↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
460/474

 第317話 閉ざされた扉

 開けるという選択には。


 いつも、代償が、付きまとう。


 ――それでも。


 開けなければ、始まらないことがある。

 深部。


 通路の最奥。


 調査隊の前に、それは、現れた。


 壁と一体化した、巨大な、扉状の構造物。


 表面には、これまで見てきたものより、遥かに精緻な、模様が刻まれている。


──────────────────────────────────────


 ゼドが、松明を、扉に近づけた。


「これは」


「今までとは、違う」


「作りの、精度が」


 タウルスが、扉の縁を、指でなぞる。


「継ぎ目が、ない」


「一枚岩から、削り出したような」


「こんな加工、現代の技術では」


「難しいだろう」


──────────────────────────────────────


 コリンが、扉全体を、見上げた。


「開くように、できているんでしょうか」


「分からない」


 ゼドは、慎重に、扉の表面を、確認していく。


「取っ手も、鍵穴も、見当たらない」


「だが」


 ゼドは、扉の中央に刻まれた、模様を指差した。


「この模様は」


「起動用の、術式に、見える」


──────────────────────────────────────


 カインが、周囲を、警戒しながら、言った。


「開けるんですか」


 その問いに、隊の空気が、僅かに、張り詰めた。


 誰も、すぐには、答えなかった。


──────────────────────────────────────


「危険は、あると思う」


 ゼドが、正直に、言った。


「だが、今回の調査目的は」


「この先に、何があるのかを」


「確かめることだ」


 タウルスが、腕を組んだ。


「早馬で、一度、報告するか」


「開ける前に」


──────────────────────────────────────


 ゼドは、しばらく、考えた。


「往復で、五日は、かかる」


「その間、ここに留まることになる」


「野営を、続けながら」


 コリンが、口を挟んだ。


「食料は、足りますか」


「ぎりぎりだ」


 ゼドが、答えた。


──────────────────────────────────────


 サヤが、静かに、扉を見つめていた。


 《可視化》を、細く、使う。


 扉の向こうから、微かな、色の揺らぎが、伝わってくる。


 規則正しい、脈のような、揺らぎだった。


「サヤさん」


 コリンが、気づいて、声をかけた。


「何か、見えますか」


「はい」


 サヤは、慎重に、言葉を選んだ。


「向こう側で」


「何かが」


「静かに、動いています」


「止まっては、いません」


──────────────────────────────────────


 ゼドが、サヤを、見た。


「危険な、動きか」


「分かりません」


 サヤは、正直に、答えた。


「敵意のようなものは」


「感じません」


「ただ」


 サヤは、一拍、置いた。


「規則正しすぎて」


「逆に、不気味です」


──────────────────────────────────────


 タウルスが、深く、息を吐いた。


「決めるなら、今のうちだ」


「戻るか」


「進むか」


 ゼドは、扉を見つめたまま、しばらく、動かなかった。


 やがて、静かに、口を開いた。


「ヒコ様は」


「何か、おかしいと思ったら」


「引き返せと、言っていた」


「今のところ」


「明確な、危険の兆候は、ない」


──────────────────────────────────────


「だが」


 ゼドは、一拍、置いた。


「念のため」


「一度、早馬で、報告する」


「開けるかどうかの判断は」


「その返事を、待ってから、決めよう」


 タウルスが、頷いた。


「賢明だな」


──────────────────────────────────────


 カインが、報告書を、手早く、まとめ始めた。


「俺が、走ります」


「頼んだ」


 ゼドが、応じた。


──────────────────────────────────────


 その夜。


 サヤは、焚き火の傍で、扉の方角を、見つめていた。


 規則正しい、揺らぎの気配は、まだ、続いている。


 途切れることもなく。


 変化することもなく。


 まるで、何かが、静かに、待っているようだった。


 開けるという選択には、いつも、代償が、付きまとう。


 それでも。


 開けなければ、見えないものがある。


 サヤは、そう思いながら、扉の向こうにあるものへ、そっと、意識を向け続けた。


 第317話 閉ざされた扉 了

【次回予告】花灯月の収支。

 穏やかな日々にも、確かに、時間は、流れている。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第317話時点】


・所持金:金貨3837枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第317話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。