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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第574話 伯爵と怪盗

偽札を使ったフランス経済破壊の陰謀を阻止しようと、エンリ王子たちが訪れたカリオストロ公国には、この国を牛耳るカリオストロ伯爵と、彼に利用されようとしているクラリス姫を守って戦う怪盗ルパンが居た。


公爵館の地下通路からクラリスの案内でカリオストロ城に潜入したルパンとエンリ王子たち。

偽札工場の証拠を掴んだ彼等だったが、カゲたちを指揮する伯爵の反撃を受け、クラリスを守って脱出したルパンは伯爵の銃弾を受けて倒れた。

再び伯爵に拉致されたクラリス姫は、だが、既に呪いの解けて外れていた指輪をルパンに残した。

その呪いの解ける条件は「恋を知る」事。

伯爵は怒りとともに、部下たちにルパンの捜索を命じた。



そして、公爵家の廃墟を管理する庭師の家に身をひそめるエンリ達は・・・・・・。


「指輪がこっちにあると知ったら、伯爵の奴、何をするか・・・」

そう不安そうに言うルパンに、タルタは「けど彼女、指輪の呪いに守られているんだよね?」

「いや、その呪いはもう解けたから。だから指輪はここにあるんでしょーが!」とニケが突っ込む。

「つまり彼女はもう指輪に守られていない」と、ルパンは拳を握り締める。

そんな彼を見て、エンリは仲間たちに「早急に彼女を奪還する必要がある」

「あの城のどこに居るかが解れば・・・」とリラ。


「だったら」

そう言うと、ルパンは通話魔道具を取り出し、外部の誰かに連絡。

魔道具の向こうの誰かと話すルパンに、ファフが「誰と話しているの?」


「ジェーンさ。クラリスの世話係として潜入している」

そうルパンが言うと、いきなりカルロが魔道具をひったくって「ジェーンさん、カルロです。この命に代えてもあなたを・・・」

ニケがカルロの後頭部をハリセンで思い切り叩く。

「じゃなくてクラリス姫を・・・でしょーが!」

そんな彼等を見て、仲間たちはひそひそ・・・・・。

「カルロの目当てって・・・・・」



ルパンは再び通話魔道具を執って、ジェーンとの連絡を再開。

やがて通話を終えて、魔道具を置いた。


「それでクラリスは?」

そうエンリが問うと、ルパンは「城の中央塔の最上階だ」

「で、どうやって侵入する?」

そうエンリが言うと、仲間たちはノリノリで、好き勝手にあれこれ・・・。


「隠身の魔法で・・・」

そうアーサーが言うと、「見破られると思うわよ。伯爵は相当な魔導士だから」とマーリンが駄目出し。

「いっそ空から?」

そうジロキチが言うと、ファフが「ドラゴンで強行突破なの」

タルタが「俺が鋼鉄砲弾で・・・」

「大事になると厄介だぞ」とエンリが駄目出し。

ルパンも「それに、城の全周囲に魔法で防御結界が張られているから、空からも入れないだろーな」

全員、がっかり顔で「駄目じゃん」


するとエンリが「いや、牽制にはなる。騒ぎを起こしてそっちに目が行ってる隙に潜入するのさ」

タマが「潜入なら猫の出番ね」

「使い魔とか変装とかでも・・・」とリラが言い出す。

「変装って誰に?」

そう若狭が言うと、エンリが「ガニマール警部は? ルパンが来る所には絶対来るよね?」

「実際来てるんだが門前払い喰らってるそーだ」とルパン。


「小間使いとか城内の誰かとか・・・」

そうアーサーが言うと、「潜入を警戒して誰も通さないと思うぞ」とカルロが指摘。

ムラマサが「伯爵本人に・・・というのはどうでござるか?」

仲間たち、残念顔で「いや、さすがにそれは・・・」

だが、ルパンがニヤリと笑い、「それでいこう」


ルパンは伯爵に変装する精巧なマスクを被った。



街に出ると、衛士たちがうろうろしている。


伯爵に変装したルパンが、彼等に声をかける。

「おい、お前たち」

「伯爵様、どうして・・・・・・」

驚く衛士たちに、ルパンは言った。

「敵は既に潜入している。城に戻るぞ」


衛士たちを率いて、伯爵に変装したルパンは城へ向かう。

そして・・・・・・・・。



衛士たちを率いた変装ルパンは、城に入ろうとした所で、門番に止められた。

「伯爵様。申し訳ありませんが、誰も通すなと言われておりまして」

伯爵に変装したルパンは「それを命じたのは俺だよな?」

「では伯爵様に確認します」

そんな間抜けな事を言う門番に、彼は「だから伯爵は俺だってば」



その時、城の上空を覆う魔法障壁に、衝撃が走った。

タルタの鋼鉄砲弾が宙を飛んで、城の上空を守る魔法障壁に弾かれたのだ。

ドラゴンが十名ほどの人影を乗せている。その中にはルパンの人形も・・・。

ドラゴンが吐いた炎を魔法障壁が防ぐ。

箒に乗って飛来したマーリンが繰り出す攻撃魔法を魔法障壁が弾く。


そんな混乱の中で.伯爵に変装したルパンは衛士たちを率いて城内へ・・・。



一方で城には、指令室に駆け込む本物の伯爵が居た。

「どうした?」

「外からの強襲です。ドラゴンと他二名。ドラゴンの背に十名の敵。その中にはルパンも居ます」

そう司令部の指揮官が答えると、伯爵は言った。

「あれは偽物だ。恐らく本物はこの騒ぎに乗じて潜入するつもりだろう。クラリスの居るこの塔を守るぞ」



城の中央塔の階段には、衛士たちを連れたまま階段を駆け上がる、伯爵に変装したルパンが居た。

彼は脳内で呟く。

(ここを上がれば最上階だ。そこにクラリスが・・・)



そして・・・。

階段の途中で彼は、衛士たちを率いて階段を駆け下りる伯爵と鉢合わせ。


階段の上と下で、全く同じ顔と服装の二人は同時に叫んだ。

「お前は誰だ?」

まごつく双方の衛士たちは、口々に戸惑い声で「伯爵様が二人・・・」


伯爵の顔の二人は、同時に互いを指して声を揃えて「そうか、お前はルパンの変装だな?」

そして伯爵の顔の二人は、同時に各自が率いる衛士たちに、声を揃えて「そいつを捕えろ。俺が本物の伯爵だ」


伯爵の顔の二人は、不毛な押し問答を始める。

「本物は俺だ。お前がルパンだろ」

「ルパンはお前だ」

ドン引きする双方の衛士たち。


階段の上側に居る伯爵が、下側に居る衛士たちに問うた。

「お前等、街に出ていた捜索隊だよな?」

「そうですけど」

そう下側の衛士の一人が答えると、上側の伯爵は「で、街に俺を名乗るそいつが現れた」

「確かに・・・」

彼は自分が率いる衛士たちを指して「こいつらは俺とずっと城に居た」

「確かに・・・」


下側に居る衛士たちは、自らを率いていた伯爵の顔の男を見て「ではこいつがルパン・・・」

「捕えろ」と上側の伯爵が号令。


自分が率いてきた衛士たちに捕縛される、伯爵に変装したルパンに、階段の上側に居た伯爵は言った。

「残念だったな」

「そいつはどうかな」と、未だ伯爵に変装したままのルパンは言って、不敵な笑みを浮かべた。



一方、最上階の監禁部屋のクラリスは・・・・・・。


突然、入口が開いて「クラリス、ここから出るわよ」

駆け込んだ二人と一匹。


「ジェーンさん。それにカルロさんに猫さん」

驚き顔でそう言うクラリスに、カルロは右手の親指を上に立て、白く光る歯を見せた笑顔を向けた。

「もう大丈夫。なぜって? 私が来た!」

そんな彼等にクラリスは「三人とも逃げて下さい」

「何で?」

駆け寄ろうとしたカルロを、ケットシーのタマが制止。

「そこに入っちゃ駄目。転送トラップよ」


「さすがにケットシーは魔力に敏感ですね」

そう言いながら老執事が出て来る。


「ジュドーさん・・・」

そう彼を見て怯え顔で呟くクラリスは、戸口の二人と一匹に視線を向けて、「その人と戦ってはいけない」

カルロは「大丈夫、俺たち強いですから」


「随分と自信がおありのようですね」

そう言うと、落ち着いた殺気を放ちつつ、老執事は剣を抜いた。

カルロは二本のナイフを構え、ジェーンは拳銃を抜く。そして、毛を逆立てるケットシーのタマ。



そして下の階段では・・・。


伯爵に変装していたルパンの正体を見破った・・・と得意顔な本物の伯爵。

「指輪を渡して貰おうか」

ルパンは「大事なものなら金庫に入れてしまっておいたらどーよ」

「俺のクラリスを返せ」

そう伯爵が言うと、ルパンは「いや、彼女を拉致ったのはあんただろーが」

「お前は彼女の心を盗んだ」

そう伯爵が言うと、ルパンは「お前、彼女じゃなくて指輪が目当てなんだよな?」

伯爵は「クラリスは俺の婚約者だ。この十年間、俺がどんな思いで彼女を求めて来たか・・・」


そして彼は、自分とクラリスの思い出を語る。それを聞いてドン引きするルパン。

「そりゃ嫌われて当然だ」

残念な空気の中、双方の衛士たちもドン引き顔の小声で・・・。

「アプローチが残念過ぎだろ」

「女心が解って無いよね」


「うるさいうるさいうるさい」

そうブチ切れ声で叫ぶと、伯爵は短銃を抜いてルパンに向けた。

「お前は終わりだ!」


伯爵が引き金を引こうとした時、ルパンの傍で彼を捕らえている・・・かのように見えた衛士の一人が、小声で呪句を唱えた。

「ウォータードラゴンワイヤー」

十数匹の強靭な水の蛇が一瞬で伸び、伯爵と、更に彼が率いる衛士たちの手足に絡みついて拘束。

そして、もう一人の衛士が動けない伯爵に短銃を向けた。

二人が衛士の兜を脱ぐと、その下から現れたのはリラとニケの顔。

他の、ルパンを捕えたように見えた数人の衛士も一斉に兜を脱ぐと、エンリ王子と仲間たち。


伯爵、唖然顔で「お前等も偽物だったのか」

ルパンは拘束されたフリを終えて変装のマスクを脱ぐと、「外のドラゴンの背中に居るのは全部人形さ。形勢逆転だな」

伯爵は不敵な笑みを浮かべ、「それはどうかな」



その時、階段の更に上から老執事が、拘束されたクラリスと、そしてカルロとジェーンを連れて降りて来た。

彼は伯爵に恭しい口調で「もう一人、ケットシーが居たのですが」

「まあいい。よくやったぞジュドー」と得意顔の伯爵。

カルロは下側に居るエンリに「すみません、やられちゃいました」


老執事ジュドーは、クラリスの頭に短銃を突き付けた。

「申し訳ありません、クラリス様。主の危機ですので」

そして彼は下の階段に居るルパンたちに向けて「伯爵様を放して頂きます」


エンリとルパンは互いに目を見合わせ、そしてエンリはリラに視線を向けて頷く。

リラはウォータードラゴンワイヤーを解除。

そしてルパンはポケットから指輪を出し、上側に居る伯爵に言った。

「伯爵、取引だ。彼女とこの指輪を交換しろ」

「いいだろう」と伯爵は頷く。



老執事はクラリスを解放し、彼女は伯爵の脇を通り抜けてルパンの元へ、階段を駆け下りる。

そしてルパンは指輪を投げた。

それを受け取った伯爵。

「確かに本物だな」


ルパンの目前まで来ていたクラリスは、駆け下りながら彼に手を伸ばしていた。

ルパンもまた彼女に手を伸ばす。


そんな中で、伯爵は目晦ましの魔法を放ち、飛行魔法で宙を飛んだ。

「来い、クラリス!」

視界を覆う光に思わず目を覆った彼女を抱えて、伯爵は窓を破って空へ。

ルパンは思わず叫ぶ。

「伯爵、卑怯だぞ!」


彼を追おうとするルパン目掛けて、老執事が衛士たちを率いて階段を駆け下りる。

二本の刀を抜いて、その前に立ちふさがるジロキチ。

エンリは風の魔剣を抜き、若狭は刀に変身したムラマサを抜く、他の仲間たちも一斉に剣を構えた。


そしてエンリは叫んだ。

「ルパン、行け。こいつらは俺たちが食い止める」


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