第11話 激突の皇帝軍
ドイツ騎士団による異教徒狩りから始まったノルマン王とドイツ皇帝軍との戦争で、ノルマン王に味方するエンリ王子たち。
王の依頼で老いたワルキューレからグングニルの聖槍を受け取った王子。
その頃、ノルマン王都では再び戦いが始っていた。
皇帝軍の本体が再び港に侵攻する。タルタが鋼鉄の砲弾となって敵船を次々に沈める。
陸上からアーサーがファイヤーボールを打ち込むが、敵船からの魔法攻撃に次第に押される。
何人かのノルマン魔導士がアーサーと共に戦うが、あまり魔力は強くない。
「数が多すぎる。これじゃきりがないぞ」とアーサーは言った。
軍船が港を砲撃しつつ小舟で接近。港と小舟との銃撃戦が始まる。
ニケも加勢するが焼石に水だ。上陸してきた敵と戦うノルマン騎士とともに、ジロキチの四刀流が敵を薙ぎ払う。
だが、やがて数に圧されて退却を余儀なくされるノルマン側。
港の陥落を前に、アーサーは敵艦に居るタルタに撤退の合図を送った。
上陸した皇帝軍は城下の街の占領にかかる。
その様子を見ながらタルタ・ジロキチ・ニケ・アーサーで作戦会議。
「あいつら、占領した街で略奪始めるよね?」とニケ。
「ちょっとからかってやろうぜ」とタルタ。
「賛成」とジロキチ。
皇帝軍が兵站陣を置いた王城の一角では、軍船から武器弾薬や食料などの物資が運び込まれている。
住民は既に砦に退避し、街の様子を遠望しつつ唇を噛む。
そして略奪を始めた皇帝兵たち。
数人の兵が、有力者の屋敷の一つに侵入する。
「金目のものは頂きだぜ」と言いながら屋敷内を漁る。
目ぼしい物は既に運び出されている様子を見て、仲間に呼びかける。
「何かありそうか?」
「おい、これ見てみろ」
そう声を上げたのは、鉄化してポーズをとるタルタを見つけた皇帝兵。
「金属製の彫像かな?」と、兵の一人が言う。
「それにしちゃ不細工だな」と、もう一人が言う。
「ほっとけ」
その誰かの言葉に、兵の一人が「何か言ったか?」
「いや」と他の兵たち。
そして一人の兵が「けど、まるで生きてるみたい」
「とにかく珍しいから貰っていこうぜ」と、もう一人の兵が言った。
兵たちは家具や食料とともに、鉄化したタルタを荷車に乗せて、戦利品として物資を集積している王城の建物に運び込んだ。
「じゃ、次の獲物を探しに行くぞ」と言って兵たちが建物を出ようとした時・・・。
「おい」と彼等に呼び掛ける誰かの声。
「誰だ」と言って兵たちは周囲を見回す。
「ブサイクで悪かったな」
その言葉とともに鉄化を解いたタルタは、兵たちを全員殴り倒す。そして彼らの兵服を剥ぐ。
タルタは城壁で見張りをしていた兵を殴り倒し、ニケとジロキチに合図を送って城に招き入れる。
そして三人で兵服を着て皇帝兵に成り済ます。
「これからどうする?」とタルタ。
ジロキチは「火薬庫と武器庫をドカン。軍船から運びこまれた物資を灰にしてやろうぜ」
その頃、街の中央広場に設営された皇帝軍の本営では・・・。
本営のテントの中で椅子に座って周囲を威圧する総司令官。
伝令が報告に来る。
「物資の搬入がほぼ終わりました。午後には体制が整います」
「明日には総攻撃に入れそうか?」と司令官。
参謀は「午後からでも出撃は可能です。ノルマン勢は奥の砦に立て籠もっています」
総司令官が「それではこれより全軍をもって・・・」
その時、城から火の手が上がった。
弾薬庫が爆発し、武器や食料が運び込まれた王城が燃える。
消火に駈けつけた兵たちは、その場に居た兵たちを相手に大立ち回りを演じていたタルタとジロキチの二人を見た。
「何だあいつら」と下士官が叫ぶ。
消火の隊を率いる士官は頭を抱えて「とにかくあいつら、どーにかしろ。これじゃ鎮火作業が出来ん」
加勢する帝国兵を余裕で圧倒する二人。
鉄砲を持つ兵の銃弾を鉄化したタルタが跳ね返し、その背後から跳躍したジロキチが四本の刀で薙ぎ倒す。
密集体形で槍を構えた歩兵たちの中央をタルタの鋼鉄砲弾が吹っ飛ばし、鉄化を解いて周囲の兵を殴り倒す。
騒ぎの中で延焼を防ぐ事も出来ず、城が焼け落ちて皇帝軍の物資が灰になる中、ニケが乗る馬がもう一匹の馬とともに現場に突入し、三人は二匹の馬に乗って逃走。
焼け落ちる城をテントの前で見ながら地団太を踏む皇帝軍の総司令官。
手をこまねく部下たちに怒号をまき散らす。
「何をしている。火を消す事も出来んのか」
「三名ほどの敵工作員の妨害で」と参謀。
「城の物資は」と総司令官。
「食料も含めて全滅です」と参謀。
総司令官は喚いた。
「おのれ、食い物の恨み思い知い知らせてやる。さっさとぶち殺せ。奴等はどこだ」
「あそこです」と参謀は、向こうから馬に乗って爆走して来るタルタたちを指さした。
真っ直ぐ本営に向って来る二頭の馬と、それに乗った三人の男女。
参謀が「こっちに向ってきます」
「撃ち殺せ。一人も逃がすな」と総司令官。
鉄砲を構える兵たちに向けて、ニケは両手に三本の銃筒を束ねた短銃を構える。六発の連射で皇帝兵を仕留める。
慌てて後ずさる将軍を庇うように、剣を抜いて身構える騎士たちに向けて、ジロキチが跳躍。
四本の刀が一閃し、彼らを切り伏せてたジロキチは、横を走り抜ける馬に飛び乗る。
本営を中央突破した彼らの前に魔導士が操るゴーレムが立ち塞がる。
「任せろ。鋼鉄の砲弾」
そう叫んだタルタの鋼鉄の体の一撃がゴーレムを倒した。
走り去る二頭の馬を睨み、額に蹄の跡をつけて、激怒する皇帝軍の総司令官は叫んだ。
「おのれ、騎兵隊、奴等を逃がすな」
皇帝軍の騎兵軍団は総力をあげて彼らを追い、砦の前の平原まで誘い込まれた時、アーサーは呪文の詠唱を終えていた。
皇帝軍の騎兵は彼のファイヤーレインによって多くの損害を出して、その日の戦闘は終了。
翌朝、城下から発進した皇帝軍が砦に向けて進軍を開始。
雨のように降ってくる矢を、急ごしらえの木楯で防ぐ砦のノルマン兵。皇帝軍の背後には何体ものゴーレム。
「ドイツ魔導士隊のお出ましだな」とジロキチ。
タルタは「あんな土人形、俺の砲弾でぶっ飛ばしてやる」
「ちょっと待て」
そう叫ぶアーサー。上空に描かれつつある魔法陣に気付いたのだ。
彼は「ファイヤーレインが来るぞ」と周囲のノルマン兵に警告を発した。
タルタは「あれ、お前以外にも使えるのかよ」
「当たり前だ」
そう言ってアーサーは、急遽防御呪文を唱える。
「汝、神なるものの楯よ。汝の名はイージス」
古代語の呪文とともにいくつもの古代文字が頭上で縦横の列を成す。
「悪しき呪いを弾く万能の楯よ、我等の頭上を守護せよ。障壁あれ」
砦の上空に現れた光の障壁が空から降り注ぐ炎を防ぐ。
「アーサーすげぇ」とはしゃぐタルタ。
だがアーサーは「また来るぞ。魔導士陣がどこかにある。それを叩かないと」
するとニケが「あれじゃないの? それと、あそことあそこ」
数人の魔導士が何かやっている場所をニケが望遠鏡で捉えたのだ。
タルタは「任せろ。鋼鉄の砲弾」
鋼鉄の体となってその一か所へと跳躍したタルタは、魔導士たちの祭壇を破壊し、彼らを殴り倒す。
そして次の魔導士陣に向けて砲弾となって跳躍する。
砦では皇帝軍兵士たちが城壁や門に取り付き、壮絶な攻防戦が始った。
あちこちで城壁を乗り越えた敵兵と乱戦を繰り広げるノルマン兵たち。
城壁の上の櫓で、ニケがノルマン軍から借りた三丁の鉄砲と志願した二人の女官を使って、登って来る敵兵を次々と撃ち落とす。
二人の女官が弾を込めてニケに渡す。それを使って敵兵を狙撃。その銃を女官に渡して・・・。
「次の銃、お願い」
「どうぞ」と女官が弾を込め終わった銃を渡す。
銃身の長い分射程も長く、百発百中で敵を仕留める。
正門に取り付いた皇帝兵が、車輪のついた大きな丸太杭で門の破壊を試みる。
「まずいな」と守備を任されたノルマン士官が顔を曇らせる。
ジロキチが「破られる前に俺がどうにかしてやる」
「どうしますか」とノルマン士官。
「一旦門を開けろ。入ってきた奴等を囲んで袋叩きだ」とジロキチ。
破壊されようとしていた門が開き、敵兵がなだれ込む。その彼等の頭上に舞い降りたジロキチ。
「はい、ここで入場締め切りね」
その言葉とともに、門のすぐ内側で四本の刀が一閃。敵兵をなぎ倒し、敵がひるんだ隙に門を閉じる。
門の内側に取り残された敵兵は、ノルマン兵に取り囲まれて全滅した。
城の外ではタルタが敵のゴーレムを次々に砲弾となって撃破している。
その様子を櫓の上から見て、アーサーが顔を曇らす。
「奴もそろそろ限界だろうな」
ノルマン王も顔を曇らせる。
「城壁も限界のようだ。ここは騎士たちと共に打って出て・・・」
その時、アーサーに人魚姫リラの念話の声が届いた。
「アーサーさん、今戻りました」とリラ。
アーサーは「人魚姫か。王子は」
「無事です。それと12人のワルキューレさん達」と言ったリラの言葉を、アーサーは王に伝える。
「彼女たちが来ているのか」とノルマン王グスタフ。
リラは言った。
「その件で王子様から王様に伝言です。放置プレイは趣味が悪すぎだって」
それをアーサーが伝えると、グスタフ王は「彼女たちには済まないと思っている」
「それで、今どこに」とアーサーはリラに・・・。
リラは「上空の雲の中です。ドラゴンの姿が見られるのは不味いんで、ここから飛び降りるから風魔法で受け止めてくれって」
「解った。それで槍は」とアーサー。
「無事確保しました。ただ・・・」とリラ。
「何だ?」とアーサー。
リラは「後で話します」
「とにかく解った」と言って、アーサーは風魔法の呪文詠唱にかかる。
上空から落ちてくる15人をアーサーの風魔法で受け止める。




