↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
455/476

 第312話 凍氷月の兆し

 同じ手を、何度も使えば。


 いつか、その手は、見透かされる。


 ――それでも。


 使い続ける者がいる。


 他に、手がないからだ。

 凍氷月、一日。


 評議会の間に、報告が届いていた。


 バルドが、書状を、読み上げる。


「ヴァルク男爵領から、また、噂が」


「蒼鋼の品質について、です」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、鼻を鳴らした。


「また、それか」


「もう、何度目だ」


 バルドが、苦笑する。


「四度目、です」


「毎度のことです」


──────────────────────────────────────


「今回の噂は」


 ドガンが、資料に、目を通しながら続ける。


「以前ほど、広がっていない」


「なぜだと、思う」


 ヒコが、少し、考える。


「もう、皆が」


「その手口を、知っているから、でしょうか」


「その通りだ」


 ドガンが、頷いた。


「同じ手を、何度も使えば」


「効果は、薄れる」


「噂を流しても」


「『またか』で、終わる」


──────────────────────────────────────


 ミルヴァも、口を挟む。


「商人達の反応も、変わってきている」


「以前は、不安がる者が、多かった」


「今は」


 ミルヴァは、小さく、笑った。


「『蒼鋼の質が悪いなら、なぜヴァルク側が、うちの品を欲しがるんだ』」


「そう、言い返す者も、出てきた」


──────────────────────────────────────


 バルドが、資料をめくる。


「技術者の引き抜きの動きも」


「以前ほどの、勢いは、ありません」


「ドガンさんが、はっきりと、拒否したことが」


「他の技術者たちにも、伝わっているようです」


 ドガンが、腕を組んだまま、言う。


「一度、断る人間を見せれば」


「後は、断りやすくなる」


「単純な話だ」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、考え込んだ。


「ヴァルク男爵の圧力が」


「以前ほど、効かなくなっている」


「それは、良いことだと思います」


「ですが」


 ヒコは、一拍、置いた。


「このまま」


「同じ手を、使い続けるでしょうか」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、僅かに、目を細めた。


「良い、着眼点だ」


「効かない手を、続ける理由は」


「二つしかない」


「一つは、他に手がないから」


「もう一つは」


 ドガンは、一拍、置いた。


「これが、本命ではないから、だ」


──────────────────────────────────────


 その言葉に、誰も、すぐには口を開かなかった。


 バルドが、小さく、呟く。


「本命が、別にある、ということですか」


「分からん」


 ドガンは、正直に、答えた。


「だが、警戒は、しておいた方がいい」


「表の手が、鈍る時は」


「裏で、何かが、動いている時だ」


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 ヒコは、《可視化》で、領地の外側を、確認した。


 ヴァルク領の方角に伸びる流れは、以前より細くなっていた。


 消えたのではない。


 力の向きを、変えただけのようにも見えた。


 その先が、どこなのか。


 ヒコには、まだ、見えなかった。


──────────────────────────────────────


 同じ手を、何度も使えば、いつか見透かされる。


 それでも、使い続ける者がいるとしたら。


 本命は、まだ、姿を見せていない。


 ヒコは、そう思いながら、静かに、《可視化》を、閉じた。



 第312話 凍氷月の兆し 了

【次回予告】深部への接近。

 進むほどに、戻れる距離が、遠くなる。


──────────────────────────────────────


【領地収支・凍氷月一日時点】


・所持金:金貨3712枚(+123)


 収入内訳

 ・冒険者固定給  金貨   42枚

 ・勲爵士給与   金貨   12枚

 ・外部取引    金貨  108枚

 ・ギルド収益   金貨   58枚

  合計      金貨  220枚


 支出内訳

 ・幹部級給与   金貨   24枚

 ・準幹部級給与  金貨    9枚

 ・一般職給与   金貨   40枚

 ・部門運営費   金貨   24枚

  合計      金貨   97枚


──────────────────────────────────────


【発展進捗・凍氷月一日時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:89%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。