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 第343話 評議会の思い

 語られなかった言葉ほど。


 重く、心に、残る。


 ――だから。


 今日だけは。


 語らなければ、ならなかった。

 評議会の間。


 いつもより、少し、早い時間に。


 皆が、集まっていた。


 バルドが、静かに、口を、開いた。


「今日は」


「議論では、なく」


「一人ずつ」


「思うことを」


「話して、いただければと」


「思います」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、頷いた。


「はい」


「聞かせて、ください」


──────────────────────────────────────


 最初に、口を、開いたのは、バルドだった。


「私は」


「ヒコ様が」


「この地に、来た日を」


「覚えています」


「まだ」


「何も、なかった」


「荒地でした」


──────────────────────────────────────


「あの頃」


 バルドは、続けた。


「ヒコ様は」


「毎日」


「地面ばかり」


「見ていました」


「土を」


「掘って」


「測って」


「また」


「掘って」


「その頃は」


「変な、奴だと」


「思っていました」


──────────────────────────────────────


「しかし」


 バルドは、ヒコを、見た。


「気づけば」


「この、荒地に」


「街が、できました」


「ヒコ様が」


「一人で」


「作ったわけでは、ありません」


「でも」


「ヒコ様が」


「いなければ」


「始まらなかった」


──────────────────────────────────────


「だから」


 バルドは、静かに、続けた。


「私は」


「ヒコ様を」


「自由にしたい」


「ヒコ様が」


「地面ばかり」


「見ていた」


「あの頃の、ように」


「もう一度」


「好きな、ものを」


「追いかける、姿を」


「見てみたい」


──────────────────────────────────────


 次に、ドガンが、口を、開いた。


「俺は」


「ヴァルク男爵の、圧力に」


「怯えていた、頃を」


「思い出す」


「あの、頃の、評議会は」


「何も、できなかった」


──────────────────────────────────────


「でも」


 ドガンは、続けた。


「ヒコが」


「一つずつ」


「教えてくれた」


「事実を」


「積み重ねること」


「感情的に、ならないこと」


「そして」


「一人で、抱え込まないこと」


──────────────────────────────────────


「今の、俺達は」


 ドガンは、静かに、言った。


「あの頃の、俺達では、ない」


「それは」


「お前が」


「俺達に」


「くれたものだ」


「だからこそ」


「俺は」


「お前が」


「教えてくれた、ことを」


「信じたいと」


「思う」


──────────────────────────────────────


 ガデルが、腕を、組んだまま、ゆっくりと、口を、開いた。


「俺は」


「まだ」


「反対の、気持ちが」


「消えて、いない」


──────────────────────────────────────


「だが」


 ガデルは、続けた。


「白金霊鉱の、こと」


「覚えているか」


「保管庫の、記録が」


「改ざんされた、あの、時」


「お前は」


「俺に」


「言った」


「『あの、石だけは」


「絶対に、渡すわけには」


「いかん』」


「その、俺の、言葉を」


「一緒に、なって」


「守ってくれた」


──────────────────────────────────────


「お前は」


 ガデルは、続けた。


「いつも」


「そうだった」


「俺達が」


「大切に、思うものを」


「一緒に、なって」


「守ってきた」


「その、お前が」


「今度は」


「自分の、身を」


「守る、番」


「なのかもしれん」


──────────────────────────────────────


 ガデルは、一度、言葉を、切った。


「だから」


「反対だと」


「言い続ける、つもりは」


「もう、ない」


「だが」


「簡単に」


「賛成だとも」


「言えん」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、頷いた。


「分かりました」


──────────────────────────────────────


 アーヴィンが、短く、続いた。


「俺は」


「賛成だ」


「理由は」


「前に、話した、通りだ」


「だが」


「一つだけ」


「言っておく」


──────────────────────────────────────


「お前が」


 アーヴィンは、続けた。


「どこへ、行っても」


「この地の」


「防衛は」


「俺が」


「守る」


「それだけは」


「約束する」


──────────────────────────────────────


 リアが、静かに、口を、開いた。


「私は」


「魔法兵団を」


「立ち上げた時」


「ヒコ様が」


「言った、言葉を」


「覚えています」


「『撃つ前に、読む』」


「あの、思想は」


「ヒコ様の」


「生き方、そのもの」


「だったと」


「思います」


──────────────────────────────────────


「見て」


 リアは、続けた。


「考えて」


「それから」


「動く」


「ヒコ様が」


「教えてくれた、その、姿勢は」


「もう」


「私達の、中に」


「根付いています」


「だから」


「私は」


「大丈夫だと」


「思います」


──────────────────────────────────────


 最後に、コリンが、口を、開いた。


「私は」


「まだ」


「迷ったままです」


「でも」


「一つだけ」


「言わせて、ください」


──────────────────────────────────────


「循環医療兵団を」


 コリンは、続けた。


「立ち上げた時」


「私は」


「『命を、繋ぎます』」


「そう、誓いました」


「それは」


「一人の、命だけでは、なく」


「この地」


「全体の」


「命だと」


「思っています」


──────────────────────────────────────


「ヒコが」


 コリンは、続けた。


「この地に」


「いてくれることも」


「ヒコが」


「自由になることも」


「どちらも」


「この地の」


「命を」


「繋ぐことに」


「繋がるなら」


「私は」


「それで」


「いいと」


「思います」


「まだ」


「答えは」


「出ませんが」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、何も、言えずにいた。


 一人ずつの、言葉が。


 この、二年間の、記憶と、重なって。


 胸の、奥に、静かに、積み重なっていく。


──────────────────────────────────────


 やがて、ヒコは、深く、頭を、下げた。


「ありがとうございます」


「皆さんの、言葉を」


「一つも」


「忘れません」


──────────────────────────────────────


 バルドが、静かに、言った。


「まだ」


「結論は」


「出ていません」


「ですが」


「今日」


「皆で」


「言葉を」


「交わせたことに」


「意味が」


「あったと」


「思います」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、頷いた。


「はい」


「本当に」


「そう、思います」


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 ヒコは、一人、評議会の間に、残っていた。


 誰もいない、静かな、部屋で。


 《可視化》を、使わずとも。


 皆の、言葉が、まだ、色濃く、残っているように、感じられた。


──────────────────────────────────────


 語られなかった言葉ほど、重く、心に、残る。


 だが。


 今日、語られた言葉は。


 それ以上に、重く。


 そして、温かく。


 ヒコの、胸に、刻まれていた。


 第343話 評議会の思い 了

【次回予告】二人の道。

 背中を押す言葉は、時に、答えそのものよりも、大切だった。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第343話時点】


・所持金:金貨4773枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第343話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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