第575話 終末のゴーレム
偽札を使ったフリードリヒ王の陰謀を阻止すべく、カリオストロ公国を訪れたエンリ王子たちは、この国を支配するカリオストロ伯爵に利用されようとしているクラリス姫を助けて戦う怪盗ルパンと出会い、彼と共闘した。伯爵の目的は、城に眠る無敵のゴーレムを起動させる魔法の指輪。
捉われたクラリスを救出すべく城に潜入したルパンとエンリたちは、一旦はリラのウォータードラゴンワイヤーで伯爵を拘束するが、別動隊として監禁部屋に潜入したカルロたちはクラリス救出に失敗。
ルパンは伯爵に取引をもちかけ、指輪を伯爵に渡す。
だが、伯爵は一旦解放したクラリスを不意をついて再び奪い、彼女を抱えて窓を破って飛行魔法で空へ飛んだ。
エンリたちが老執事率いる衛士たちと戦う中、ルパンは火矢を背負い、伯爵を追って空へ飛んだ。
城の上空を飛ぶルパンは、中央塔の屋根上の時計台に居る伯爵とクラリスを見つけた。
屋根上に降り立つルパン。
「契約は守って貰おうか。ロリコン伯爵」
そうルパンが言うと、伯爵は「泥棒が言う台詞とは思えんな。お前等にとって契約は、破るためにあるんじゃ無いのか?」
「お貴族様の言う台詞とは思えんな」とルパンは返す。
伯爵はクラリスの腕を掴んで「この女は俺のものだ」
「クラリスはクラリスのものだ」
そうルパンが返すと、クラリスは「私はおじ様のものです」
ルパンはまごつき顔で「いや、そう言われても困るんだが・・・」
「知ってます。自分を好きになった女性が死ぬのが嫌だって・・・。そんなあなただから、私は好きなんです」
そうクラリスが言うと、ルパンはまごつき顔で「そう言われても・・・」
そんな二人の会話に伯爵がブチ切れる。
「何なんだ。余裕のつもりかよ。そういうモテを無駄にする奴が一番ムカつくんだよ」
ルパンは迷惑顔で「そう言われても・・・ってか、モテたきゃ悪役なんて止めたらどーだよ」
「悪役がいいって言う女だって居るんだよ。そもそも泥棒は悪役だろーが」と返す伯爵。
ルパンは言った。
「いや、俺、モテたくて泥棒やってる訳じゃないし。そもそもクラリスは悪役を好きになるキャラじゃ無いだろ。どーせなら悪役好きな女とくっつけばいいだろーが」
「指輪を持ってるのは彼女だ」
そう言う伯爵に「けどもう外れたよね?」とルパンは突っ込む。
「確かに・・・・」
残念な空気が漂う中、ルパンは言った。
「結局欲しいのは指輪で、女はそれを手に入れる道具かよ。最低だな」
「違う。俺はクラリスが・・・」
そう伯爵が弁解しようとすると、ルパンは「つまりロリコンかよ。最低だな」
伯爵、ブチ切れる。
「・・・・・もういい。お前、自分を好きになった女が死ぬのは嫌だと言ったな? だったら全力で守ってみろ」
そう言って伯爵は、クラリスを突き飛ばした。
屋根を転がり落ちるクラリスに向かって、ルパンは全力で走り、軒先から落ちようとするクラリスの手を左手で掴み、右手で屋根の軒に掴る。
その隙に伯爵は時計台へと屋根の傾斜を登り、時計の大きな文字盤に刻まれたヤギの像を見る。
彼は脳内で呟く。
(この両目に指輪を嵌めれば、ゴーレムは起動する)
伯爵は、クラリスの銀の指輪をヤギの右目に嵌め、自らの左手の指にはめた金の指輪をヤギの左目に・・・。
そして彼は呪文を唱えた。
「汝、人型の被造物。世界を壊す終末の尖兵。汝の名は巨神兵。汝の両目たるゴートの指輪開きて、約束の時来たれり。我、汝との契約を果たし、汝は復活の剣を執らん。世界を作りしペンを以て、巨大な城よ動き出せ。起動あれ!」
時計の大きな文字盤の二つの針はゆっくりと動き出す。
伯爵はどす黒い笑みを浮かべて呟いた。
「いよいよ無敵のゴーレムの起動だ。これでドイツも世界も俺のもの」
そして彼は、ヤギの右目から左手の指輪の石を外そうとするが、指輪の石は外れない。指輪は彼の指から外れないまま、彼の左手をそこに拘束し続けた。
「どうした、外れろ」
焦る伯爵を他所に、時計の針はなお動き、太い時針と分針が文字盤に固定された伯爵の手首を挟んだ。
ルパンがクラリスを抱えて屋根の軒先に這い上がって来た時、二人は、伯爵の左手首が二つの太い時計の針に挟まれて、切断されようとしているのを見た。
「見るな」と言ってルパンはクラリスを左手で庇い、右手で彼女の目を覆う。
そして悲鳴とともに、血が噴き出す左手首を押えて屋根を転がり落ちていく伯爵。
時計の針は十二時を指し、時鐘が鳴るとともに城は激しく振動した。
中央塔の広間で伯爵の部下たちと戦っているエンリ王子たちは・・・。
「何だこの振動は」
そう言って周囲を見回すエンリたちの足元を、ネズミの大群が外に向かって走る。
そんな小動物たちに混じって出て来た、猫の姿のタマが「みんな逃げて。城は崩壊するわよ」
「何だと?」
城を覆っていた魔法防御のシールドは既に消滅している。
そして窓の所にファフのドラゴンが顔を見せた。頭にタルタを乗せている。
「こっちだ。みんな、逃げるぞ」
そうタルタが仲間たちに呼びかける。
窓際に駆け寄ろうとする仲間たちの中、リラが「ジロキチさんが、まだ・・・」
狼狽える伯爵の家来たちの中、ジロキチは二本の刀で老執事と互角に切り結んでいる。
彼は戦いながら、切り結んでいる相手に「お前等も早く逃げろ」
「カリオストロは終わりです。私は主とともにこの城と運命を共に・・・」
そう言って戦いを止めない老執事。
そんな彼の背後から、ニケがハンマーで彼の後頭部を思い切り殴った。
「そーいう滅びの美学は要らないから」
自分と互角に戦う猛者をあっさりぶっ飛ばした彼女に、ジロキチは「ニケさん凄いな」
ニケは自慢顔で「女のハンマーは無敵よ。ハンター冴羽だって、これはかわせないわ」
そんな彼女の台詞に、エンリは困り顔で「そーいうのは漫画やアニメの中だけ」
伯爵の家来や使用人たちは一階の玄関に向かい、エンリたちはファフのドラゴンに乗って空へ。
そして、最上階の屋根に居るルパンとクラリスを見つけて回収した。
「伯爵は?」
そうエンリが問うと、ルパンは「死んだよ。ゴーレムの起動と引き換えにな。時計台の文字盤がその機動装置だったんだ」
「けど、ゴーレムなんて時代遅れだよね?」
そうタルタが能天気声で言うと、ニケも「あんなの携帯砲で一発だよね?」
エンリが「駐留軍に連絡した。すぐに片が付く」
「で、これからどうするの?」
そう若狭が言うと、ジロキチが「そりゃ、クラリスが公爵家をついで・・・」
「けど、あの後始末は大変だぞ。城も崩れちゃったし」
そう心配声で言うルパンに、クラリスは笑顔で言った。
「いいんです。あれはカリオストロ家の闇そのもの。新しい時代が来ます」
そんな会話を遮るように、エンリは「崩れるぞ!」
城の両側の高い尖塔がゆっくり傾き、更に傾き・・・・・・・・・。
それを見守る仲間たちの空気が、次第に不安に染まる。
そしてタルタが「何か変じゃね?」
二つの尖塔は、塔の形を保ったまま、左右それぞれ真ん中あたりで折れ曲がって、塔の先端は地面に着いた。
「まるで両手を地面を突いてるみたい」
そうリラが呟くと、エンリが「まるで・・・じゃないと思う」
ゆっくりと城の本体が持ち上がって、地面の下から新たな構造物が姿を現す。
それを見て、エンリ達は一様に呟く。
「まるで胸部の下の腹部が出てきてるみたいなんだが・・・」
城はさらにせり上がって、その下から現れた構造物は左右二つに分かれた。
それを見て、エンリ達は一様に呟く。
「まるで両足みたいなんだが・・・・・」
中央塔が僅かにせり上がり、浮き上がった中央塔の根本に一回り細い部分が、あたかも頭部を支える首のように・・・。
それを見て、エンリ達は一様に呟く。
「何だか城が、変形人型ロボみたいになってるんですけど」
アーサーが「もしかして、あのデカいのがゴーレム?」
タルタが冷や汗声で「時代遅れなんだよね?」
ニケも冷や汗声で「携帯砲で一発なんだよね?」
そんな彼等にエンリが「それは普通のゴーレムの話」
「あんなの駐留軍で倒せるの?」
そう若狭が言うと、マーリンが「無理かも・・・・・・」
そんな中、街を囲む城壁の向こうを指して、リラが言った。
「駐留軍、来ちゃいましたけど」
カリオストロ城がゴーレム化したそれは、完全な姿を現して立ち上がった。
中央塔だったその頭部は口を開き、城壁の外に迫る駐留軍に向けて灼熱の光を吐いた。
駐留軍は一瞬で壊滅した。




