第九十八話「待つ間に、依頼をこなす」
ガデルから呼ばれるまで、時間があった。
製作には時間がかかると言っていた。
急かすなとも言っていた。
急ぐ必要はなかった。
その間も、依頼は続いた。
六人での動きが、少しずつ変わってきていた。
最初の頃は、全員がお互いの動きを確認しながら動いていた。
今は違った。
確認しなくても、動けるようになってきていた。
ミルヴァが先行する。
アーヴィンさんが制圧する。
マユミが追う。
リアが支える。
コリンが守る。
俺が組む。
それが、当たり前になってきていた。
その日は、北東の森への依頼だった。
モスハウンドの間引きだった。
苔に覆われた狼型の魔物だった。
擬態性能が高く、気づきにくい。
五人のときは、リアの索敵で何とか対応していた。
今回は、ミルヴァが先行した。
「五体。散っている。うち二体、擬態中」
戻ってきてすぐに言った。
「擬態中の二体の位置は」
「左の大岩の陰。もう一体は倒木の下」
「リアさん、確認できますか」
リアが少し間を置いた。
「倒木の下は反応があります。大岩の陰は、熱源が岩に吸われて判別しにくい」
「ミルヴァさんの情報を優先します」
「同意します」
段取りを組んだ。
「アーヴィンさんが正面の三体を。マユミは大岩の陰へ。ミルヴァさんは倒木の下を」
「わかった」
「リアさんは正面の援護。コリンさんは後方」
「了解です」
全員が動いた。
早かった。
マユミが大岩の陰に踏み込んだ。
擬態していたモスハウンドが飛びかかった。
マユミが一歩引いた。
躱した。
そのまま横から斬った。
仕留めた。
アーヴィンさんが正面の三体を制圧した。
音がなかった。
気づいたら終わっていた。
ミルヴァが倒木の下から戻ってきた。
「片付いた」
「ありがとうございます」
コリンが言った。
「今日も暇でしたね」
「いいことです」
「本当にそうですね」
リアが言った。
「ミルヴァさんの偵察とあたしの索敵を組み合わせると、擬態系の魔物に対して穴がなくなります」
「そうですね」
「精度が上がっています」
ミルヴァが少し前を向いた。
「森には慣れてきた」
「そうですか」
「火山地帯より動きやすい」
「足元が安定していますから」
「そうだ」
アーヴィンさんが静かに言った。
「連携が変わってきた」
「そうですね」
「最初と違う」
「はい。全員が役割を掴んできていると思います」
「そうだな」
短かった。
でも、それがアーヴィンさんの評価だった。
全員が無傷だった。
報酬は銀貨六枚だった。
六人で割った。
小さかった。
でも、問題ではなかった。
今日の収穫は別のところにあった。
数日後だった。
別の依頼をこなした帰りだった。
ギルドの前で、ゴルフさんに会った。
「おう、久しぶりだな」
「お久しぶりです」
「六人になったと聞いた」
「はい。先月から」
ゴルフさんが全員を見た。
ミルヴァのところで少し止まった。
「新しい顔だな」
「ミルヴァさんです。ニンジャ職です」
ミルヴァが少し頷いた。
「よろしく」
「ああ、よろしく」
ゴルフさんが俺を見た。
「次の依頼、また頼めるか」
「はい。内容を聞かせてください」
「輸送の護衛だ。ルートが少し長い。六人いるなら安心だ」
「詳細を教えてください。段取りを組みます」
「助かる。明日、正式に依頼を出す」
「わかりました」
ゴルフさんが去った。
マユミが言った。
「常連か」
「はい。話が通じる方です」
「六人見て安心したって言ってたな」
「そうですね」
「頼りにされてるじゃないか」
「それが一番です」
マユミが少し笑った。
「現場仕込みか」
「はい」
「知ってる」
宿に戻った。
マルティナさんが夕食を出した。
具だくさんのスープだった。
厚切りのパンがついていた。
卵も一つずつあった。
六人分、きっちり並んでいた。
何も言わなかった。
でも、今日は少し良い日だと、わかった。
「いただきます」
うまかった。
待つ間も、動いていた。
段取りは、止まらなかった。
第九十八話「待つ間に、依頼をこなす」 了




