそんな。あは、あははははは」



その時、侍従の一人が報告。

「皇帝陛下、外国の王家の方が、陛下に面会を求めておられますが・・・」

「外国ってどこよ」

そう突っ込むテレジアを他所に、その"来客"は勝手に入室し、そして・・・。

「こんにちは、テレジア陛下。プロイセンから来たフリードリヒ大王でーす」


テレジア、うんざり顔で「あなたもう王じゃないですわよね?」

「けど、今の王は我が息子。親の言う事は絶対です」

そんな能書きをヌケヌケと語るフリードリヒに、テレジアはあきれ顔で「だったら、実家に帰って自分の家の面倒でも見てたらどーなのよ」

「それが、息子のウィルヘルムは早熟で、まだ10歳ながら早くも反抗期。私を城に入れてくれないのですよ」と、フリードリヒは一転して同情プリーズな涙目をアピール。


「自業自得でしょーが!」

フリードリヒは、そんなブチ切れモードのテレジアの肩に手を置き、同情の涙を浮かべて「あなたもお子さんに苦労していると聞きます。勝手に外国と同盟して覇権国家に逆らうとか」

「その息子のフランツを悪の道に引き込んだのは、あなたでしょーが!」と、テレジア更にブチ切れ。


「まあそうおっしゃらず」

そんな揉み手モードのフリードリヒを指して、テレジアは護衛兵たちに命じた。

「こいつ、つまみ出して」



フランスでは・・・・・。

自称クワトロバジーナ、即ち変装したリシュリューが宮殿で、帰国したナポレオンを迎えていた。


「やはり撤退という事になりましたか」

ホールから自室に向かうナポレオンとともに廊下を歩くきながら、自称クワトロバジーナがそう言うと、ナポレオンは「まさか、首都まで焼く奴らだとは・・・・・」

「壊滅しなかっただけでも幸運ですよ。それで・・・、まさか軍の再建とか言いませんよね?」と、自称クワトロバジーナ。

「駄目?」

おねだり顔でそう言うナポレオンに、自称クワトロバジーナは「財政が破綻状態で、もう逆さに振っても鼻血も出ませんて」

「・・・・・」

「ポルタの王太子と戦時体制の解除を約束していましたよね?」と、念押しする自称クワトロバジーナ。


「ロシアはどうする?」とナポレオン。

「聞いてますよ。ウクライナが独立したんですよね」と自称クワトロバジーナ。

ナポレオンは立ち止まり、いきなり強気になって「そうだ。あの国を新たな我が衛星国に・・・・・」

「いえ、独立を支援するのはポルタとスパニアです」と、自称クワトロバジーナはピシャリ。

ナポレオンは未練顔で「だが、あそこにはまだダヴ―の奴が居るぞ」



その頃、ダヴ―軍団の要塞では・・・・・。


ウクライナ独立軍の幹部たちが講習を受けていた。講座のお題は「最新式の部隊運営について」

要塞内の広場では、農民たちを集めた歩兵の集団戦訓練。

倉庫では、武器の組み立て方や大砲の撃ち方の説明。


ロシア軍が攻勢をかけると、ウクライナ人の兵たちが戦闘に参加する。

農民たちが補給に協力。



そして、要塞の元近衛たちはオスカルと再会した。

彼女を囲んで盛り上がる元近衛たち。

大はしゃぎする者、涙目になる者・・・・・・・。

「隊長、会いたかったです」

「生きてたんですね。良かったよー」


そんな彼等を微笑ましそうに見るアンドレだが、すぐに彼も元近衛兵たちに囲まれて、質問攻め。

「それよりアンドレ、少しは進展したんだよな?」

「いや、それは・・・・・」

そう彼が困り顔で言うと、元近衛たちはがっかり顔で「違うのか?」


「それより、そちらの人達は?」

そう言って、オスカルたちとともに居る外国人たちに視線を向ける、元近衛たち。

「我々に武器を援助するために来てくれた人たちだ」と彼等を紹介するオスカル。

彼等は名乗った。

「ポルタから来たエンリです」

「商人のモウカリマッカです」

他にエンリの部下として、リラとアーサー、そしてカルロが居た。



その頃、シマカゼ号の船室では・・・・・・。


ニケが縛られて、ジロキチたちが監視。

「武器の売り込みなのに、何で私が・・・・」

じたばたしながらそう言うニケに、ジロキチが「高値で売りつけて暴利を漁る気だろ」

ニケは目に$マークを浮かべた抗議モードMAXで喚き散らす。

「武器取引はディールよ。儲けを追及しない奴は馬鹿だってトランプ帝国のキングも言ってるじゃ無いのよ。私のお金ーーーーーーー!」



エンリたちは要塞の指令室で、独立軍の幹部たちに、援助について説明。


「それは有難いんだが、フランスは?」

元フランス軍の士官の一人がそう言うと、ダヴ―将軍はそれに答えて「あの戦争に関わったフランスが前面に出るのはマズい・・・という事だ」

モウカリマッカが援助項目のリストを手に、具体的な内容の説明開始。

「とにかく銃と弾薬、それに大砲と、部品の修理工具一式。それと、こちら・・・・」



一通りの説明を終えると、彼等は建物の外に出る。


上空からファフのドラゴンが、背に数人の男性を乗せて、武器製造の設備一式を持って舞い降りた。

ドラゴンの背から降りたのは、ポルタ大学職工学部の技術者たち。

彼等が武器製造の指導に就く事になった。



指令室に戻って、今後の打ち合わせを続ける、ダヴ―軍団と独立軍の幹部たち。そしてエンリ王子たち。


「ここの領主のキエフ公はロシア貴族なんですよね?」

そうエンリが言うと、地元民の独立運動幹部が「ウクライナ各地の味方の民の代表による議会を創って、独立を宣言します」

「ロシアが本格的に弾圧に来ますよ」

そうアーサーが言うと、エンリが「けど、独立するのはここだけじゃない。北のベラルーシ。あそこの民はロシアによる焼土戦術で大勢が命を落とした。家を焼かれ食料を奪われ、気象魔法による二か月も早い冬が追い打ちをかけた。彼等を殺したのはロシアだ」


「彼らはフランスのせいだと言ってますけどね」と、ダヴ―の部下として会議に参加していたオスカル。

エンリは言った。

「空飛ぶ鉄の鳥で行った自殺戦術で散った若者を、世界はこう言いました。"若者たちは、それを命じた国家に殺されたのだ"と。ましてベラルーシの村を"フランスと戦うために"と焼いたロシアにとって、彼等は被支配民族です」



そして・・・・・。


飢餓と凍死に瀕したベラルーシの村々に、住民の親戚と称する人たちが来て、物資が持ち込まれた。

これに縋る農民たちに、彼らはロシア皇帝への抵抗を解く。

「ベラルーシはベラルーシの民のものです」


馬と大砲を得たダヴ―配下の兵は、フランス国旗を捨ててウクライナ独立軍の中核となり、弾圧に来たロシア軍を次々に破った。

農民や元コサック兵が、続々と独立軍に参加し、部隊も次々に編成された。

至る所でロシア軍は敗走。

そしてウクライナは独立を宣言した。



ウィーンでは・・・・・。


宮殿で事実上の政務を仕切っているテレジア元女帝に侍従が報告。

「独立ウクライナの使者が承認を求めて来ているのですが、どうしますかね?」

テレジアは眉間に青筋を浮かべて言い放つ。

「追い返しなさい。ロシアはフランスと戦う同盟国。共に手を携えて敵を叩き潰す友ですよ。ウク信なんてただのネオナチだと鈴木議員が言ってたじゃないですか」

「ですが・・・・・」

戸惑い顔の侍従にテレジアは「我々にとってはフランスを追い出すのが正義です」


その時、更に別の侍従が報告。

「あの、女帝陛下。市民たちの代表が、ウクライナ支持を求めて来ているのですが・・・」

テレジアはうんざり顔で「追い返しなさい!」

「それが、もう来ちゃってまして・・・」

困り顔でそう言う侍従の背後から、どやどやと入って来た市民たちが訴える。

「女帝陛下。ウクライナは我々民主的市民の味方です」

そんな彼等にテレジアは「あなた達、まだフランスが民主主義の伝道者だ・・・などという世迷言を信じているのですか?」


市民たち唖然顔。

「へ?・・・・・。ウクライナがロシアの支配を脱したように、我がドイツもフランスの支配を脱するべき、って話なのでは?・・・・・」

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