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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第602話 イベリアで再戦

ナポレオンがイギリスを屈服させるべく発令した大陸封鎖令の元、各国ではブラジルが輸出する鉄を使った蒸気機関の国産化が始まり、経済の発展が始まった。

だが、フランスは労働力を軍にとられて生産力の発展が遅れ、「ポルタ市場の二割をフランスからの輸入で」というbaka-noteを使った外交圧力も頓挫する中、プレストウッツ商務長官を中心とした強硬派の要求により、ついにナポレオンは再度のイベリア侵攻に踏み切った。



フランス軍は進軍を開始した。

ナポレオンが率いる六つの軍団がピレーネ山脈のスパニア国境を越え、迎撃するスパニア軍と戦闘状態に突入。


麓の本営でスパニア軍を指揮するイザベラ女帝。

「本気で阻止しようとすれば、奇策で返り討ちに遭って全滅、という事もあり得ます。彼は軍略の天才。ある程度抵抗したら後退なさい」

「国内への侵入を許すと?」

そう将軍が表情を曇らせると、イザベラは言った。

「スパニアは戦う国です。レコンキスタを戦いぬいた要塞施設が至る所にあります。民もその中を生きてきました。正面から軍団をぶつけ合う事だけが戦争では無いという事を、彼に教えてあげましょう」



ピレーネの山岳を巡る戦いで、フランス軍は街道に沿う高地を次々に占拠し、間もなく山越えの通路の確保に成功した。


ナポレオンは平地に降りると、ダヴ―軍団を西進させてポルタ北部へ侵入。

国境でこれを迎え撃つは、ウェルズリー将軍率いるイギリス軍一万、アンドラーデ将軍率いるポルタ軍一万。

これにエンリ王子が直接指揮するタルタ海賊団と炎剣兵団の姿もあった。


両軍の衝突を目前に控えた軍議で、アンドラーデ将軍はエンリに問う。

「この程度の戦力で良かったのですか?」

「向うも同程度の戦力だ」とエンリ王子。

「もしかして大軍だと費用が嵩むとか思ってます?」

そうアンドラーデが言うと、エンリは「もしかしなくても費用が嵩むぞ」

「・・・・・・・・・」


「それに、こちらには炎剣兵団がある」とエンリ王子。

「少数精鋭ですか・・・」

そうウェルズリー将軍が言うと、エンリは「彼等の突破力で中央突破。崩した所を背後の歩兵隊で殲滅・・出来たらいいなぁ」

二人の将軍は一様に「希望的計画かよ」と呟いて溜息。



ポルタ側の布陣は右側にポルタ軍、左側にイギリス軍。そして中央部先頭にエンリが指揮する炎剣兵団。


フランス軍を率いるダヴ―将軍は、そんな敵軍の布陣を観察し、呟いた。

「炎剣兵団の突破力はあなどれないぞ」

「それで、どう対応しますか?」

そう問うオスカルに、ダヴーは「無理をするなの一語に尽きるだろうな」



フランス軍の砲撃で戦端が開かれた。

その狙いは砲撃避けの小穴に伏せる炎剣兵団に向けられていた。

ポルタ軍も砲撃で対抗する中、エンリは部下に号令。

「ファフ、シマカゼ、タマ、敵の砲兵陣を黙らせてくれ」


ドラゴンに変身したファフは、背にアーサーを乗せてフランス砲兵陣を上空から襲い、迎え撃つ魔導士官の攻撃魔法をアーサーが防御魔法で防ぐ。

その混乱に乗じて、地上を姿勢を低くして高速でフランス軍陣地に侵入するシマカゼ。

砲兵陣に突入して三基の連装砲ちゃんで打撃を与えて離脱。

更に混乱するフランス砲兵陣にケットシーのタマが侵入。

弾薬の集積にファイヤーアローを放った。


爆炎魔法攻撃による誘爆で弾薬の集積を失ったとの報を受けたダヴ―将軍は、砲撃の中止を命じた。

「まだ各砲の手持ちがあります」

そう意見する部下に、ダヴ―は「それは残しておけ。必ず必要になる」



フランス軍の砲撃が止むと、エンリは号令を下した。

「敵砲兵は抑えた。炎剣兵団を先頭に立てて、突入開始だ」

炎剣兵団を先頭に全軍で前進するポルタ・イギリスの連合軍。


中央で攻勢をかける炎の槍の密集隊。

ボウガンの斉射で敵銃兵陣を牽制しつつ、大型の盾で銃弾を防いで距離を詰める。

この攻勢に左右の歩兵陣を連動させ、全面で敵を圧迫する。


そんなポルタ側を前に、ダヴーは配下のフランス各隊に号令。

「左右の歩兵隊は陣を固めつつ、中央は後退して距離を保て。深入りしてきたら左右後方から浸食をかける。奴らの背後に居るのは普通の歩兵隊だ」



連合軍を指揮するエンリの司令部では・・・。

フランス兵の銃撃を防ぐ大楯は、土の魔剣から分与された魔力で銃弾を容易に跳ね返し、風の魔剣の力を付与したボウガンの矢が風に乗ってフランス兵を襲う。

炎の槍で敵陣を突き崩そうと構える炎剣兵との白兵戦を避けるべく、中央のフランス兵の陣はじりじりと後退。

そんな戦況を観察するエンリに、参謀は「奴ら、ガチな交戦を避けてますね」

「だろうな」

そう言いつつエンリは、地図上に示された敵味方の位置の確認を続け、やがて彼は号令を下した。

「前進停止。深入りすると囲まれるぞ」



フランス軍のダヴ―の司令部では・・・。

ポルタ軍の進軍が止まった様子を見て、参謀は「どうやら深入りを警戒しているようですね」

ダヴ―はそれを予想していたかのように頷き、そして言った。

「敵が袋の奥に入ってこないなら、袋の方から迎えに行くまでさ。奴らの楯は前しか守れない。後ろに回れば勝機はある」



エンリの司令部では・・・。

フランス軍の動きを観察し、その変化を察知するエンリ王子。

「敵が炎剣兵団の左右に居る味方に攻勢をかけてきました」と参謀が解説。

「なるほどな。包囲網に入らないなら包囲網の方から出張ろうって訳か」とエンリは頷く。


エンリはイギリス隊に連絡。

「右翼のポルタ正規兵を攻撃する敵の側面を突きたい。その間、左側の敵を引き受けてくれ。右の敵を痛めつけたらそっちに回る」

そしてエンリは炎剣兵団に号令を下した。


右翼側に向かった炎剣兵団は、ポルタ正規兵と共同で右側に攻勢をかけたフランス隊を叩きに向かい、まもなくフランス隊は後退した。

その間、左側でイギリス隊に攻勢をかけていたフランス隊の一部が炎剣軍団の背後を襲おうと攻勢をかけ、それを防ごうとするイギリス兵との白兵戦に突入。

オスカルと彼女の部隊も、そうしたフランス隊の中に居た。

イギリス兵と斬り結ぶオスカルとその部下たち。


次々にイギリス兵を倒すオスカルの前に、両手両足で刀を持って戦うジロキチが立ちはだかる。

フランス兵のサーベルを紙のように切り裂く四刀流のサムライの前で剣を構えるオスカル。

「私が相手だ」

ジロキチは両足の刀を収め、両手の刀で押しまくる。

その太刀筋を必死に読んで剣を折られる事なく剣を交えるオスカルだが、高速で切りかかる二本の刀で幾つもの手傷を負う。

これを治癒魔法で必死に支援するアンドレ。


まもなく右翼側のフランス兵を後退させたエンリは、左翼側のイギリス隊に攻勢をかけていたフランス隊に炎剣兵団を差し向けた。

ダヴ―将軍は後退の指示を出し、オスカルたちは退いて距離をとる。

炎剣兵団は、右翼側でポルタ隊を押し返しつつあるフランス軍を叩くべく転戦。



エンリ王子の司令部では・・・。

「イギリス軍はよく戦っているようですね」

そう参謀が言うと、エンリは「そうだな。だが、警戒すべきは長弓だ。楯は正面からの攻撃しか防げないからな」


その頃・・・。

白兵戦を闘うフランス兵の背後から、弓兵隊が移動を開始していた。姿勢を低くして左翼イギリス隊の左側に回り込み、最前線で右翼側のフランス軍を押しまくる炎剣兵団に向けて弓を構える。長弓を最大射程が得られる上方45度に向け、弓を引き絞る。

そんな様子を木陰に潜む猫が見ていた。


「王子、長弓が来ます。攻撃地点は・・・」

リラがタマからの念話で得た情報をエンリに伝える。

これを基に、エンリは炎剣兵団に号令。

「隊形Cで長弓に備えよ。方角は右55度」


楯とボウガンを正面に向けてフランス兵を押しまくっていた炎剣兵たちは、二人一組になって一人は正面、もう一人は左側方面に盾を向けた。

まもなく左翼側斜め後方から降って来る矢の雨を、左側方面に向けた盾で防ぐ。



ダヴ―の司令部では・・・。

前線からの報告を受けたダヴ―は「長弓は効かなかったか。なら、プランDだ」

ダヴ―は騎兵隊に号令に下した。



エンリの司令部では・・・。

タマからの念話による報告をリラが受け取る。

「偵察猫からの情報です。背後に向っている騎兵隊が二隊。進路は・・・」

そうリラから報告を受けたエンリは、部下に号令を下す。

「ファフ、シマカゼ、騎兵隊の足止めをやってくれ」


林の中を駈けるフランス騎兵の一隊の上空にファフのドラゴンが舞い降り、炎を吐いて行く手を遮る。

もう一隊の騎兵の隊列をシマカゼが攪乱。

先回りして連装砲ちゃんを二体配置し、残る一体を機械背嚢に乗せて騎兵たちと並走し砲撃開始。

「散開しつつ突っ切るぞ」

そう号令する指揮官の指示で散開したフランス騎兵たちの行く手に、二体の連装砲ちゃん。

向かって来るフランス騎兵たちに砲撃を浴びせる。

混乱し、ダメージを受けたフランス騎兵隊に、ポルタ騎兵が襲い掛かる。



間もなく、フランス騎兵は撤退した。

右翼側での戦いでは、加わった炎剣兵団の攻勢でフランス兵たちは後退。

ダウー将軍は全軍に退却を命じ、追撃を図るポルタ軍を、残りの弾薬を使った砲撃で牽制した。



その頃・・・・・・。

スパニアに侵入したナポレオン率いる五つのフランス軍団は、各地で抵抗するスパニア軍を次々に退却に追い込んでいた。


彼らの進軍に先行して食料調達を担う補給隊は・・・・・・・・。

「この村も、も抜けの空です。各家にも食料は残っていません」

そんな報告を受けた補給隊の隊長は、「どこかに隠れているのだろうな」と言いつつ広げた地図を睨む。

「草の根を分けてでも探しますか?」

そう部下が問うと、隊長は「そんな暇は無いと皇帝陛下の訓示だ」


そんな補給隊からの報告が、ナポレオンの本営に届く。

「やはり本国からの補給に頼る他は無いという事か・・・・」

そう言って溜息をつく彼の元に、部下の魔導通信兵が報告。

「大変です。ピレーネを越える補給隊が何者かに襲撃されました」



その少し前・・・・・。

馬車を連ねて輸送する補給物資を護衛するフランス兵の部隊が、山脈の山道を通る。

これを見下ろす斜面の林には、木陰に浮かぶ鉄の仮面。


やや離れた所に居たフェリペが、仮面から情報を受け取った。

「来たよ」

そうフェリペが言うと、マゼランたちが立ち上がる。

「それじゃ、行くか」


シャナとヤマトがヤンの飛行機械に乗り、マゼランたち十数人がアラストールのドラゴンに乗る。

山道を行く輸送隊の前にシャナが降り立ち、立ち塞がる歩兵たちに炎の刀の衝撃波を浴びせ、前列に居た十数人が薙ぎ倒された。

フランス魔導兵たちが防御魔法を展開し、隊列を組んで銃を構えるフランス兵。


そんな彼らに、側面の林の繁みから飛び出したマゼランとチャンダが率いる十数人が襲い掛かる。

剣を抜いて応戦するフランス兵と白兵戦となる中、その背後で銃を構えるフランス歩兵たちを、ヤンの飛行機械が空から牽制。

ヤンの銃とヤマトの砲撃が火を噴き、多数の鉄の仮面が口から一斉に風の矢を放つ。


間もなく仮面たちの撤退の合図で、マゼランたち襲撃部隊は一斉に引いた。

彼らを追おうとするフランス兵たちを指揮官が制する。

「深追いはするな。罠に誘い込まれて全滅するぞ」

フランス兵たちが一息をつく。


そんな彼らの周囲に謎の気配が忍び寄る。

気付く間も無くフランス兵たちはバタバタと倒れた。


街道を見下ろす高所では、ライナたちの風魔法にマーモが催眠の毒霧を含ませていた。

風で運ばれた毒霧でフランス兵たちが眠った事を確認すると、再び風魔法で毒霧を吹き散らす。

そして民兵の回収部隊がフランス兵たちを拘束し、積荷の食料を持ち去った。

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