↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
501/527

第2章 異常の初観測(黄金砂漠遠征)  第1話 隊商護衛

 旅には。


 道連れが、要る。


 一人で、歩ける、道は。


 思っている、以上に、短い。


 ――だから。


 増えることを。


 喜んでも、良いはずだった。

 ギルドの、掲示板に。


 これまでにない、規模の、依頼書が、貼り出されていた。


──────────────────────────────────────


「黄金砂漠」


「横断」


「隊商護衛」


 ヒコは、その、文字を、見つめた。


──────────────────────────────────────


 依頼主は、商業ギルド系列の、商会だった。


 砂都ラシュカールとの、正式な、交易路を、開拓したい。


 その、思惑が。


 依頼の、規模に、表れていた。


──────────────────────────────────────


「大きい、依頼だね」


 マユミが、依頼書を、覗き込む。


「ええ」


 ヒコは、頷いた。


「期間も」


「長くなります」


──────────────────────────────────────


 その時。


 背後から。


 聞き覚えのある、声が、掛かった。


「ヒコ様」


──────────────────────────────────────


 振り返る。


 そこには。


 見慣れた、重装の、青年が、立っていた。


──────────────────────────────────────


「リク……?」


 マユミが、目を、丸くする。


「なんで」


「こんな、所に」


──────────────────────────────────────


「ヒコ様が」


 リクは、真剣な、顔で、答えた。


「フォルテス領の、領主を」


「離れられた、と」


「聞きました」


「ならば」


「近衛としての」


「誓いは」


「終わっていない」


「そう」


「判断しました」


──────────────────────────────────────


「近衛隊」


「副隊長の」


「職務は」


「どうしたんですか」


 ヒコが、尋ねる。


──────────────────────────────────────


「長期の、無給休暇を」


「願い出ました」


 リクは、静かに、答えた。


「他の、者達も」


「もう」


「立派に」


「やれます」


「私が」


「いなくても」


「評議会を」


「守れます」


──────────────────────────────────────


 その、言葉の、後ろに。


 もう一つ。


 続く、言葉が、あった。


「私の」


「役割は」


「ヒコ様の」


「近くにいて」


「守ることだと」


「そう」


「思っています」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく。


 リクの、顔を、見つめた。


 その、目に。


 迷いは、なかった。


──────────────────────────────────────


「分かりました」


 ヒコは、静かに、頷く。


「よろしく」


「お願いします」


──────────────────────────────────────


 その、時。


 リクの、後ろから。


 もう二人の、姿が、現れた。


「お久しぶりです」


 落ち着いた、声の、女性。


 そして。


「わあ、本当に、いた!」


 元気の良い、声の、少女。


──────────────────────────────────────


「リア」


「ルナ」


 マユミが、驚いた、声を、上げる。


──────────────────────────────────────


「魔法兵団の」


「外部研修という、名目で」


 リアが、淡々と、説明する。


「南方の、魔法体系と」


「環境下での、魔法運用を」


「調査するためです」


「団長職務は」


「副団長に」


「預けています」


「ルナも」


「研修に、同行させています」


──────────────────────────────────────


 リアが続ける。


「私は」


「その、護衛も」


「兼ねています」


──────────────────────────────────────


「それは、私のセリフです」


 リクが、ため息混じりに、言った。


──────────────────────────────────────


「本当は」


 ルナが、口を、尖らせる。


「ヒコさんと」


「マユミさんに」


「会いたかった」


「だけ、だけどね」


──────────────────────────────────────


 リアが、横目で、ルナを、見る。


 ルナは、慌てて、口を、噤んだ。


──────────────────────────────────────


「三人とも」


「できれば」


「今回の」


「依頼に」


「同行して」


「もらえますか」


 ヒコが、尋ねる。


 三人は。


 迷わず、頷いた。


──────────────────────────────────────


 受付で。


 依頼の、詳細を、確認していると。


 見覚えのある、茜色の、外套が、目に入った。


──────────────────────────────────────


「お前らも」


「これ、受けるのか」


 トウマが、声を、掛けてくる。


──────────────────────────────────────


「暁の、皆さんも」


「同じ、依頼、ですか」


「ああ」


 トウマが、頷いた。


「デカい」


「依頼だからな」


「稼ぎ時だ」


──────────────────────────────────────


 依頼の、割り振りを、確認する。


 ヒコ達は。


 護衛対象の、別動隊――


 後方支援と、荷馬車の、警護を、担当することになった。


 暁は、また、別の、区画。


 だが。


 同じ、隊商の、中にいることに。


 変わりは、ない。


──────────────────────────────────────


 リノが。


 ヒコ達の、新しい、仲間を。


 興味深そうに、見ていた。


「増えたんだね」


「三人も」


「ええ」


 ヒコは、頷いた。


「心強い」


「仲間です」


──────────────────────────────────────


 出発前夜。


 拠点の、一階には。


 久しぶりに。


 賑やかな、声が、響いていた。


──────────────────────────────────────


「みんな、久しぶり」


 マルティナが、厨房から、顔を、出す。


「マルティナさん」


「お久しぶりです」


「これから、お世話になります」


「よろしく、お願いします」


 リクが、丁寧に、頭を、下げる。


──────────────────────────────────────


「今夜は」


「歓迎会だ」


 マルティナが、鍋を、卓に、置いた。


 湯気と共に。


 独特の、香りが、広がる。


──────────────────────────────────────


「これは……」


「男カレー、です」


 ヒコが、少しだけ、笑った。


──────────────────────────────────────


「この香り」


「初めてです」


 リアが、匙を、手に取る。


「食欲が、そそられる香り」


「いただきます!!」


──────────────────────────────────────


「美味しい!」


 ルナが、一口、食べて。


 目を、輝かせた。


「これ」


「もっと」


「食べたい」


──────────────────────────────────────


 リクは。


 黙々と、皿を、平らげていく。


 その、姿を、見て。


 マルティナが、満足げに、頷いた。


「良い、食べっぷりだ」


「気に入ったようだね」


──────────────────────────────────────


 賑やかな、食卓を、眺めながら。


 ヒコは。


 静かに、思う。


──────────────────────────────────────


 マユミと二人で、始めた、旅だった。


 地面に、降りて。


 現場を、もう一度、見るための、旅。


 だが。


 いつの間にか。


 その、旅には。


 こんなにも、多くの、仲間が、増えていた。


──────────────────────────────────────


「明日から」


「また」


「忙しくなるね」


 マユミが、隣で、呟く。


「ええ」


 ヒコは、頷いた。


「でも」


「悪くない」


「賑やかさです」


──────────────────────────────────────


 旅には。


 道連れが、要る。


 一人で、歩ける、道は。


 思っている、以上に、短い。


 増えた、仲間の、数だけ。


 守るべきものも。


 増えていく。


 それを。


 ヒコは。


 まだ。


 重さとしてではなく。


 温かさとして。


 感じていた。



  第1話 隊商護衛 了



──────────────────────────────────────


【次回予告】黄金の、地獄。


 黄金砂漠、突入。


 昼は、灼熱。


 夜は、極寒。


 この、旅の、本当の、厳しさが。


 始まる。

【路銀・第2章 第1話時点】


・所持金:金貨56枚・銀貨4枚

 ※依頼の、前金:金貨2枚・銀貨5枚

 ※ラシュカールでの、宿泊費及び、往復の、旅費については、依頼者負担


──────────────────────────────────────


【装備】


■ リク

・平民・重装盾兵

・近衛隊 副隊長(長期無給休暇中)

・武器:《蒼鋼の槍》

・防具:《蒼鋼の重鎧》

    《蒼鋼の大楯》


■ リア

・冒険者Bランク・王国勲爵士・魔術師(攻撃魔法:火・風/索敵魔法)

・魔法兵団 団長

・武器:なし(無詠唱・無媒体)

・防具:《術式制御衣》

・装備:《守護の魔石》


■ ルナ

・平民・魔術師見習い

・リアの弟子

・武器:《見習いの杖》

・防具:《見習い魔術帽》

    《見習いローブ》


 ※装備については、初回及び更新時等でのみ記載。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。