第315話 凍氷月の収支
積み上げてきたものは。
派手な音を立てずに、形を成していく。
――だからこそ。
気づいた時には、驚くほど、遠くまで来ている。
評議会の間。
凍氷月、最後の日。
ゴルフが、帳簿を、テーブルに広げた。
「今月の、収支報告です」
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「収入は、引き続き、安定しています」
ゴルフが、順に、読み上げていく。
「外部取引は、引き続き、堅調です」
「ギルド収益も、僅かに、増加しています」
バルドが、資料に、目を通す。
「支出は」
「例年通りです」
ゴルフが、答えた。
「今月の増減は、+125枚」
「所持金、金貨3837枚となります」
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ドガンが、腕を組んだまま、頷いた。
「順調、と言っていいだろう」
「南方の準備で、金は動いた」
「その結果が」
「今は、その金が、また、金を、生んでいる」
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ガッツが、報告書を、机に置いた。
「住居拡張、第二段階について」
「家族向け住宅区、着々と、進んでいます」
「予定より、僅かに、早いくらいです」
バルドが、頷く。
「順調で、何よりです」
ガッツは、少し、誇らしげに、言った。
「職人達も、慣れてきた」
「もう、言われなくても、身体が、動く」
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「入居希望者は」
ヒコが、尋ねた。
「増えていますね」
ガッツが、答える。
「若い世帯を、中心に」
「家族向けの区画が、できると聞いて」
「移住を検討する者も、出てきています」
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バルドが、資料をめくった。
「これは、良い流れです」
「住居が整えば、人が増える」
「人が増えれば、また、活気が生まれる」
「領地が、育っていきます」
ヒコも、頷いた。
「積み上げてきたものが」
「少しずつ、目に見える形に、なってきていますね」
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ミルヴァが、一つ、付け加える。
「セドリックの追跡は」
「進展、あり」
全員の視線が、集まった。
「まだ、確定的な、居場所は」
「掴めていない」
「だが」
ミルヴァは、少し、間を置いた。
「王都西門付近で」
「似た特徴を持つ男を、見たという証言が」
「一件、入った」
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「王都か」
ドガンが、呟いた。
「面白い場所に、逃げたものだな」
「あるいは」
ミルヴァは、静かに、続けた。
「逃げているのではなく」
「呼び戻された、のかもしれない」
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その言葉に、評議会が、静かになった。
バルドが、小さく、息を吐く。
「引き続き、慎重に」
「ああ」
ミルヴァが、頷いた。
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会議の後。
ヒコは、《可視化》で、住居区画の様子を、確認した。
新しく組まれた木材の骨組みが、規則正しく、並んでいる。
人の流れも、活発に、動いていた。
積み上げてきたものは、派手な音を立てずに、形を成していく。
この景色も。
少しずつ、積み上げてきた、結果だった。
ヒコは、小さく、頷いた。
この領地は、確かに、前へ進んでいる。
第315話 凍氷月の収支 了
【次回予告】芽吹月・一年の輪郭。
一年前と、今と。並べてみて、初めて、分かることがある。
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【領地収支・凍氷月末時点】
・所持金:金貨3712枚(変動なし)
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【発展進捗・凍氷月末時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:90%(+1%・第二段階着実に進捗)
・インフラ:105%(変動なし)




