第2章 異常の初観測(黄金砂漠遠征) 第1話 隊商護衛
旅には。
道連れが、要る。
一人で、歩ける、道は。
思っている、以上に、短い。
――だから。
増えることを。
喜んでも、良いはずだった。
ギルドの、掲示板に。
これまでにない、規模の、依頼書が、貼り出されていた。
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「黄金砂漠」
「横断」
「隊商護衛」
ヒコは、その、文字を、見つめた。
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依頼主は、商業ギルド系列の、商会だった。
砂都ラシュカールとの、正式な、交易路を、開拓したい。
その、思惑が。
依頼の、規模に、表れていた。
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「大きい、依頼だね」
マユミが、依頼書を、覗き込む。
「ええ」
ヒコは、頷いた。
「期間も」
「長くなります」
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その時。
背後から。
聞き覚えのある、声が、掛かった。
「ヒコ様」
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振り返る。
そこには。
見慣れた、重装の、青年が、立っていた。
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「リク……?」
マユミが、目を、丸くする。
「なんで」
「こんな、所に」
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「ヒコ様が」
リクは、真剣な、顔で、答えた。
「フォルテス領の、領主を」
「離れられた、と」
「聞きました」
「ならば」
「近衛としての」
「誓いは」
「終わっていない」
「そう」
「判断しました」
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「近衛隊」
「副隊長の」
「職務は」
「どうしたんですか」
ヒコが、尋ねる。
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「長期の、無給休暇を」
「願い出ました」
リクは、静かに、答えた。
「他の、者達も」
「もう」
「立派に」
「やれます」
「私が」
「いなくても」
「評議会を」
「守れます」
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その、言葉の、後ろに。
もう一つ。
続く、言葉が、あった。
「私の」
「役割は」
「ヒコ様の」
「近くにいて」
「守ることだと」
「そう」
「思っています」
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ヒコは、しばらく。
リクの、顔を、見つめた。
その、目に。
迷いは、なかった。
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「分かりました」
ヒコは、静かに、頷く。
「よろしく」
「お願いします」
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その、時。
リクの、後ろから。
もう二人の、姿が、現れた。
「お久しぶりです」
落ち着いた、声の、女性。
そして。
「わあ、本当に、いた!」
元気の良い、声の、少女。
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「リア」
「ルナ」
マユミが、驚いた、声を、上げる。
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「魔法兵団の」
「外部研修という、名目で」
リアが、淡々と、説明する。
「南方の、魔法体系と」
「環境下での、魔法運用を」
「調査するためです」
「団長職務は」
「副団長に」
「預けています」
「ルナも」
「研修に、同行させています」
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リアが続ける。
「私は」
「その、護衛も」
「兼ねています」
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「それは、私のセリフです」
リクが、ため息混じりに、言った。
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「本当は」
ルナが、口を、尖らせる。
「ヒコさんと」
「マユミさんに」
「会いたかった」
「だけ、だけどね」
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リアが、横目で、ルナを、見る。
ルナは、慌てて、口を、噤んだ。
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「三人とも」
「できれば」
「今回の」
「依頼に」
「同行して」
「もらえますか」
ヒコが、尋ねる。
三人は。
迷わず、頷いた。
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受付で。
依頼の、詳細を、確認していると。
見覚えのある、茜色の、外套が、目に入った。
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「お前らも」
「これ、受けるのか」
トウマが、声を、掛けてくる。
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「暁の、皆さんも」
「同じ、依頼、ですか」
「ああ」
トウマが、頷いた。
「デカい」
「依頼だからな」
「稼ぎ時だ」
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依頼の、割り振りを、確認する。
ヒコ達は。
護衛対象の、別動隊――
後方支援と、荷馬車の、警護を、担当することになった。
暁は、また、別の、区画。
だが。
同じ、隊商の、中にいることに。
変わりは、ない。
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リノが。
ヒコ達の、新しい、仲間を。
興味深そうに、見ていた。
「増えたんだね」
「三人も」
「ええ」
ヒコは、頷いた。
「心強い」
「仲間です」
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出発前夜。
拠点の、一階には。
久しぶりに。
賑やかな、声が、響いていた。
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「みんな、久しぶり」
マルティナが、厨房から、顔を、出す。
「マルティナさん」
「お久しぶりです」
「これから、お世話になります」
「よろしく、お願いします」
リクが、丁寧に、頭を、下げる。
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「今夜は」
「歓迎会だ」
マルティナが、鍋を、卓に、置いた。
湯気と共に。
独特の、香りが、広がる。
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「これは……」
「男カレー、です」
ヒコが、少しだけ、笑った。
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「この香り」
「初めてです」
リアが、匙を、手に取る。
「食欲が、そそられる香り」
「いただきます!!」
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「美味しい!」
ルナが、一口、食べて。
目を、輝かせた。
「これ」
「もっと」
「食べたい」
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リクは。
黙々と、皿を、平らげていく。
その、姿を、見て。
マルティナが、満足げに、頷いた。
「良い、食べっぷりだ」
「気に入ったようだね」
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賑やかな、食卓を、眺めながら。
ヒコは。
静かに、思う。
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マユミと二人で、始めた、旅だった。
地面に、降りて。
現場を、もう一度、見るための、旅。
だが。
いつの間にか。
その、旅には。
こんなにも、多くの、仲間が、増えていた。
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「明日から」
「また」
「忙しくなるね」
マユミが、隣で、呟く。
「ええ」
ヒコは、頷いた。
「でも」
「悪くない」
「賑やかさです」
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旅には。
道連れが、要る。
一人で、歩ける、道は。
思っている、以上に、短い。
増えた、仲間の、数だけ。
守るべきものも。
増えていく。
それを。
ヒコは。
まだ。
重さとしてではなく。
温かさとして。
感じていた。
第1話 隊商護衛 了
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【次回予告】黄金の、地獄。
黄金砂漠、突入。
昼は、灼熱。
夜は、極寒。
この、旅の、本当の、厳しさが。
始まる。
【路銀・第2章 第1話時点】
・所持金:金貨56枚・銀貨4枚
※依頼の、前金:金貨2枚・銀貨5枚
※ラシュカールでの、宿泊費及び、往復の、旅費については、依頼者負担
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【装備】
■ リク
・平民・重装盾兵
・近衛隊 副隊長(長期無給休暇中)
・武器:《蒼鋼の槍》
・防具:《蒼鋼の重鎧》
《蒼鋼の大楯》
■ リア
・冒険者Bランク・王国勲爵士・魔術師(攻撃魔法:火・風/索敵魔法)
・魔法兵団 団長
・武器:なし(無詠唱・無媒体)
・防具:《術式制御衣》
・装備:《守護の魔石》
■ ルナ
・平民・魔術師見習い
・リアの弟子
・武器:《見習いの杖》
・防具:《見習い魔術帽》
《見習いローブ》
※装備については、初回及び更新時等でのみ記載。




