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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第584話 フリートラントの決戦

プロイセン軍を破ってベルリンを占領したナポレオンに対して、フリードリヒ王は残存兵力を率いて東プロイセンに逃れ、来援したピュートル帝のロシア軍とケーニヒスベルクで合流。

これを阻止しようとしたナポレオンの追撃は、アイウラ村に駐留するロシア軍との戦いで多大な損害を出して頓挫した。



冬が終わるとフランス軍はケーニヒスベルク攻略の戦いを再開した。

ロシアとプロイセンが拠点とするケーニヒスベルクは東プロイセンのノルマン海に面した北岸に位置する。

その南の内陸部の占領地に軍団を配置し、ロシア軍と睨み合うナポレオン。


彼の本隊はケーニヒスベルクへの包囲網を縮め、ハイルスベルクのロシア軍拠点を攻略した。



ハイルスベルクを守備するロシア軍本隊を指揮し、フランス軍にそれなりの損害を与えつつ撤退したのは、ベニヒセン将軍だ。


退却する軍を指揮する彼は、隣に居る副官に「これって勝ち戦だよね?」

「結局撤退しましたけどね」と副官は返す。

「そーだよなぁ。陛下、怒るかなぁ」

彼は、アイウラ村での戦いを誇ってピュートルの不興を買ってしまった苦い記憶を噛み締めていた。



その時、知らせが入った。

「ケーニヒスベルクの南東に位置するフリートラントで、フランス軍の弾薬庫を発見しました」

「あんな所にフランス軍が?」

そうベニヒセンが言うと、参謀が「あそこに居るのは、占領隊のランヌ軍団ですね」


ベニヒセン将軍は思考を巡らせる。

(敵の主力はハイルスベルクを占領中。これは各個撃破のチャンスだ)


そして彼は号令を下した。

「全軍に伝達しろ。これよりフリートラントの敵軍を殲滅に向かう。向うは一個軍団でせいぜい二万。こっちは主力の五万だ。半分以下の敵をゴマンと居る我等の兵力で撃破する簡単なお仕事だ」

「いや、そういう寒いギャグは要らないから」とドン引き顔の部下たち。


命令を下された兵たちも、一様に溜息をついて呟いた

「散々戦って疲れてる上に50kmも歩くのかよ。勘弁してくれ」



ロシア軍本隊はフリーラントに辿り着くと、街を流れるアレ川の東岸から橋を渡って、市内に居るフランス軍部隊を急襲し、撃破した。

戦いの跡を満足顔で眺める、ベニヒセン将軍とその直属の部下たち・・・。


「意外とあっけなかったですね」

そう副官が言うと、参謀が「二万どころか、その一割くらいな感じ?」

「フランス軍って意外に弱いのな」と配下の将軍の一人が・・・。

ベニヒセンも「アイウラでもハイルスベルでも敵に大損害を与えた俺たち最強」

「撤退したのはこっちだけどね」

そう副官が突っ込むと、ベニヒセンは「あれは戦略的後退って言うんだよ」


そんな中、参謀が言った。

「いや、ちょっと間て。これ、ランヌ軍団のごく一部だぞ」

戦闘跡の規模が異様に小規模だ。


魔導士官が烏の使い魔を放ち、空から戦場の様子を再確認。

そして地図を広げて周囲の地形と照らし合わせる。

更に、烏の使い魔を周囲に飛ばし、やがて西の方角に、ランヌ軍団の本隊を発見した。


「どーしよう。ここで戦った奴らの十倍の大軍が攻めて来るぞ」

魔導士官からの報告を聞いて焦りまくるベニヒセンに、副官が「いや、十倍ったって俺たちの半分なんだが・・・・」

「・・・・・・」


気を取り直すベニヒセン将軍。

そして彼は全軍に指令を下した。

「直ちに進軍して撃破せよ」



そのランヌ軍団の本営では・・・・・。

ランヌ将軍が通話魔導具で本隊のナポレオンに報告していた。

彼はロシア軍の動きを伝えると、「どうやら引っかかったようですね」と、含み笑いとともに言葉を付け足す。


「全軍、直ちにフリートラントへ向かうぞ」

そうナポレオンは、自らが率いる本隊全軍に号令を下すと、地図を出して戦場の地形を確認。

市街は川の西に広がっており、その市街を支流が南北に分断している。

彼は魔道具の向こうに居るランヌに、具体的な指示を出す。

「この川の橋を落して退路を断て。それから・・・・」



そして・・・・・・・・。


ロシア軍は市街を西進し、その西に居たランヌ軍団本隊と衝突した。

二倍以上のロシア軍の攻勢を受け、じりじりと後退するランヌの戦陣。

しぶとく抵抗を続けるフランス軍に、焦るベニヒセン将軍。

「まだ撃破出来んのか。グズグズしてるとナポレオンの本隊が着いてしまうぞ」

すると参謀が「別動隊でも出して二手に分かれてくれたら、各個撃破出来るんですけどね」

「そんな都合よく敵が動くかよ」とベニヒセンはあきれ顔で突っ込む。


その時、報告が入った。

「敵が二手に分かれました。その一方が支流を渡って北へ向かった模様」

ベニヒセン唖然。

そして「本当に二手に分かれやがった・・・」


「それで、どちらが多い?」

そう彼は報告に来た士官に問うと、部下は「残った方が本隊のようです」

「よし。我々も二手に分かれるぞ。そして北に逃げた別動隊を我が本隊で殲滅し次第、戻って残りの敵を殲滅だ」とベニヒセンは部下たちに指令。



ベニヒセンは本隊を率いて支流を渡り、ランヌ軍団の別動隊を追った。

だが・・・・・。


「まだ追いつけんのか」

そう焦り声で言うベニヒセンに、直属部隊の司令官は「奴ら、やたら逃げ足が早くて・・・」

「そもそもあれ、騎馬隊ですよ」と副官が突っ込む。



その頃、移動中のフランス軍本隊では・・・。


ナポレオンに、ランヌから通話魔道具で報告が入っていた。

「どうやら敵がグルーシーの騎馬隊に喰い付いたようです」

それを聞いてナポレオンは満足げに頷く。

「よし。敵を機動力で引きずり回して時間を稼げ。ついでに、奴らが渡った支流の橋も落としてやれ」



ランヌの本隊と戦うロシアの別動隊では、指揮を任されたベニヒセン将軍の部下が焦っていた。

「何時になったら本隊、戻って来るんだよ。ぐすぐずしてたらナポレオンの本隊、来ちゃうよ」



やがてナポレオン直営軍がネイ軍団とヴィクトール軍団とともに戦場に到着し、支流南側のランヌ本隊と合流。

形成は一気に逆転した。


焦るロシア軍別動隊司令部。

「どーすんですか?」

本隊のベニヒセン将軍と通話魔道具で連絡をとる別動隊司令官の焦り声が響く。

そして彼は「撤退しましょうよ」とベニヒセンに・・・。

「だがなぁ」

まごつく総司令官に、別動隊司令官は「とにかく退路を確保しますからね」



ところが・・・・・・・・。

既にアレ川の橋が破壊されているとの報告を受け、別動隊司令官は唖然。

支流北側の本隊との合流を画するが、その支流の橋も落されているとの報告を受け、更に唖然。


彼はベニヒセン将軍と通話魔道具で連絡。

「橋を落とされて退路を断たれただと?」

そう唖然声で言うベニヒセンに別動隊司令官は「どーすんですか?」


ベニヒセンは言った。

「大丈夫だ。東洋にこんな言葉がある。"排水の陣"と。川を背に自ら退路を断つ事で、必死パワーが奇跡を起こす」

「そーいう精神論は要らないですから」と別動隊司令官。

ベニヒセンは「火事場のクソ力という諺を知っているか?」

「俺たち、ウルトラセブン頭にタラコ唇の筋肉超人じゃ無いですから」と別動隊司令官。



ランヌ軍団と合流したナポレオンの本陣では・・・・。


総攻撃を命じるナポレオンに、ランヌが「まだミュラー軍団とダヴー軍団が到着していませんが」と、異議を唱える。

「けど、今が絶好のチャンスなんだよ」

そう主張しながら、ナポレオンは脳内で呟いていた。

(対プロイセンではダヴ―の奴がやたら目立ってたからなぁ)

そんな彼に、ランヌは「なるほど、本隊の到着で敵が焦っている、その心の隙間を突こうというのですね?」

「そそそそそそそうなんだよ」


そしてナポレオンは、ロシア軍背後のフリートラントの街を指差して「あれがゴールだ。わき目もふらず前進せよ」


支流南を東進してロシア軍に攻勢をかけるフランス軍本隊。

中央の直営軍と左翼のヴィクトール軍団で押しまくり、ロシア軍がそちらに対応して右翼側が手薄になる。

その隙を突き、ネイ軍団が迂回して側面を強襲。

ロシア軍別動隊は東へと潰走した。


彼等が逃げ込んだフリートラントの町に火が放たれ、炎上する町で別動隊司令官はヤケクソ顔で叫んだ。

「今こそ火事場のクソ力を見せる時だ!」

ロシア兵たちはドン引き顔で「だから俺たちウルトラセブン頭の筋肉超人じゃ無いってば」



フランス軍本隊により別動隊が壊滅した事を知った、ベニヒセン将軍は・・・・。

「アレ川を渡って撤退しよう」

「それが、こちら側の橋も落とされてまして」と配下の将軍。

「何ですとーーーーーーー!」



ナポレオン本隊は、市街地に面した地点と、その西側の上流の二か所で、支流の渡河を開始。


「川を渡らせるな。ここを突破されたら後が無いぞ」

そう叫んで、東側の市街地で必死に防戦するベニヒセンの本隊。

そんな彼等に、上流で支流を渡り切ったフランス軍部隊が側面から攻勢をかけた。


潰走したロシア軍は東へと追いやられ、アレ川本流の強行渡河を試みて、多くの将兵が川に流されて溺死。

ここにロシア軍部隊は壊滅した。



戦いが終わった戦場に到着したダヴ―軍団。

そこにはオスカルたちの部隊も居た。


「今回は出番が無かったですね」

そう残念顔で言う配下の下士官たちに、オスカルは言った。

「部下に損害が出ないってのは、いい事じゃないか。まさか手柄を立てて出世とか思ってる?」

下士官たちは「そんな事になったら、士官として他の部隊に配属されちゃうじゃ無いですか。俺たち、オスカル隊長の部下がいい」

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