↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
579/617

第579話 プロイセンの開戦

プロイセンとフランスの衝突が不可避となり、両国は戦争の準備を始めた。

ナポレオンは自らの出征時における不測の事態に対応する「皇帝代理総指令」となり得る部隊として、名将ダヴ―将軍の第三軍団をこれに充て、オスカル等元近衛隊もその配下に配属された。

一方のプロイセンは、ブラウンシュバイク公を総司令官に任命するとともに、対フランス戦の同盟国を確保すべく、行動を開始。



その日、フリードリヒ王は、援軍を求めて秘密裡にイギリスを訪れていた。


ロンドンの宮殿の応接室でエリザベス女王と会見するフリードリヒ。

「ユーロを支配するフランスの専横は、もはや放置出来ないものになっています」

そう彼が言うと、エリザベスは「それで兵を貸せと?」


「というより、イギリスにとって好ましい状況を作る事をお勧めしているのです」と、もって回った言い方を弄するフリードリヒ。

「と言われましても、島国である我が国は陸上の戦いから距離を置いていて、覇権を握る立場に無いですわ」

そうエリザベスが言うと、彼は「なればこそ、複数の大国が競い合う状況こそベストと愚考しますぞ。ナポレオンという支配的な一強の存在は好ましくない。そうは思いませんかな?」


「それは、あなたが彼を倒してユーロを支配する存在には、ならないという事ですわよね? 陛下はドイツの王となる事をお望みなのではなくて? ドイツが統一すれば、フランスを超える大国となる」とエリザベスは突っ込む。

「その時はその時ですよ」

そう言ってフリードリヒがはぐらかすと、エリザベスは更に突っ込む。

「それに、あなた自身が他国から、どういう目で見られているか。仮に、イギリスの将兵を派遣したとして、いざとなったら、彼等に銃口を向けてイギリスに無理難題を突き付ける人質に・・・くらいの事は、どこの王でも警戒する筈だと、周囲から忠告を受けておりますの」

「では、ナポレオンの覇権を放置なさると?」とフリードリヒ。


「イギリス兵は出せませんが、代りに・・・」

エリザベス女王は侍従に指示し、彼は一人の男性を応接室に呼んだ。

入室した彼を見て、フリードリヒは意外そうな声で「オレンジ公・・・ですか」

「彼はナポレオンに侵略されて国を追われた亡命者です。共に渡英した多くの軍人が、彼とともに戦ってくれる筈ですよ」

そうエリザベスが言うと、オレンジ公はフリードリヒに言った。

「我々にとっては、祖国オランダを取り返すチャンスですので」



フリードリヒは、オランダ人亡命者軍団と共闘の密約を交わす。

それが片付くと、彼はロシアへ・・・。

そして、煽てに弱いピュートル帝に軍の派遣を約束させた。



他国からの援軍の目途が立つと、ベルリンのプロイセン軍司令部で、フリードリヒ王は参謀や将軍たちを集め、作戦会議の日々が続く。


「ロシア軍の来援を待って、エルベ川で迎撃すべきかと」

そう意見する総司令官ブラウンシュバイク公に、王弟ルイフェルディナント王子が「消極的過ぎだ」と批判。

「ですが、フランス軍は強大ですぞ」

そうブラウンシュバイク公が言うと、ルイフェルディナントは「陛下はどうお考えですか?」


いきなり下駄を預けられたフリードリヒ王は、困り顔で「妃のルイーゼが"派手に攻勢に出てフランス人などボッコボコにして貰えるのですよね"とか言っていてな。全く、女が戦争に口を出すなど・・・」

そんな彼の発言に、会議参加者たちからブーイング。何人もの将軍が王に意見する。

「それは女性差別でポリコレに反するかと」

「貴婦人は戦の花ですぞ」

「騎士道大原則、女性を喜ばせてこその戦争」

「オモニの心を癒すためにチョッパリを戦争宣伝で懲らしめる事が正義なのだと、ある半島国が言ったとか。そのために歴史の真偽など問題では無いと」


さすがのフリードリヒもドン引き顔で「そーいうヘイト思想は要らない」

彼は溜息をつき、そして脳内で呟いた。

(嫁が口出しするのを愚痴っただけなんだが)



その時、一人の参謀が発言した。

「ドイツ領域にフランス駐留軍が居ますが、恐らく彼等が敵の主力となるかと思われます。彼等はライン連邦各地に分散しており、それを各個撃破するのです」

「なるほど。陛下はどうお考えですか?」

そう将軍たちが言うと、フリードリヒは「戦術に関しては、お前等がプロだろ」

「敵を謀略によって弱体化させる。それによって、戦いが始まる時には既に勝利は確定している。勝敗を決めるのは戦略です」と、一人の将軍が発言。

フリードリヒは脳内で呟く。

(言ってる事は尤もらしいんだが・・・)


彼は暫し思考を巡らせ、そして言った。

「なら、偽情報を流すというのはどうだ。こちらはマインツの占領に向かっていると・・・。フランスとの国境に近いあの地を拠点とする事で、敵を本国と遮断する。奴らはそれを阻止するため、西へ向かって退却せざるを得ない。それを背後から追撃する」

「すばらしい神作戦です」

そんなお世辞を口々に言いつつ、将軍たちは脳内で呟いた。

(フランス軍って移動速度がやたら早いのが武器なんだが、追撃戦ったって追い付けるのか?)



やがて、パリでは・・・・・。


フランス諜報局が情報を入手し、ナポレオンの元に報告。

それはフランス軍司令部での作戦会議の流れを変える。


「奴らの標的はマインツか」

そうナポレオンが言うと、将軍の一人が「国境のすぐ近くですね」

「つまり目的は本国との遮断ですね」と参謀の一人が発言。

「フランスに攻め込む気だな。すぐにマインツに全軍を集めろ」とナポレオン。


その時、ダヴ―将軍が発言した。

「もし、彼等がフランスに攻め込むとすれば、大規模な補給網が必要となります。我々はライン連邦に補給基地を持っていますが、彼等がフランスに攻め込むとしたら、前線基地が必要になるでしょうね」

「どこに?」

そうナポレオンが問うと、ダヴ―は「チューリンゲンあたりという事になりますね」


ナポレオンは号令を下す。

「マインツにライン駐留軍の一軍を残して敵に備え、残りのをバンベルクに集結させよう」

「私の部隊はどのように?・・・・・・」

そうダヴ―が言うと、他の将軍たちが「そりゃ、独立部隊として編制された軍団ですから、皇帝陛下の留守を・・・・・」


そんな彼等の台詞を、ナポレオンは遮るように「とりあえず主力に参加して、現地の状況を見て必用な戦場を指揮して貰う」

「そんなぁ」

そうガッカリ顔で言う将軍たちに、ナポレオンはあきれ顔で「何でお前らが残念そうなんだよ」



フリードリヒはナポレオンにライン駐留軍の撤退を要求した。

それは事実上の宣戦布告であった。

フランスのドイツ駐留軍は移動を開始。そしてプロイセンの各部隊で将軍たちが気勢を上げる。

「作戦開始だ。奴らの背後を襲うぞ」



だが・・・・・・・・・・。


自ら近衛隊を率いて本隊を指揮するフリードリヒ王の移動本営に、次々に各部隊からの報告が入る。

「ドイツ駐留のフランス軍部隊を追撃中ですが、敵の移動速度が速くて追い付けません」

フリードリヒは困り顔で「これじゃ追撃戦にならないだろーが」

「それで奴等は?」

そうブラウンシュバイク公が報告に来た情報士官に問うと、「バンブルクに集結した模様です」

フリードリヒは困り顔で「それじゃ、各個撃破にならないぞ」


地図を睨むフリードリヒ王と将軍たち。

「奴等は北上してベルリンに進軍するつもりでしょうね」

そう参謀の一人が言うと、フリードリヒは号令を下した。

「我々も集結して、奴らを迎え撃つ」



フランス軍の集結したバンブルグの北、ヴァイマルに、ブラウンシュバイク公とフリードリヒ王の居る主力が入った。

その東のイエナにホーエンローエ将軍の率いる別動隊。ルイフェルディナント王子はここで先方隊を率いている。

プロイセン軍、総勢15万。

オレンジ公率いるオランダ人亡命部隊は予備兵力だ。


一方のフランス軍は、ダヴ―率いる第三軍団を含む六つの軍団とナポレオン率いる皇帝直営隊。

その総勢、18万。

各軍団は約一万を擁する複数の師団と、補給その他の機能を持つ部隊を有し、独立して動ける機能を以て編成されている。

移動に際しては、連絡を取り合いながら各自のルートで移動し、補給隊が先行して別々の都市から物資を徴発し確保する。

これは、大規模な部隊が一度に動くと、大量の物資が必要となって、一つの都市からの徴発は不可能となり兼ねないためだ。



フランス軍は部隊の展開を完了し、ナポレオンは将軍たちを集めて作戦会議。


「敵の状況はどうなっている」

そうナポレオンが情報士官に問うと、「未だ移動を終えていない様子です」

「奴らも師団制を取り入れてはいるようですけどね」

そう将軍の一人が言うと、ダヴ―将軍は「形ばかり真似ても、本質が解っていなければ何の役にも立たない。敵が態勢を整えきれていない今がチャンスかと」

ナポレオンは号令を下した。

「よし、第5第7軍団はイエナへ、第4第6軍団はゲーラへ。残り二軍は俺の直営隊とともにナウムブルグへ進軍する」


ゲーラはプロイセン別動隊の居るイエナの、更に東。

ナウムブルグは北側にある。

主力でここに回り込んで、首都との連絡を断ってプロイセン軍を包囲する。それがナポレオンの戦略図であった。


ナポレオンが直接率いる主力は、まもなくナウムブルグを占領した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。