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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第21話 南方の大陸

かつてユーロの地で栄えたローマ帝国は、やがて東西に分裂した。

西にあった帝国の本体が滅亡した後も、東のローマは存続し、コンスタンティを首都として栄えた。

そこには、西において失われた古代ギリシア文明の知識も残り、多くの学者や魔導士、そして賢者と呼ばれた人たちも活動を続けた。


その領土の一部、ギリシャの南東の地はオリエントと呼ばれ、更に古くからの文明を誇った地であったが、その南の砂漠に新たな宗教国家として誕生したのがアラビアだった。

ユーロの教皇庁とアラビアの宗教指導者は互いを異教徒と呼んで対立し、アラビア勢力は東ローマへ侵攻し、北東の旧大陸からインドの手前まで、南方大陸から海を渡ってイベリアへと勢力を拡大した。


だがアラビアはやがて衰退し、その宗教を受け入れた北東の遊牧民部族が、アラビアの保護者を名乗ってオリエントを支配した。それがオッタマ帝国である。

強大化するオッタマはコンスタンティへの侵攻を本格化し、脅威を感じた多くの学者や賢者が、イタリアに亡命した。


オリエントの南、南方大陸の東にはアラビアの海がある。

ここはインドやその東から来る商品をユーロにもたらす交易路だった。



西方新大陸のパナマから南を目指そうとした矢先、ポルタから使い魔が来て、東の異教徒国のオッタマ帝国がコンスタンティを占領したとの報をもたらした。

伝令使い魔から本国の要請を受け取ったアーサーに、エンリ王子は更に問うた。

「まさか奪還しろとか?」

「千年栄えた都のお宝ガッポリ」とニケはウキウキ気分。

そんなニケにエンリは「勘弁してくれ」


「ってか、そういう話じゃないから」とアーサー。

ニケは「意気地が無いわね。唯一神の教えを守る戦士の義務よ」

「目に$マーク浮かべて言う台詞じゃないと思うよ」とエンリ。


アーサーは説明した。

「問題は東に向かう通商路が絶たれたという事ですよ」

「つまり通商路を確保するためコンスタンティを奪還しろと。でもってお宝ガッポリ」とニケ。

「じゃなくて、別の通商ルートを探索せよと。南方大陸を迂回するために大陸の南端をね」とアーサー。


「南方大陸の南端って・・・そんなものあるのか?」とタルタ。

そんなタルタにエンリは「俺たちがこれから目指そうとしてたのは何だっけ?」

タルタは「西の大陸の南端ですが何か」

「この大陸の南端があるって事は、あっちの大陸の南端だってあるって事だろ」とエンリ。


「とりあえず、どうする?」とジロキチ。

エンリは「航路を開拓するって事は、その南端までの、南方大陸の西岸がどうなってるか・・・って事だよね? それで南端まで行けば、後は異教徒の商人たちの居るアラビア海の航路がある」


「じゃ、今までポルタ商人が知ってる航路は、とりあえずどこまでなんだ?」とタルタ。

ニケが説明した。

「モロッコを越えてヴェルダ岬を迂回した所までね。今までは沖までずっと岩礁海域の続く難所だったけど、磁石のお陰で突破できたのよ」



ヴェルダ岬の難所を越えた南に拠点として建設された植民市、ヴェルダの港がある。

王子たちは港に船を泊めて上陸し、街の様子を探る。

いかにも海賊といった悪人ヅラがあちこちに居る。

住民たちの表情は暗い。


酒場に入って情報収集。

店の人に町の様子を聞くと・・・。

「各国の海賊が航路を辿って乗り込んで来て、街の治安を任せろとか言って、みかじめ料とかいうお金を要求するんです。その利権をいくつもの海賊団が取り合って・・・」


「町を海賊が占領してるって訳だ」とタルタ。

エンリが「そいつらって、どんな?」と問うと、店の主人は店内の一画を指して言った。

「あの人達です」


絵にかいたような悪者集団が大勢で店に陣取って好き勝手やっている。

「酒、もっと持って来い」と、怒鳴る彼等。

店の人は「済みません。お酒は在庫が無くなったもので」

「俺たちに飲ませる酒は無いってのか!」

そう言って暴れ出す海賊たち。おろおろする店の人。


そんな様子を見てタルタは「どうする? 王子」

ニケが「ファフ、やっちゃいなさいよ」

「店を壊す気かよ」とエンリ王子。

するとタルタとジロキチが「いや、俺たちで十分だ」


ジロキチとタルタで海賊を蹴散らす。

「今日のところは見逃してやる」と、絵にかいたような捨て台詞を残して海賊は逃げた。



ニケは、逃げていく海賊を指して王子に「見逃しちゃっていいの?」

「懲りただろ」と王子。

「じゃなくて、あいつらからお宝巻き上げるとか」とニケ。


アーサーはあきれ顔で「そればっかし」

「お金は必要よ」とニケが抗弁。

エンリはニケに「そういう銭ゲバは嫌われるぞ」


そんなエンリ王子に、店の人が、申し訳無さそうに・・。・

「あの、この子が食べた分の支払いをお願い出来ますでしょうか」


いつの間にかファフの前にお皿の山。満腹顔のファフ。

エンリは頭を掻いて「お金は必要だな」



海賊は港に接して建つ商館を占領して根城にしていた。

部下が酒場でタルタたちにやられた事を知った海賊の親玉は、夜が更ける中、仕返しの闇討ちを計画していた。

部下の一人が親玉に「闇討ちって卑怯じゃないですか」

「知恵の勝利だ。寝込みを襲って皆殺し。金目のものはごっそり。それが海賊の流儀さ」と親玉は高笑い。


その時、部屋の外から「じゃ、心置きなくやれるな」と笑う声。

親玉は「誰だ」と・・・。


殴り倒した見張りの海賊の首根っこをぶら下げてタルタが乗り込む。

それに続いて部屋に入ってきたエンリ王子たち一同。

そして海賊退治が始まった。


「今日もこれくらいにしといてやる」

そう言って、船で逃げる海賊たち。



翌日。

街を占領していた海賊が追い出されたと喜ぶ住人達だったが・・・。

港の見張り台から叫び声が響いた。

「海賊船だ。船団で乗り込んで来る気だぞ」

沖から多数の船が港に向かって来る。


港の人たちが口々に・・・。

「他の海賊を誘って仕返しに来たんだ」

「あんなに大勢で来られたら、守りきれんぞ」

「この町も終わりだ」


そんな港の人たちを見て、アーサーが「どうします、王子」

「今度こそドラゴンが必要だな」とエンリ王子は呟く。



エンリは、おろおろしている住人達に言った。

「もしあいつらをやっつける奴が居たら、縋りたいか?」

「縋りたいです」と港の住人達。

「それがドラゴンでもか?」とエンリ。

住人達は「自分たちは教会にも見捨てられた棄民です。それを助けてくれるというなら・・・」

「ファフ、やってやれ」とエンリ。



ファフはドラゴンとなり、炎を吐いて海賊船団を襲った。

何隻もの船が焼かれる中、必死に大砲で反撃する海賊船。


やがてファフが戻ってきた。

「砲弾が当たっちゃった。ちょっと痛い」

「鉄砲なら鱗で弾くんだろうが、砲弾はなぁ」とタルタ。

するとジロキチが「海中からなら砲弾は来ないんじゃないかな」

「敵船の位置が解らないと思う」とアーサー。


その時、人魚姫が筆談の紙に書いて示した。

「私が一緒に行きます。念話で指示をお願いします」



人魚になったリラに磁石を持たせ、アーサーが海上を望遠鏡で観測しながら指示を出す。


一隻の海賊船が船底を破壊されて撃沈される。

「次、北に30m、東に10m」とアーサーが念話で・・・。

指示に従って海中を移動し、指示された位置の船底を破壊。

「次、南に70m、東に20m」とアーサーが念話で・・・。


次々に海賊船を破壊し、海上の脅威は一掃された。



町の人たちは小舟を出して、波に浮かんでいる海賊たちを救助して捕縛。

波間に漂う食料その他の入った木箱や樽を回収した。


住人達は捕縛した海賊を監禁すると、王子たちに言った。

「五日後にはポルタの海軍が巡回に来るんで、その時こいつら引き渡します」


そんな彼等にニケが訊ねた。

「ところで、この奥地って砂漠よね? この街ってやっていけるの?」


「砂漠に金の鉱山があります」と住人達。

「金ですって?」と作業着にツルハシ姿になったニケが目を輝かせる。

住人達は「昔は相当出たんですけど、現地人の王国があって、かなり掘り尽くしたんですよ。けど現地人の遊牧民は今も居て、そいつらとの取引はあります」

がっかりするニケ。



エンリ王子が住人たちに訊ねる。

「もっと南に行くと、どうなる?」

「奥地が森林になってるそうです」と住人たち。


仲間たちの表情が明るくなる。

「きっと豊かな土地なんだろうな」とアーサー。

「切り開かれた広大な畑があって」とタルタ。

「ノルマンは寒くて食料に乏しかったけど、こんなに暖かいんだから作物もよく育つだろうね」とエンリ。

「たっぷり蓄えもあって、その穀物をどんどん仕入れてポルタに運べば大儲け」とニケ。


アーサーが「干ばつになったりしないの?」と尋ねる。

「年中雨が降って水は豊富だそうです」と住人たち。



出航して南を目指す王子たち。


海上から沿岸の様子を観察する。

「緑が増えてきたね」とエンリ。

「随分暖かい・・・ってか暑い」とジロキチ。

「この暑さどうにかならんか」とタルタ。

「寒くて凍死するよりマシだ」とアーサー。

「それより豊かな大地はどーした」とエンリ。

「畑が広がってる様子は無いぞ」とアーサー。


ニケが海岸に村を見つけて叫んだ。

「現地人の漁村があるわ」

「そろそろ水も不足してきたし、上陸してみようよ」とエンリ王子が言った。



ボートで上陸してみると、それなりに家がある。


エンリが浜辺に居る現地人に言った。

「水と食料と薪を調達したいんだが」

「川があるんで好きなだけ汲んでください。木はいくらでも切っていいですよ」と現地人。


「食料は調達できるかな?」とアーサーが現地人に・・・。

「今日の晩飯なら」と現地人。

「できれば一か月分くらい確保したいんだが」とエンリ。

「そう言われてもなぁ」と現地人。


「畑とか作ってないの?」とタルタ。

現地人は「やってますよ」と言って、彼等を案内した。



森の中に小さな畑がある。芋らしい作物を植えている。

タルタが拍子抜けしたように、エンリに「広大な森を切り開いてるんじゃないの?」

「ってかあちこち焦げた木があるんだが」とジロキチ。

ニケが「山火事でもあったの?」と現地人に訊ねる。


現地人は言った。

「焼き畑ですよ。森を焼いて畑にして芋とか植えるんです」

「蓄えは?」とニケ。

「そんなの無いです。その日食べる分だけ収穫するんで」と現地人。


「冬越えとか大丈夫なのか?」とエンリ。

すると現地人は「冬って何ですか?」

エンリ王子たち、唖然。


「あの、王子、これって」とニケ。

「食料調達は無理っぽいですが」とアーサー。

「この後ずっと、こんなのが続くのかよ」とジロキチ。

「どーすんだ、これ」とエンリ。


するとタルタが「大丈夫だよ。パンが無ければお菓子を食べればいい」

エンリはうんざりした顔でタルタを見て「誰かこいつを黙らせろ」

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