表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
600/617

第600話 魔典の真名

ナポレオンがイギリスを屈服させるべく発動した大陸封鎖令により、イギリス製品を締め出した各国で始まる、動力機械製造による産業の国産化。

その波に乗れないフランスが、ポルタにフランス製品の輸入を強制すべく、「ポルタ市場の2割をフランスから輸入する事を目標に努力」という協定を結んだ。

そしてこの、ただの努力目標を「実現を約束したもの」とすべく、ナポレオンはbaka-noteを使って常識の書き換えを行った。

そのカラクリは、ポルタ大学魔導学部長パラケルサスにより、ついに見破られ、エンリ王子たちは怪盗ルパンの協力で、ナポレオンの元からbaka-noteを盗み出す事に成功する。



人々の認識の中にある言葉の概念を書き換える、ノートの宝具「baka-note」。

それは、エンリ王子たちが居るミゲル皇子の屋敷に持ち込まれた。


「で、この表題・・・・・・」

屋敷の一室でエンリたちが囲むテーブルの上に置いた、そのノートの表の表紙を見て、ルパンがあきれ顔で言うと、裏表紙の落書きのデュークは言った。

「アルファベット四文字+ノートって、よくあるパターンだよな?」

「それはいいんだが、バカノートって・・・・・」

そうルパンが言うと、デュークは「これには深い謂れがあって、だな」


能書きを垂れようとする宝具精霊をエンリが止める。

「そういうのはいい。どーせ冗談で付けた名前だよね?」

「解る?」と含み笑いを込めたデュークの声。

残念な空気が流れる。


「で、俺の記憶をどうやって取り戻すと?」

そうデュークが言うと、パラケルサスは語った。

「復原の魔法という術式を使います。このノートは今は辞書になっていますが、いろんな事を書いては書き換えて、こうなっている、そこまでの過程に手掛かりがある筈です」



パラケルサスは復原の魔法の儀式を行った。

机の上に描かれた魔法陣の中央にノートが置かれ、彼は呪文を唱える。

ひとりでにページがめくられ、書き加えた部分が消え、消された部分が復原される。

ノートに書かれた内容がどんどん変化し、次第に書かれた内容は減っていった。


そして最後に、二行の文が残った。

曰く「白馬は馬では無い」


それを読んでエンリたち唖然。

「白馬は馬だよね?」

「だよな・・・・・・」

「続きが書いてあるけど、これってその理由だよね?」



その、続きに曰く。

「馬は動物の概念であり、白馬は色の概念である。動物と色は違う。故に白馬は馬では無い」


「なるほど、筋は通ってる・・・のか?」

そうタルタが言うと、エンリが「何かがおかしい」

ニケも「絶対間違ってるよね? けどどこが?」



その時、ノートの裏表紙のデュークが声を発した。

「思い出した! 俺の名は公孫竜。2000年前のミンに居たんだ」


彼は蘇った自らについての記憶を語った。

その頃、かの地は多くの領主が争う戦乱の時代だった。各国は強くなるための思想を求め、それに応えるべく、多くの思想家が名乗りを上げた。

そうした人々の中で、「名家」という思想を打ち立てたのが公孫竜だった。

それは、言葉の意味を明確にする事で、議論における敵のまやかしを見抜き、真実を明かす・・・というものだった。

そうした論理の立て方を極めるための命題として、彼が考えだしたものが、この「白馬は馬では無い」だった。


「俺はこの命題を様々な人に示して、反論を求めた。けれども、これに反論できる者はおらず、俺は詭弁家として批判されて、失意のうちに世を去った」

そう語るデュークに、エンリは「それで言語の意味を司る精霊って訳かよ」

「けど、これ・・・・」と、その場に居た人々は一様に呟く。


その時、リラが言った。

「白馬は本当に色なんでしょうか?」

タルタが「白は色だよね。けど白馬って・・・・・」

「白馬ってのは白と馬。この二つの概念が合わさった言葉だよ」

そうアーサーが言うと、カルロが「馬の白さってんなら色だよね?」


エンリが言った。

「これって形容詞じゃないのか?」

「そうだよ。白馬は白い馬。つまり、馬という名詞を白いという形容詞で修飾したものですよ」とジロキチ。

リラが「つまり、馬が主で白は従。それをわざと逆転させる事で、間違った結論を導き出す・・・」

「そうだったのか」と裏表紙のデューク=公孫竜。



裏表紙の落書きはノートから離れて宙に浮き、そして人の顔となるとともに、彼の全身が現れた。

それはミンの服装を纏い、冠をかぶった東洋の男性の姿。

「ありがとう、西洋の賢者たち。これで心置きなく魂の世界に旅立てます」

そう語るとともに、その姿は光を放ち、上昇しつつ消えていった。



「言語の概念を明確にすることで真実・・・ねぇ」

そうルパンが言うと、若狭が「ユーロ古代の賢者はどうだったの?」

「ソクラテスは詭弁家に反論する時、例えば勇気とは何か・・・みたいな概念定義を求めたそうですね」とアーサー。

エンリは語った。

「半島国の人が隣国に被害者意識を剥き出し、歴史を歪曲したヘイト強弁を突き付けて奴隷化を迫った時、隣国の人達は相手のまやかしをこんなふうに糺したそうだぞ。"あなたの言う反省とは何ですか? 加害とは何ですか?"ってね」


「それじゃ、もし彼がその思想を完成させていたら、ソクラテスみたいになってたのかな?」

そうタルタが言うと、エンリは「どうかな? カイヅカシゲキ教授は、彼の思想は歴史の闇に消えたって、東洋史の概説書に書いてるけど、そりゃ嘘だよ。名家の"名"ってのは言葉の概念を示すものだが、ミンでは正しさの根拠と称して"大義名分"って言葉がある。その"名"って彼の名家の"名"だよね」

「分は?」とファフ。

ジロキチが「身分の事だよ」

「つまり身分の高い人だから言ってる事は正しいに違いない・・・みたいな?」とニケ。


「中華には"文章は国の基"って言葉がありますよ」

そうジロキチが言うと、カルロが「つまり、美辞麗句で飾り立てる事で政治的に正しい・・・って事にする、みたいな?」

「それって、もしかしてただの煽動政治でござるか?」

そうムラマサが言うと、エンリは「もしかしなくて、もただの煽動政治だよ」

「事実を明かすんじゃなくて、誤魔化す方向で文明が進んだ?・・・・」

そうリラが言い、全員が溜息混じりに「何だかなぁ」


アーサーが「そういうやり方は、あの大陸国と半島国で十八番になってますよ。"三つの近代化"みたいなスローガンを乱発するって、その典型だ」

「逆に、反対派への憎悪を煽って悪魔化するヘイト宣伝のスローガンも、その類よね?」とニケ。

「反対派の言葉を歪めて、悪い印象を植え付けるとか。ヤース・ダーコイッチ氏の書いた"ネットと愛国"という本を推奨するレビューに出てるが、彼が反対派を批判した文章に"あいつ等は『真実(事実)はネットの中にしかない』って言ってるぞ"って言ってる。けど、あの人たちが言ってる"ネットの中で示された事実がある"ってのと、それをヤース氏が言い換えた"ネットの中にしかない"は実は別物で、オールドメディアにとって不都合ではない事実は普通に報道されてる訳だものな」とエンリ。


「それってマスコミがやってる"報道しない自由"って奴だよね? よくある話だよ」とタルタ。

カルロが「慰安婦運動ってので公営放送が番組を組んだけど、その国の業者が募集したものを、軍が強制したかのように事実を歪曲する、隣国を敵視する某半島国の宣伝戦争に則った、まるっきりの扇動報道で、それは駄目だろ・・・って事で、その歪曲性を指摘する事実も併せて伝えるよう働きかけた事を"報道しない自由を侵した"・・・って事で裁判に訴えたとか」

パラケルサスが「犯罪的な布教をやってるトーイツ教会というカルトについて、それが与党と癒着してたって事でマスコミはずっと批判してたんだが、その犯罪が実はその国に対するヘイト教義によるものだった。けどその"かつての支配(実はとっくに清算済み)について贖罪すべき"っていうヘイト思想をメディアの奴らも共有していた。それで不都合だからと、ヘイト教義自体を報道せず隠蔽して、多くの人が知らなかった。それ故にカルトは生き延びた・・・とか」


「戦後処理を終えた国に対する"戦犯国家"呼ばわりとか、広義の・・・とか言って正当化している"性奴隷"って標語とか、世界で最も客観的な教科書を使ってる隣の列島国に、自分たち半島国が要求する自民族憎悪を刷り込むもので無い・・・なんていう理由で"過去を隠蔽する無責任国家"とか・・・。それってずっと彼等があの国に投げつけ続けた"激しい暴力的なアジテーション"で、しかも事実を歪曲している。どう見てもヘイトスピーチですよね。けどそのヘイト扇動に加担するマスコミや社会学教授や弁護士が"自国民に対するものだから"という、理由にならない理由でヘイトスピーチ認定から除外する。そしてそういう半島国によるヘイトを不当として批判するのを、"自分=半島国擁護派と異なる意見"だから、"外国(半島国)への批判=嫌うよう促すもの=排外主義"なんて無理な定義でヘイトスピーチ呼ばわり」とアーサー。

「そりゃー論破もされるし反発もされるわな」とルパン。

全員が溜息混じりに「何だかなぁ」


エンリは言った。

「正しさってのは客観的論理から導き出すもので、論理は根拠から正しさを導く合理的筋道だよ。けど、彼らはそうは思ってない。半島国のバンブー島強奪を正当化する半島国脳なネ〇サ✕が、島を奪われた隣国人と議論した時、こう言ったそうだ。"論理とは感情の体系化"ってね。つまり、他人を騙して感情を煽るのが論理だと」

「そのためのイメージ付与目的で、"歴史修正主義"だの"正しい歴史認識"だの"ネット右翼"だの"戦犯国家"だの"戦犯旗"だの"ナチスと同じ"だの"裏金"だの"父の国"だの"兄の国"だの・・・みたいな、意味不明な記号を先行させて、正体不明な道徳論で権威化したり悪魔化したりするんですよね。その中身を問われると逆切れて・・・」とリラ。

「"記号構文"とも呼ぶべき詭弁な扇動詐術の基本・・・って事だろうな」とエンリが結論づける。

全員が溜息混じりに「何だかなぁ」



ノートの裏表紙の落書きは消え、これに宿る精霊の去ったその宝具は、ただのノートになった。

そして、二千年前に作られた貴重な遺物として、ルパンのコレクションに加わった。

baka-noteによって作られた「目標を達成していない事は努力していないという事である」という常識も消え去り、ナポレオンはポルタにフランス製蒸気機関のシェア二割を強制する手掛かりを失った。


ブレストウッツは頭を抱えた。


彼はパリの商工業者を引き連れてナポレオンに面会させ、彼に詰め寄った。

「どうするんですか? これではせっかくイギリス製品を締め出しても、代りにポルタが儲かるだけです」

「だが、イギリスが強くなれないなら、目的は達したのではないのか?」

そうナポレオンが言うと、商工業者たちは口々に「それでは我々フランス商人がお金ガッポガッポ出来ないじゃないですか」


そしてプレストウッツは要求する。

「こうなった以上、ポルタを征服して我がフランスの植民地とするしかありません」

「一度攻め込んで痛い目に逢ってるんだがなぁ」

そうナポレオンが言うと、プレストウッツは「フランス軍はあの時とは違います」



フランスは猛然とポルタに圧力をかけた。


プレストウッツ商務長官はポルタに出向き、城の応接室でエンリ王子に直談判。

「貴国は未だにイギリスとの密貿易を続けている。そうに違いない」

そう言い張るプレストウッツに、エンリは反論する。

「そもそもポルタには、イギリスに対抗できる工業力がある。隠れて輸入する必用なんて無いですよ」


「証拠があります」

そう言ってプレストウッツは冊子を取り出す。

「これはイギリス経済顧問のアダムスミス氏の著作ですが、これによるとイギリスは綿織物を最も得意とし、ポルタはワインを最も得意とする。だからイギリスが綿織物生産に専念してワインをポルタから輸入し、ポルタはワイン生産に専念して綿織物をイギリスから輸入すれば、双方の優位な産業の恩恵を分け合ってウインウイン」

「それはイギリスの都合で、ポルタとは無関係だ。ってか機械で量産できる産業を独占して高い利益を上げるために、他国を騙したいだけのアジ文書でしょーが!」とエンリは反論。


「ではこれを」

そう言ってプレストウッツは空き瓶を取り出す。

「これはイギリス植民地のサンフラワー村で見つかったもので、ポルタ製ワインの瓶です。ポルタがイギリス人と隠れて貿易を行っている動かぬ証拠」

「そんな・・・・・・・・」

そう呟きつつ、エンリは回想した。

ジョンスミスの植民村と出合い、現地人が欲しがるワインの交易を彼は仲介した。見知らぬ土地で夢を追う、そんな彼等を応援したかった。それがこんな事に・・・・・・。


「ちょっと待て! この賞味期限、フランス革命の前だぞ」

危うく見逃しかけたペテンの証拠。

それに気付いたエンリの反論に、プレストウッツは言葉に詰まり、そして逆切れた。

「ととととにかく、ポルタが大陸封鎖令を破った事は、お天道様が見逃してもこのブレストウッツが見逃さない。首を洗って待ってろ!」



「今日はこれくらいにしといてやるーーーー」と馬車の窓から喚きながら、ポルタ城から退出する覇権国家の商務長官。

そんな彼を城の窓から見送りながら、エンリは残念顔で呟く。

「逃げたよ」

その場に居る彼の仲間たちも残念そうに溜息。

そして一様に「本気で戦争ふっかける気かなぁ」と呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ