第316話 芽吹月・一年の輪郭
一年前と、今と。
並べてみて、初めて、分かることがある。
――それは。
進んだ距離ではなく。
変わらなかった何かの、方かもしれない。
芽吹月、一日。
評議会の間に、いつもの顔ぶれが、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、広げる。
「今月の、給与支払いです」
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会議が、一段落した頃。
ヒコは、ふと、去年の、同じ時期を、思い出していた。
「そういえば」
ヒコが、口を開いた。
「去年の、この時期」
「情報流出が、まだ、発覚していなかった頃ですね」
ミルヴァが、頷いた。
「ああ」
「帳簿の、一か所の、ズレ」
「知らない顔」
「工具が、一本、消えた」
「そんな、小さな違和感が」
「まだ、点でしか、なかった時期だ」
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バルドが、資料を、めくりながら、言った。
「あの頃は」
「一つ一つが、独立した、出来事に見えていました」
「それが、一つの、流れだと気づくまでに」
「随分、時間が、かかりました」
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ドガンが、腕を、組んだ。
「今年は」
「同じことが、起きていないか」
「注意しておいた方がいい」
その言葉に、評議会の空気が、少し、引き締まった。
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ヒコは、しばらく、考えていた。
「今のところ」
「大きな違和感は」
「感じませんが」
「ですが」
ヒコは、一拍、置いた。
「去年も、最初は」
「そうだったのでしょうね」
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ゴルフが、小さく、口を挟んだ。
「あの、実は」
「一つだけ」
「気になることが」
全員の視線が、ゴルフへ、集まる。
「先月の、備蓄倉庫の、棚卸しで」
「数字が、一つだけ」
「合わなかったんです」
「額は、小さいので」
「誤差の範囲、だとは思うのですが」
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評議会が、一瞬、静かになった。
ミルヴァが、ゴルフを見た。
「どのくらい、違った」
「金貨に換算して」
「二枚分、ほどです」
「本当に、些細な額です」
ミルヴァは、しばらく、黙っていた。
やがて、静かに、言った。
「記録しておいてくれ」
「それだけで、いい」
「今は、まだ」
「一つの、点だ」
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ヒコは、その、やり取りを、静かに、見ていた。
去年も、こうして、始まったのかもしれない。
小さな、些細な、違和感から。
だが、それが、去年と同じ流れなのか。
それとも、ただの、偶然なのか。
今の時点では、まだ、誰にも、分からなかった。
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会議の後。
ヒコは、《可視化》で、備蓄倉庫の方向を、確認した。
目立った、乱れは、見えない。
だが、去年の今頃も、同じように、何も、見えていなかった。
一年前と、今と。
並べてみて、初めて、分かることがある。
それは、進んだ距離ではなく。
同じ場所に、再び、立たされているかもしれない、という予感だった。
ヒコは、その予感を、静かに、胸の奥へ、しまった。
第316話 芽吹月・一年の輪郭 了
【次回予告】閉ざされた扉。
開けるという選択には、いつも、代償が、付きまとう。
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【領地収支・芽吹月一日時点】
・所持金:金貨3837枚(+125)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 108枚
・ギルド収益 金貨 60枚
合計 金貨 222枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・芽吹月一日時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:90%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




