表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
12/614

第12話 茶番なラグナロク

ドイツ皇帝軍の侵攻を迎え撃つノルマン王グスタフ。その迎撃戦に参加したエンリ王子たち。

戦闘が激化する中、エンリはノルマン王の依頼でグングニルの聖槍を回収した。


ファフのドラゴンで砦の上空まで来たエンリは、アーサーの風魔法で戦の最中の砦に戻った。

人魚姫リラと12人のワルキューレも一緒だ。



エンリ王子を迎えてグスタフ王は言った。

「砦が襲撃されているんだが、聖槍は」

「これですが」と、回収した槍を差し出すエンリ。


「これさえあれば」と、槍を手にして喜ぶグスタフ王に、嬉しそうに駆け寄る老婆たち。

「グスタフ様」と口を揃える老婆たち。

グスタス王は「お前達」と言って彼女たちの手を執る。

「お慕いしておりました」と老婆たち。


そんな彼女たちを怪訝そうに見て、タルタは「あの婆さん達は?」

「ワルキューレさん達ですよ」とリラは筆談に紙に・・・。

「あれが?」とタルタ。

「美しき戦乙女って・・・・」とアーサー。

「詐欺だ」とジロキチ。

三人は口を揃えて「戦うヒロインのイメージが崩れていく」と悲痛な声を上げた。



そんな王子たちを他所にワルキューレたちと盛り上がるグスタフ王。

グスタフ王はワルキューレたちに「お前達が居れば千人力だ」

「お供します」とワルキューレの一人。

「今こそ戦乙女の技を」と別のワルキューレ。


彼女たちを背に、その場に居た家来たちに、王は宣言した。

「これより開門して騎士たちの先頭で、こ・・・腰が痛い」

エンリ王子は「あまり無理しない方が」

「今無理せんで何時無理するというのか」とグスタフ王。

「やっぱり無理してるんだ」とエンリ王子は溜息顔。


王は大臣に言った。

「皆を集めよ。大神オーディンの加護を示し、ノルマンの武勲を轟かそうぞ」



場が活気に満ちる中、エンリ王子はアーサーに言った。

「なあ、アーサー、あの槍なんだが」

「解ってます。魔力とかの類が全然無い、ただの権威の象徴です」とアーサー。


「あれで皇帝軍と戦えるのか?」とエンリ。

アーサーは「無理でしょうね。戦意だけ高めて無理な特攻でもすりゃ下手して全滅なんてことも」

「やっぱりファフがドラゴンの力で」と、隣に居たファフが言ったが・・・。

「王の立場はどうなる」とエンリ王子。


王子はしばらく考え、そして仲間たちに言った。

「あのさ、よーするにファフとその仲間が、皇帝軍はやっつけるけど王の味方という訳でもない・・・って事になればいいんじゃないのかな?」



砦に退避している民衆と、手の空いている兵を砦の中央広場に集め、彼らを前にノルマン王は言った。

「見よ。これぞ我が祖先が大神オーディンより授けられしグングニルの聖槍ぞ。これは我らノルマンの民に対する神々の加護の証」

民衆と兵たちは、口々に言った。

「あれが神の槍」

「何と神々しい」


彼等を前に、ノルマン王は檄を飛ばす。

「今こそこれを授けし神の期待に応える時ぞ。横暴なる皇帝軍を我が手で退けん。これより正門を開いて撃って出る。皆の者、我に続け!」

人々の歓声が轟き、場を熱狂が覆う。

「王様万歳」

「ノルマンの民万歳」

「大神オーディンに栄光あれ」



その時、エンリ王子が進み出て、グスタフ王に言った。

「その前にグスタフ陛下にお願いがあります」

「どうなされた、エンリ殿」とグスタフ王。


「実は私はこのノルマンの貴族の血を引いた者」とエンリ王子。

「何と同胞であったか」とグスタフ王。


エンリ王子は続けて語った。

「しかし、邪神ロキの血を受けた呪われた一族の末裔でもあるのです。その定めに打ち勝つべく修行を積んできましたが、どうやら限界が来たようです。もうすぐこの体は邪神に奪われ、世界を滅ぼす存在となるでしょう。そうなる前、人間であるうちにお願いしたかった。私が私でなくなった時、どうかあなたの手で私を倒してください。闇のヒーロー、ロキ仮面を倒せるのは、その槍しかありません」

グスタフ王は「解った。約束しよう」



そして、急に苦しみ出した・・・かのように身もだえる王子。

そして鉄製の謎の仮面を付けて、すっくと立ちあがると、高笑いを上げて叫んだ。

「ついに復活したぞ。我こそ邪神ロキの転生者、闇のヒーロー、ロキ仮面なり」

魔剣の束に槍の柄を結び付けた、とって付けたような槍もどきを翳してロキ仮面は言った。

「これぞグングニルの聖槍の対たるグングニルの魔槍。我、これをもって世界を滅ぼさん。終末戦争ラグナロクの始まりだ。だがその前に・・・」


エンリ扮するロキ仮面は大袈裟な動作で背後の戦場の方を振り向き、叫んだ。

「我等が聖なる戦場を荒らすドイツの賊どもを清掃せねばなるまい。行くぞ、ファフ」

ファフが「了解」



ロキ仮面に扮した王子はファフを伴って正門上の櫓に立つ。

鎧にあちこち謎の飾りを付けた、その痛々しい服装にあっけにとられる皇帝兵たち。


そして微妙な変身ポーズをとって叫んだ。

「闇が呼ぶ。影が呼ぶ。神を倒せと魔王が叫ぶ。我は世界の裏に封じられし邪神の転生、闇のヒーロー、ロキ仮面。世界の終末を告げる魔笛の響きとともに、ここに見参!」


唖然とした表情でそれを見る皇帝軍。攻め手を指揮する士官は部下に言った。

「何だ、あれは」

部下は指揮官に「あれは変態です」

「中二病という流行り病では?」と別の部下が言った。

「それはペストより恐ろしいのか?」と指揮官。

部下は「十代男子に対する感染力は最強とか」



櫓上からファフと一緒にロープを伝って正門前に降りるロキ仮面。

ドン引き状態で後ずさりする皇帝兵たちの前で、ロキ仮面は叫んだ。

「憎きオーディンの僕たるノルマンの民によってかけられた封印は破れ、世界を滅ぼすラグナロクの時は来た。我はノルマン王を倒す者なり。だがその前に、この聖なる戦場を荒らすお前達皇帝軍を、この手で駆逐せん。ファフ、やってしまえ」


ドラゴン姿となったファフは炎を吐いて、砦を囲む皇帝軍を追い散らす。そして皇帝軍の本陣目掛けて突進。

銃弾は鱗が跳ね返し、槍兵は尻尾の一撃が薙ぎ払った。魔導士たちが爆炎魔法で必死に応戦。

多大な被害を受けた皇帝軍を前に、ドラゴンは天に向かって雄叫びを上げた。



その時、戦場に立ったロキ仮面の前に、グスタフ王が聖槍を持って進み出る。

「ロキ仮面、勝負だ」とグスタフ王。

「受けて立とう」とロキ仮面。


ドラゴンが攻撃を中断。打撃を受けた皇帝軍も応戦を中断。

両軍が見守る中、向き合う二人は互いに槍を構える。

「いざ」


勝負は一瞬で決まった。聖槍で胸を突かれ、ロキ仮面は倒れた。

グスタフは槍を翳して叫んだ。

「ノルマン王グスタフ、邪神ロキ仮面を討ち取ったり!」


ノルマン軍の兵たちの歓声が上がる。

砦から見ていた群衆も歓声を上げ、口々に叫んだ。

「王様万歳」

「ノルマン万歳」

「グスタフ陛下に続け。皇帝兵を追い出せ」

手に手に武器を持って押し寄せる民衆勢に、ドラゴンとの戦いで傷ついた皇帝軍は成す術無く、船に乗って撤退した。 



結局、皇帝軍は魔物の襲撃によって痛手を受けて撤退し、その魔物をノルマン王が倒した・・・という事で決着がついた。

その手柄として、ノルマンはドイツから独立王国としての完全な自立を認められた。



焼け落ちた城下の再建の様子を王城跡から見下ろすグスタフ王とエンリ王子。

グスタフ王はエンリに言った。

「皆様のおかげで我が国は救われました。何とお礼を言えばよいのか」

エンリは「私こそ、王の力で邪神から解放されました。あなたは恩人です」

固く握手を交わす二人。


そして、老いた国王に寄り添う老ワルキューレたち。

「グスタフ様、もうお傍を離れません」とワルキューレの一人が言った。

「これからはみんな一緒だ」とグスタフ王。

「40年も我慢したんですからね」と、別のワルキューレ。

そんな彼等を眺めてジロキチは「あの爺さん大丈夫かよ」と笑う。



そしてタルタは思い出したように「ところで王子、何ともないの?」

「確かに槍で刺されたよね?」とジロキチ。

「あの槍には不殺の呪文をかけておいたんだよ」とアーサー。

「そんな呪文があったんだ」とタルタ。


アーサーは語った。

「イタリアのモンタギュー家って所の御曹司が恋人と心中しようって時に、親戚の貴族の居候やってた亡命賢者が可哀想だって事で呪式構築した新式魔法なのさ。刃物に呪いをかけると、それで刺しても相手を殺さずに死んだふりが出来るって魔法でね、そのカップルはどこかに逃げて夫婦やってる筈だよ。旦那の方はたしかロミオって言ったっけ」



「それであの槍って」とタルタ。

テーブルの上に大事そうに置かれた聖槍を手に取ってエンリは言った。

「これがその聖槍だよね」


それを眺めてアーサーは「豪華な造りではあるんだけどね」と言いつつ、その時アーサーはそれに気付いた。

そして「これ見てよ」

槍の柄の中ほどに掘られた、銘らしきもの。

エンリはそれを読んで「1350年コンスタンティノ製・・・って、もしかして偽物か?」


「ノルマン王国が成立した頃ですね」とアーサー。

「コンスタンティノには聖遺物の贋作を作る工場があるからな。そこで造られたんだろうね」とエンリ王子。

残念そうな目で、12人の老婆とイチャラブ中のノルマン王を見る、王子と仲間たち。



ワルキューレたちが一通り、グスタフ王とのイチャラブに満足すると、王はエンリに言った。

「ノルマン城は焼かれ、町も大きな被害を受けました。ですが住人たちは無事です」

「再建費用はどうしますか?」とエンリ王子。

「どうとでもなりますよ。お金は天下の回り物ですから」とグスタフ王。


するとタルタが「そういえばニケさん、船に何か運び込んでるけど」

「まさかあの人・・・」とエンリは頭痛顔で港に視線を向けた。



船底でニケが作業を終えて一息つきながら独り言を言う。

「これで全部ね。やっぱりこれが海賊の流儀よね」


そこにエンリ王子が乗り込んで「ニケさん?」と声をかけた。

ノルマン王子のカールと、数人の役人が一緒だ

ニケは「な・・・何よ。私、別にやましい事してないわよ」

「さっき運び込んでたこれ、ノルマン城の宝物蔵からくすねた代物だよね?」とエンリ王子。

ニケは「私のお宝よ」


エンリは溜息をつくとカールに「構わないから回収して下さい」

「感謝します。これで街を再建できます」とカール。

役人たちが、運び出し作業開始。

ニケは「ちょっと、私の財宝・・・」



ノルマン王親子や城の人たちに見送られて、港を後にする王子たち

岸壁で手を振るグスタフ王とカール王子。老いたワルキューレたち、一緒に戦った兵たち。

そして戦場でニケを助けた二人の女官が「ニケさーん」と叫ぶ。


そしてニケも港に向って叫んだ。

「私の財宝ーーーーーーー」

ジロキチがそれをあきれ顔で見て「まだ言ってるよ」



遠く離れる港を見ながら、アーサーは王子に言った。

「ところで、あの秘宝だけど、もしあの槍がその秘宝だとしたら、どうなるんですか? あの人達にとっては掛け替えの無いものですよね?」

「偽物だったけどね」とエンリ王子。

「略奪は海賊の流儀だぞ」とタルタが言う。

「けどタルタは、あのお人好しな王様たちに、探してた秘宝だからよこせ・・・って言える?」とアーサー。

タルタは「それは・・・」と口ごもる。


そんな彼等に王子は言った。

「その時はその時さ。とりあえず俺は、その"ひとつながりの大秘宝"が何なのかを知りたい。何でそう呼ばれたのかも含めてね」

タルタは一言「だよな」と言って笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ