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 第322話 若樹月・揺れる均衡

 均衡とは。


 何も、動いていないことではない。


 互いに、押し合う力が、釣り合っている、状態のことだ。


 ――だから。


 均衡は、いつか、必ず、崩れる。


 問題は。


 それが、いつなのか。


 ただ、それだけだった。

 評議会の間。


 バルドが、大きな地図と、一連の報告書を、テーブルに、並べた。


「一度」


「今、動いているものを」


「整理しておきたいと、思います」


──────────────────────────────────────


 全員が、頷いた。


 バルドが、一つずつ、指し示していく。


「一つ」


「南方の、調査」


「深部にて、扉状の構造物を、発見」


「現在も、慎重に、調査を、継続中です」


──────────────────────────────────────


「二つ」


「ヴァルク男爵による、弾劾請求」


「王都にて、正式に、受理」


「審議は、早ければ、雷鳴月」


「ハイム子爵が、審議委員に、名を連ねている」


──────────────────────────────────────


「三つ」


「セドリックの、追跡」


「王都西門付近を、最後に」


「痕跡が、途絶えている」


「弾劾請求の、動きと」


「時期が、重なっている」


──────────────────────────────────────


「四つ」


「ゼドの、異変」


「無意識の、仕草」


「一族の、言い伝えとの、関連」


「その可能性が、出てきている」


──────────────────────────────────────


 バルドは、一通り、並べ終えると、地図へ、視線を、落とした。


「こうして、並べると」


「一つ一つが」


「独立した、出来事ではないような」


「そんな、気がしてきます」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、腕を、組んだ。


「南方で、何かが、動き出した」


「王都では、弾劾請求が、動き出した」


「セドリックの、痕跡が、消えた」


「タイミングが」


「揃いすぎている」


──────────────────────────────────────


 ミルヴァが、静かに、口を、開いた。


「一年前も」


「同じだった」


「点が、いくつも、あって」


「それが、一つの、線に、繋がった時」


「初めて」


「事態の、大きさが、分かった」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、地図を、見つめていた。


「もし」


「これらが、すべて」


「一つの、流れだとしたら」


「その源に、あるのは」


「何だと、思いますか」


──────────────────────────────────────


 評議会が、静かになった。


 誰も、すぐには、答えなかった。


 やがて、ドガンが、口を、開く。


「分からん」


「だが」


「一つだけ、言えることがある」


「ヴァルクは」


「駒の一つに、過ぎない」


「あの男自身が、言っていた」


──────────────────────────────────────


「駒を、動かしている、誰かが」


「いる」


 ドガンは、地図を、見つめたまま、続けた。


「その誰かが」


「今、初めて」


「複数の、駒を」


「同時に、動かし始めた」


「そういうこと、なのかもしれん」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、頷いた。


「南方の、発見」


「弾劾請求」


「セドリックの、動き」


「ハイム子爵の、変化」


「一つ一つは」


「別々の、出来事に、見えても」


「もしかしたら」


「すべて」


「繋がっているのかもしれません」


──────────────────────────────────────


 バルドが、深く、息を、吐いた。


「静かだった均衡が」


「これから」


「大きく、動く」


「そんな、予感が、します」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、頷いた。


「準備は、しておくべきだ」


「どちらへ、傾いても」


「対応できるように」


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 ヒコは、《可視化》で、領地全体と、その外側にある、流れを、じっくりと、見渡した。


 南方の、静かな流れ。


 王都の、太い流れ。


 その両方が。


 どこか、遠い一点へ、向かって。


 収束しているように、見えた。


 その一点が、どこなのか。


 まだ、誰にも、分からない。


 だが。


 確かに、そこに。


 何かが、あった。


──────────────────────────────────────


 均衡とは。


 何も、動いていないことではない。


 互いに、押し合う力が、釣り合っている、状態のことだ。


 その均衡が。


 今。


 静かに、揺らぎ始めていた。


 ヒコは、その気配を。


 胸の奥に、刻み込んだ。


 第322話 若樹月・揺れる均衡 了

【領地収支・若樹月一日時点】


・所持金:金貨4070枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・若樹月一日時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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