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 第332話 雷鳴月の収支

 審議の日は。


 静かに、近づいている。


 ――それは。


 嵐の前の、静けさに、似ていた。


 誰もが、それを、感じながら。


 それでも、日常を、続けていた。

 雷鳴月、一日。


 フォルテス領。


 評議会の間。


 ゴルフが、帳簿を、広げる。


「今月の、収支報告です」


──────────────────────────────────────


「収入は」


 ゴルフが、順に、読み上げていく。


「安定して、推移しています」


「支出も」


「例年通りです」


 バルドが、資料に、目を、通した。


「今月の、増減は」


「+120枚です」


 ゴルフが、答える。


「所持金は、金貨4420枚と、なります」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、腕を、組んだまま、頷いた。


「悪くない」


「南方の、状況も」


「今のところ」


「大きな、混乱はない」


──────────────────────────────────────


 バルドが、続けて、書状を、手に、取った。


「王都から」


「弾劾請求について」


「審議結果が、届いています」


 全員の、視線が、集まった。


──────────────────────────────────────


「結果は」


「保留です」


 バルドが、告げた。


「弾劾請求は」


「棄却も」


「承認もされず」


「継続審議」


「という、扱いに」


「なりました」


──────────────────────────────────────


 評議会の間に、複雑な、空気が、流れた。


 ドガンが、鼻を、鳴らす。


「勝ちきれなかった、ということか」


「向こうも」


 バルドが、資料を、めくりながら、続けた。


「決定的な、証拠を」


「示せなかった、ようです」


「こちらの、弁明も」


「一定の、効果は」


「あったと、思われます」


──────────────────────────────────────


「だが」


 ドガンが、腕を、組んだ。


「決定的な、勝利でもない」


「宙ぶらりんの、まま」


「続く、ということだ」


──────────────────────────────────────


 ミルヴァが、口を、開いた。


「気になる、話が」


「一つ」


 全員の、視線が、集まる。


「弾劾請求そのものは」


「保留になった」


「だが」


 ミルヴァは、少し、間を、置いた。


「ヴァルク男爵領で」


「新しい、動きが」


「あるらしい」


──────────────────────────────────────


「新しい、動き」


 バルドが、尋ねた。


「中央評議会から」


「視察の、名目で」


「役人が」


「派遣された、という」


「噂だ」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、僅かに、目を、細めた。


「中央から」


「直接、か」


「今までは」


「なかった、動きだな」


──────────────────────────────────────


「まだ」


 ミルヴァは、慎重に、続けた。


「噂の、段階だ」


「だが」


「もし、本当なら」


「ヴァルクの、後ろに」


「今まで以上に」


「大きな、力が」


「動き始めている」


「ということかもしれない」


──────────────────────────────────────


 評議会の間が、静まり返った。


 バルドが、小さく、息を、吐く。


「引き続き」


「注視、しましょう」


「ああ」


 ドガンが、頷いた。


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 バルドは、一人、執務室で、王都からの、書状を、読み返していた。


 保留、という、言葉。


 それは、負けでは、ない。


 だが、勝ちでも、ない。


 まるで、この一年、続いてきた、均衡そのものを、体現しているようだった。


──────────────────────────────────────


 窓の外では、雷鳴月らしい、遠い、雷鳴が、微かに、響いていた。


 嵐は、まだ、来ていない。


 だが、その、気配だけは、確かに、近づいている。


 バルドは、その、音に、耳を、澄ませながら。


 静かに、次の一手を、考え始めた。


──────────────────────────────────────


 審議の日は、静かに、近づいている。


 その先に、何が、待っているのか。


 誰も、まだ、知らなかった。


 ただ、確かなことは。


 この、静けさが。


 長くは、続かない、ということだけだった。


 第332話 雷鳴月の収支 了

【次回予告】届かない敵。

 押し返せる敵と、届かない敵は、違う。


──────────────────────────────────────


【領地収支・雷鳴月一日時点】


・所持金:金貨4420枚(+120)


 収入内訳

 ・冒険者固定給  金貨   42枚

 ・勲爵士給与   金貨   12枚

 ・外部取引    金貨  107枚

 ・ギルド収益   金貨   56枚

  合計      金貨  217枚


 支出内訳

 ・幹部級給与   金貨   24枚

 ・準幹部級給与  金貨    9枚

 ・一般職給与   金貨   40枚

 ・部門運営費   金貨   24枚

  合計      金貨   97枚


──────────────────────────────────────


【発展進捗・雷鳴月一日時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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