第22話 戦争の商人
南方大陸西岸に沿って、南を目指すエンリ王子たちの船。
食べ物はもっぱらファフが獲った魚。
漁村で水と薪を調達するが、相変わらず食料は乏しい。
水と燃料を船に積み込む作業を始める中、ニケが現地人の村を見て苛立ちを吐き出す。
「きっと食料を隠してるのよ」
エンリは困り顔でニケに「そうじゃないから。前に焼き畑見たろ。その日食べる分を収穫するんだよ。だから蓄える必要が無いんだ」
「肉が食べたい野菜が食べたいパンが食べたい」と駄々をこねるニケ。
そんなニケを見て、タルタとジロキチが言った。
「奥地の森に動物とか居るだろ。俺たちが探して来てやる」
「大丈夫かよ」とエンリ。
「食い物を探すのは得意だ」と二人は胸を張った。
しばらくして二人が「戻ったぞ」と言って、森から出て来る。
二人とも、大蛇に巻き付かれ、体のあちこちに喰い付いた何匹もの蛇や小型肉食獣をぶら下げて、頭を中型の肉食獣が齧っている。
エンリはあきれ顔で「食われる側になってどーすんだ」
「これ毒蛇よ」と、ニケは二人に食い付いている蛇を見て言う。
タルタとジロキチはニケに「解毒剤、頼む」
ニケは二人のあちこちの噛み傷を消毒し、解毒剤を飲ませながら「この大蛇とか食べるの?」
「けっこういけるよ」とファフが、いつのまにか焚火でぶつ切りにした大蛇を炙って、それを齧りながら言った。
その時、タルタは「それと、こいつも」と言って、一人のぐったりした現地人の若者をドサリ・・・。
その若者を見てニケは「まさか食べるの?」
「治療だよ。森で倒れていた」とタルタ。
薬を飲ませ回復魔法で応急処置を施すと、彼を漁村の現地人に委ねた。
エンリが漁村の人に「こいつ、何なんだ?」と尋ねると、彼等は言った。
「男爵の仕業ですね」
「男爵って何やってる奴等だ?」とエンリが訊ねる。
「奴隷狩りです。この近くに拠点を構えていましてね」と漁村の人。
王子たち唖然。
「とんでもない奴が居るな」とタルタ。
「止めさせなきゃ」とニケ。
エンリは漁村の人に訊ねた。
「拠点ってどこだ。案内してくれ」
案内された砂浜。
沖に船が停泊し、波打ち際に連絡用のボートと、簡単な小屋。
何人もの兵を指図する男が居た。
その、集団のボスらしい人物の顔を、エンリは見覚えがあった。
エンリはつかつかと彼の所に行って「お前、ポックリ男爵じゃないか」
「これはお魚・・・じゃなくてエンリ王子」とポックリ男爵。
「こんな所で何をやってる」とエンリ。
男爵は言った。
「紳士的な取引ですよ。ポテ族とパテ族という二つの現地人部族が取引相手でして」
「奴隷狩りと聞いたが?」とエンリ。
「めっそうもない。彼らが欲しがるものを売って、対価を受け取っているだけです」と男爵。
「その対価が奴隷か?」とエンリ。
「彼らには、それしか売るものが無いので」と男爵。
「で、欲しがるものって何だ?」とエンリ。
「鉄砲です」と男爵。
「武器を売るために戦争を煽るのかよ」とエンリ。
男爵は言った。
「めっそうもない。元々敵対していた部族どうしなんです。捕虜を奴隷にするのも、ここの昔からのしきたりですよ。なので王子、物騒な所ですので早々に立ち去られた方がよろしいかと」
ポックリ男爵の根城をとりあえず後にして、エンリ王子たちは相談する。
「どうする?」とエンリ。
「お金になりそうに無いわね。食料だって無いし」とニケ。
「薪と水だけ積んで引き上げますか?」とアーサー。
「また魚尽くしかよ」とタルタ。
「さっき肉食べたでしょーが」とニケ。
タルタが「けと、あの人がなぁ」
介抱されて元気になった行き倒れの青年が涙目で縋る。
「お願いします。家族を助けて下さい」
リラは「王子様、助けてあげる事は出来ませんか?」と筆談の紙に・・・。
エンリとアーサーは顔を見合わせた。
そして「戦争、止めるか?」
先ず、ポテ族の陣営に行く。
「ポテ族の族長に会いたい」とエンリ。
陣営の門番が「何の用だ?」
「戦争をやっていると聞いた」とエンリ。
「傭兵か。何が出来る?」と門番。
「これでどうだ」
そう言ってエンリ王子は炎の魔剣を抜いて見せた。
族長の所に案内される。
「味方してくれるそうだが」とポテ族の族長。
「いや、戦争を止めに来た」とエンリ。
族長は「断る」と一言。
「みんな苦しんでいる」とエンリ。
「悪いのは奴等だ」と族長。
「力づくでも止めてやる」とエンリ。
「やれるものなら、やってみろ」と族長。
王子たちが額を集めて相談する、
「どうする?」とエンリ王子。
「当事者はもう一人居ます」とアーサー。
パテ族の陣営に行く。
「パテ族の族長に会いたい」とエンリ。
陣営の門番が「何の用だ?」
「戦争をやっていると聞いた」とエンリ。
「傭兵か。何が出来る?」と門番。
「これでどうだ」
そう言ってエンリ王子は炎の魔剣を抜いて見せた。
族長の所に案内される。
「味方してくれるそうだが」とパテ族の族長。
「いや、戦争を止めに来た」とエンリ。
族長は「断る」と一言。
「みんな苦しんでいる」とエンリ。
「悪いのは奴等だ」と族長。
「力づくでも止めてやる」とエンリ。
「やれるものなら、やってみろ」と族長。
とりあえず族長の所から去って、戦場の様子を見に行く。
戦場では、両方の戦士が鉄砲を構えて睨み合っている。
「ポックリ男爵の奴、双方に武器売ってる訳かよ」とアーサーが言った。
「とんでもない奴だな」とタルタ、
エンリは「とにかく止めて来る。ファフで脅せば簡単だろ」
戦場でにらみ合ってるど真ん中に、エンリ王子を乗せたドラゴンが降り立つ。
そしてエンリは双方に向けて叫んだ。
「双方に停戦を要求する。さっき双方に戦争中止を呼び掛けて、双方から拒否られた。力づくでも止めるって言ったら、やってみろって両方から言われた。なので戦争を止めない方の相手になってやる」
エンリは漁村の現地人から借りた仮面をつけて蓑を纏い、炎の魔剣を翳して叫んだ。
「戦争したい奴はいねーがぁ!」
ファフのドラゴンが天に向かって炎を吐く。
双方の戦士たちは武器を置いて手を上げた。




