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 第341話 問いかけ

 賛成も、反対も。


 同じだけの、想いから、生まれる。


 ――だから。


 どちらが、正しいかではなく。


 その、想いを、聞くことが。


 大切だった。

 数日後。


 評議会の間。


 バルドが、静かに、口を、開いた。


「先日の、ご提案について」


「それぞれの、考えを」


「聞かせて、いただければと」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、頷いた。


「はい」


「お願いします」


──────────────────────────────────────


 最初に、口を、開いたのは、ガデルだった。


「俺は」


「反対だ」


 その、はっきりとした、言葉に。


 評議会の間が、緊張した。


──────────────────────────────────────


「お前が」


「いなくなったら」


「誰が」


「この領地を」


「守るんだ」


 ガデルは、腕を、組んだまま、続けた。


「仕組みが、あるって、言うが」


「仕組みだって」


「誰かが」


「支えなきゃ」


「動かない」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、答えた。


「私が、いなくても」


「守れる、仕組みを」


「作ってきた、つもりです」


「それでも」


 ガデルは、譲らなかった。


「万が一の、時」


「最後に」


「決めるのは」


「誰なんだ」


「合議で」


「決められない、時が」


「来たら」


「どうする」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、考えた。


「その、答えは」


「まだ」


「私にも」


「ありません」


「だからこそ」


「皆さんの、意見が」


「必要なんです」


──────────────────────────────────────


 ガデルは、しばらく、黙っていた。


 やがて、小さく、息を、吐いた。


「反対だが」


「お前の、言うことも」


「分からなくは、ない」


──────────────────────────────────────


 次に、口を、開いたのは、アーヴィンだった。


「俺は」


「賛成だ」


 短い、言葉。


 だが、その、目には。


 確かな、意志が、あった。


──────────────────────────────────────


「トマが」


「副隊長に、なった」


「その時」


「俺は、思った」


「一人が、抜けても」


「次の、誰かが」


「役割を、引き継げる」


「それが」


「本当の、強さだ」


──────────────────────────────────────


 アーヴィンは、続けた。


「ヒコが」


「いなくなっても」


「守れる、仕組みが」


「あるなら」


「それは」


「弱さじゃない」


「今まで」


「積み上げてきた、証だ」


──────────────────────────────────────


 リアが、静かに、続いた。


「私は」


「賛成、寄りです」


「魔法兵団も」


「今は」


「私一人が」


「いなくても」


「回るように」


「なっています」


「同じことが」


「この地」


「全体でも」


「言えるはずです」


──────────────────────────────────────


 コリンが、少し、考えてから、口を、開いた。


「私は」


「まだ」


「迷っています」


「賛成にも」


「反対にも」


「決めきれません」


──────────────────────────────────────


「循環医療兵団も」


 コリンは、続けた。


「順調に、機能しています」


「でも」


「それは」


「ヒコが」


「この地に」


「いてくれる」


「という」


「安心感が」


「あってこそ」


「かもしれません」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、腕を、組んだまま、口を、開いた。


「俺は」


「賛成に」


「近い」


 全員の、視線が、集まった。


──────────────────────────────────────


「この一年」


「見てきた」


「お前が、いない間も」


「この地は」


「回った」


「それは」


「事実だ」


──────────────────────────────────────


「だが」


 ドガンは、続けた。


「賛成する、理由は」


「もう一つ」


「ある」


「何ですか」


 ヒコが、尋ねる。


──────────────────────────────────────


「お前が」


「この地に」


「縛られている」


「その、こと自体が」


「お前を」


「危険に、晒している」


「なら」


「お前を」


「自由にする、ことも」


「この地を、守る、方法の」


「一つだ」


──────────────────────────────────────


 バルドが、しばらく、黙っていた。


 やがて、静かに、口を、開いた。


「私も」


「賛成、です」


「ヒコ様が」


「おっしゃった」


「『私が、いなくても、守れる、仕組み』」


「それを」


「作ることこそが」


「この一年」


「私達が」


「目指してきた、ことでは」


「なかったでしょうか」


──────────────────────────────────────


 ミルヴァも、頷いた。


「私も」


「賛成」


「セドリックの、こと」


「情報流出の、こと」


「見てきて」


「思った」


「特定の、誰かに」


「頼りすぎる、仕組みは」


「脆い」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、皆の、意見を、聞いていた。


 賛成も、反対も。


 迷いも。


 どれも、この地を、思う、気持ちから、生まれていた。


──────────────────────────────────────


 ガデルが、再び、口を、開いた。


「俺は」


「まだ」


「完全には」


「納得、していない」


「だが」


 ガデルは、ヒコを、見た。


「お前が」


「本気で」


「そう、思っているなら」


「反対、ばかり」


「続けても」


「仕方ない」


──────────────────────────────────────


 バルドが、静かに、まとめた。


「賛成、反対」


「様々な、意見が」


「出ました」


「これを」


「もう少し」


「時間を、かけて」


「詰めて、いければと」


「思います」


「はい」


 ヒコが、頷いた。


「急ぎません」


「一つずつ」


「進めましょう」


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 ヒコは、《可視化》で、評議会の面々の、色の流れを、見つめた。


 賛成の、色。


 反対の、色。


 迷いの、色。


 どれも、違う、方向を、向いている。


 だが、その、根には。


 同じものが、あった。


 この地を、守りたいという、想いだった。


──────────────────────────────────────


 賛成も、反対も。


 同じだけの、想いから、生まれる。


 どちらが、正しいかではなく。


 その、想いを、一つずつ、聞くこと。


 それこそが。


 この、決断の。


 始まりだった。


 第341話 問いかけ 了

【次回予告】長影月の収支。

 二人だけの、静かな時間にも、答えは、宿る。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第341話時点】


・所持金:金貨4654枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第341話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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