第604話 支配の反動
大陸封鎖によって、労働力を軍にとられたフランスを除く各国の産業が、イギリス製品を締め出しての工業発展を遂げる中、フランスはポルタに対するフランス製品輸入強制の圧力をかけた。
これが頓挫し、二度目のイベリア侵入に踏み切ったフランス軍。
ビレーネを越えてスパニアに侵入し、別動隊のダヴ―軍団を以てポルタ軍を釘付けにしたナポレオンは、本隊を以てスパニアの都を包囲する体制をとりつつ、自ら直営軍団を指揮し、電撃作戦を以てポルタに進軍し、その首都を占領した。
だが彼らは、市民たちが既にブラジルに移民して無人になったという街を見せつけられる。
エンリ王子は、破滅の魔道具を以てナポレオン率いる軍団ごと街を破壊すると彼らを脅し、アーサーの幻覚魔法で崩壊するポルタの街の幻を見せる。
そして、フランス兵たちの恐怖に乗じたリラの精神攻撃魔法。
こうして彼等を制圧し、ナポレオン本人を含むフランス兵全員を捕虜としたエンリは、捕虜となったナポレオンとの交渉を開始した。
「俺をどうする気だ?」
鉄格子の嵌った部屋で、武器を持つ護衛とともに向き合うエンリに、ナポレオンが苦虫を嚙み潰したような表情でそう言うと、エンリは語った。
「それはあなた次第。これは終戦交渉ですから。それに我々は理性ある近代人ですので、降参した相手を奴隷に売るとか、無条件降伏だから実質植民地だの第61番目の州だの、永遠に謝罪反省して勝った側の歴史捏造を受け入れてお気持ちを癒す事で生かされる奴隷になれだの、平和条約で主権回復なんて形だけで実は影の国連から保護観察を受けてる受刑者国家だの、トランプ帝国の奴隷のくせに何でウリ国の奴隷は拒むんだレイプされた非処女のくせに純潔ぶらず"バービー加山流奴隷の矜持"で媚びを売れば重宝されて勝ち組になったと精神勝利しろだの、そーいう中世脳な戦争礼賛の偽平和リベラル国際主義ナチスヒャッハーは要らないんで」
「・・・・・・けど賠償は請求するよね?」とナポレオン。
「ま、500年後の異世界じゃ無いですから。それより先ず、ポルタ北部とスパニア首都のあなたの軍を武装解除して貰えません?」
そうエンリが要求すると、ナポレオンは強気モードを知り戻す。
「そーだった。彼等が居るじゃーないか。我々はまだ負けていない」
そんな彼にエンリはぴしゃり。
「彼等が食べる食料、もう限界ですよね?」
「・・・・・・」
ナポレオンは通信魔道具で将軍たちに武装解除を命じ、各フランス軍団は投降した。
そして、本格的な交渉が始まる。
「先ず、大陸封鎖を止めて貰いましょう。イギリスが援軍を出した条件なんでね」とエンリは要求。
「彼等は輸出攻勢をかけて、ユーロの産業を奪おうとしている」
そう反論するナポレオンに、エンリは「各国は既に、国内で動力機械による生産体制を確立しています。イギリスからの輸入に頼らずとも、やっていけます」
「イギリスはダンピングを仕掛けて来るぞ」
そう主張するナポレオンに、エンリは反論。
「だったら関税で国内産業を保護すればいい。トランプ帝国のキング曰く"関税という言葉は美しい"」
ナポレオンはドン引き顔で「あれを基準にするのはどうかと思うが。プータローチンに侵略された被害者国すら売ろうとするような奴だぞ」
そんな彼にエンリは言った。
「要はフランスの生産力でしょう。戦時体制を止めて、国力や労働力を普通の産業に振り向ければいいだけの話ですよ」
「そうは言っても、今までの恨みって奴がある」
そう言って抵抗するナポレオンに、エンリは「だから支配を緩めて、ユーロの支配者気取りを止めろって話ですよ。フランス製品の輸入強制とか」
「・・・・・・・・・・」
更にエンリは「あちこちに作った属国とか」
「・・・・・・・・・・」
「自分の立場、解ってますよね?」
そうエンリが言うと、ナポレオンは「捕虜だっていうんだろ? けど、フランス国内にはまだ大きな兵力を残してある。俺を人質にした所で、議会が俺を解任すれば意味は無くなる。なんせ民主主義国だからな」
エンリは語った。
「そういう開き直りはまだ早いと思いますよ。我々は戦勝国を気取ってフランスを支配する気は無い。あくまで求めるのは主権国家としての対等です。民主国家なら人権こそ国家目的の根本。その根底は個人間の対等。それは国家間にも全く同じ事が言える。それすら認めないというなら、非はそちらにあるという事で遠慮は無用」
ナポレオンは「支配下の国に恨まれるのは当然、とか言ってる奴も居るが?」
「だったらどうするか?、って話ですよ。支配を止めて戦後処理を完遂し、対等に立ち返る。それでもなお報復に拘るなら、今度は非は報復に拘る側にあるという事になる。歴史を捏造し条約を破って犯罪国家に成り下がった、かの半島国のように」とエンリ王子。
和解は成立した。
フランスは多額の賠償を払い、大陸封鎖の停止、兵力の削減、そしてポルタとスパニアの中立の保障。
そんな交渉結果を聞いて、エンリの仲間たちはあれこれ・・・。
「ちょっと甘過ぎじゃ無いのか?」
そうタルタが言うと、ニケも目に$マークを浮かべたテンションMAXで「そーよ。せめて衣服や海外の産物の専売権をせしめるとか。それでフランス経済を支配してお金ガッポガッポ」
「そういうのは商工業者の反発を買うぞ」と、うんざり顔のエンリ。
そんな彼にニケは「それより、相当額の賠償金が入るのよね?」
「攻め込まれた側として、戦費くらいは返して貰わなきゃな。まさか、分け前をよこせとか言わないよね?」
「駄目?」と、おねだり顔で言うニケに、全員あきれ顔。
アーサーが「それより、ナポレオンの支配力はまだ続くんですよね? 兵力を削減とか言っても、奴は用兵の天才ですよ」
「いっそ収容所で首でも吊った事にして亡き者にすりゃ良かったのよ」
そんな物騒な事を言うタマに、仲間たちは声を揃えて「おいおい・・・・・」
「仮に、本当に奴が自分で首を吊ったとして、フランス市民がそれを信じると思うか?」とエンリが付け足す。
「・・・・・・・・」
そしてエンリは言った。
「それより、もっと深刻な不安材料がある。ロシアとオーストリアとプロイセンだよ。彼等が反撃と称して戦争に走るとかって話にならなきゃいいんだが・・・」
ナポレオン敗北の報は、その和解条件とともに、全ユーロに伝わった。
大陸封鎖の解除。
フランスに圧迫されていた各国の独立性を尊重。
そのために、新たな条約を締結すべき・・・という報は各国で歓迎された。
各国の記者たちがエンリ王子の元に集まって取材攻勢。
城から外出するエンリを入口で待ち構えていたドイツの記者たちが、ドアップで彼に詰め寄り、口々に・・・。
「フランスは我が国に戦争を仕掛け、それに勝ったからと武力で強制し、不当な支配を行った。そうした条約は非合法で無効という事ですよね?」
「我々は被害者として、フランスの戦犯企業から賠償金を・・・・」
そんな記者たちにエンリはぴしゃり。
「言っとくけど過去の条約はあくまで合法ですから、勝手な国内裁判でフランス人に賠償命令とかいうのは国家犯罪です。どこぞの半島国みたいな犯罪犯罪行為は止めましょう」
ロシアの宮廷では・・・・・・。
「戦勝おめでとうございます。皇帝陛下」
どこからともなく涌いて出るフリードリヒの揉み手口調に、ピュートル帝はあきれ顔で「お前、まだ居たの?」
「この勝ちに乗じて西に軍を進め、憎きフランスを征服して我々の植民地に・・・」
そんな調子のいい煽りを並べるフリードリヒに、ピュートルは「お前は何もやってないよね?」
「もちろん。全てロシアの手柄です」とフリードリヒ。
「いや、ロシアも何もやっていないが」
そうピュートルが困り顔で言うと、フリードリヒは「フランスが勝手に決めた貿易禁止を無視し、イギリスに大量の小麦を輸出する事で、ナポレオンに心理的圧迫を与えた事こそ、彼を敗北せしめた決め手です」
「そーなのかなぁ」と頭を掻くピュートル。
フリードリヒは扇子を両手に「いよいよ反撃の時!」
「そうなのか?」と、その気になりかけるピュートル。
フリードリヒは左手で籠を持ち、右手で紙吹雪を蒔きながら「ロシア皇帝、オーストリア皇帝、この私で新たなユーロを拓く三帝同盟を」
そんな彼にピュートルはあきれ顔で「お前、皇帝じゃないよね? ってか国王でもないし・・・」
「プロイセン王は我が息子。親の権威は絶対です。特に、ユーロ東方の後進地域では」
そうドヤ顔で言うフリードリヒに、ピュートルはうんざり顔で「そーいう東欧に対する偏見は止めて。ってかオーストリアはこんなのに同意してるのか?」
「ここに皇帝本人が居ます」
そう言って出て来た若い男性は嬉しそうに名乗った。
「オーストリア皇帝フランツ。尊敬する先輩啓蒙君主フリードリヒ陛下に誘われて、やって参りました」
そんな彼にピュートルはドン引き顔で「お前、江沢民とかいう軍国独裁者からジパングイジメ遊びの真珠湾デートに誘われて、天安門事件の人権侵害をホイホイ免罪にして中共帝国の肥大化を承認し、貿易外圧でジパングから奪った製造大国ポジションを払下げて、世界を超大国化した軍国侵略主義中共帝国の脅威の餌食とする道を開いた大馬鹿者クリントン大統領みたいになってるぞ。そもそも君の母親って、こいつが大嫌いだよね?」と言ってフリードリヒを指す。
「テレジア元女帝は隠居の身で過去の人です」とフリードリヒ。
そんな彼にピュートルは溜息をついて「お前も同じだろ。親の権威は絶対とか言ってなかったっけ?」
フリードリヒは煽り口調全開で演説。
「ナポレオンは敗北し、ユーロは解放される。その手柄はユーロの東を制するロシアにこそ」
ピュートルは頭を掻きながら「そーかなぁ」
フリードリヒは扇子を両手に「よっ、英雄皇帝」
煽てに弱いピュートルであった。




