思い出
リーパー達がとてもうれしそうな顔で近寄ってきた。
「見ろよイルナ!! ついに成功したぜ!!」
「へー? なら見せてもらえる? 私がバカに出来ないようなその成功作品」
私はイスに座り、頬杖をつきながらそう呟いた。
「へっ! 見てろよー……! 第一階梯魔法術式 イグニス!!」
ちょこっ……とマッチ棒のような頼りがいのない炎がマスケット銃の先に現れた。私は思わず、その場で笑い転げてしまったわ。
「あはははっ、あなたそれっ……ふふっ。あははは」
「なっ……! おい笑うなよ!! 出ただけすごいだろ!! 俺達は全員魔法なんか使えないんだから!」
「えぇそうね。それで焚き木に火をつければ良いんじゃないかしら」
「み、見てろよ! そのうちすんごい魔法つかう銃を作ってやる!!」
私は涙を指で拭いながら言った。
「えぇ、楽しみにしているわ。ぜひともすごい魔法を使うマスケット銃が出来るのをね」
「うぅ……期待してないだろ!」
「あら? 私はちゃーんと期待してるわよ。何年かかっても待ってあげるから頑張ってちょうだい」
「約束してやるよ! お前が泣かないような世界を作る為にな」
私は喉が詰まるような感覚を覚えた。
「俺達は元々、ただすごいものを作りたいだけだった。でも、今は違う。お前があの日泣いてから決めたんだよ。大切な人が死ぬから泣くんだ。戦争を終わらせるにはそれだけ強い何かがいる。待ってろよ。俺達はお前を泣かせない日々を作る」
「……バカね。少しだけ、期待してあげるわ」
リーパー達は互いの顔を見合って口角を上げた。
――数日後のことだった。いつもの時間になっても彼らが来ない。私は退屈そうに天井を見上げていた。ふと視線をガラクタの山に向ける。
「よく集めたわよね。本当にたくさん失敗して……」
不安になった私は倉庫から外へと出た。歩いて探し回ったけどどこにもいない。街中を探し回っても、どこにもいない。焦燥感にかられながら、私は街で一番高い時計塔へと駆け上がった。
大きな爆発音。衝撃波がこっちにまで伝わる。私は時計塔に昇ってその位置を確認した。
「まさか……いえそんな、だってあの子達はまだ……子供なのに」
私は走った。時折足がもつれてしまうくらいに焦っていた。そこはいくつもの焼け焦げた死体だけが残っている。
「いないわよね? 銃を集めるだけならいつも深夜に……」
一人ひとり確認していく。一つの山になった死体の数。背丈が小さい。
「はっ……はっ」
息が、うまく出来ない。一人目を仰向けにした。焼け焦げて顔が識別できない。それでもだれだか分かってしまった。二つ重なったドッグタグを確認して名前を確認する。
「いやっ。いやよ。やだっ……ピーター……」
手が震える、視界が滲む。嗚咽が止まらない。
「コルト……ナヴィ……エター……」
みんな、みんないる。どうして……夢があった、才能があった。この子たちは未来があった。なのに……
私は最後の一人を仰向けにした。
「リーパー……リーパー!!」
私はその死体の上で喉が張り裂けるほど叫んだ。どうして、どうしてどうしてどうして。人は死ななきゃならないの。なんでいつも私を置いていくの。
「あぁぁあああああ!!」
喉を締め付けるように、みんなを抱きしめながら地面を叩いた。理不尽だ。戻ってこない。みんなが山になって守っていたものを見る。
「マスケット銃……」
私はそっと手に取った。それを大事に抱きしめた。
――私はそれを影の中へと仕舞った。みんなのドッグタグを一つ取って握りしめた。ゆらゆらと立ち上がり、敵国を目指した。
殺してやる。全員。一人残らず塵と化してあの世で詫びればいい。
「――第六階梯魔法……」
私は固まった。涙を流しながら、引き金にかけた指を震わせ、私に銃を向ける兵士。それは、リーパーたちと同じくらいの歳の子どもだった。結局……私は魔法を解き、背を向けて二つの国から離れた。
――最初から関わらなければ良かった。知らなければ辛くなかったのに。こんな思い、二度としたくないと思っていたのに。私は森の中で泣き続けた。歩きながら、みんなの名前を呼んだ。返事がないって分かりながら。
「というお話よ。実はね。あの子達のマスケット銃は完成していたの。あの子達の魔力量が少なすぎただけだったのよ。本当にすごいものだった。だから……もっと、褒めてあげれば良かった。あなた達はすごいのよって。後悔したって……遅いのにね」
フランがイスに座りながら溢れる涙を腕で拭っていた。私は慌ててフランを抱きしめた。
「ごめんなさい……泣かせるつもりじゃなかったの。ただ……あなたがすごいって言ってくれたマスケット銃を作った子たちも、たくさん失敗した。だから自信を持ってって、伝えたかったのよ」
「ごめんっ……あまりにも不憫で……イルナちゃんの気持ちを考えると、私っ」
「しーっ。私はもう大丈夫よ。あなた達がいるんだから。ね?」
頭を優しく撫でる。フランを落ちつかせ、私たちは眠りについた。
――翌日。フラン、エリス、クローネの目が赤く腫れている。
「……二人とも聞いてたわね?」
エリスが指を遊ばせながらコクリと頷いた。クローネはそっぽを向きながら、耳に勝手に入ってきただけよと言っていたけれど、声が震えている。
「別にいいわよ。いずれ話そうとは思っていたもの。でもこれでフランには……私が人間じゃないことはバレちゃったわね」
フランが首をかしげる。
「え? そうなの?」
数秒、静寂の中で時間が止まったかのように私は言葉を失った。
「……おかしいと思わないかしら? この見た目で、ドワーフの店では十年ぶり。さらに昔にあんなことがあった」
「あぁー! 確かにっ!」
「深く考えてなかったのね……まぁいいわっ。今日は依頼をこなすんだから。各々修行の成果を見せてちょうだい」




