第312話 凍氷月の兆し
同じ手を、何度も使えば。
いつか、その手は、見透かされる。
――それでも。
使い続ける者がいる。
他に、手がないからだ。
凍氷月、一日。
評議会の間に、報告が届いていた。
バルドが、書状を、読み上げる。
「ヴァルク男爵領から、また、噂が」
「蒼鋼の品質について、です」
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ドガンが、鼻を鳴らした。
「また、それか」
「もう、何度目だ」
バルドが、苦笑する。
「四度目、です」
「毎度のことです」
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「今回の噂は」
ドガンが、資料に、目を通しながら続ける。
「以前ほど、広がっていない」
「なぜだと、思う」
ヒコが、少し、考える。
「もう、皆が」
「その手口を、知っているから、でしょうか」
「その通りだ」
ドガンが、頷いた。
「同じ手を、何度も使えば」
「効果は、薄れる」
「噂を流しても」
「『またか』で、終わる」
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ミルヴァも、口を挟む。
「商人達の反応も、変わってきている」
「以前は、不安がる者が、多かった」
「今は」
ミルヴァは、小さく、笑った。
「『蒼鋼の質が悪いなら、なぜヴァルク側が、うちの品を欲しがるんだ』」
「そう、言い返す者も、出てきた」
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バルドが、資料をめくる。
「技術者の引き抜きの動きも」
「以前ほどの、勢いは、ありません」
「ドガンさんが、はっきりと、拒否したことが」
「他の技術者たちにも、伝わっているようです」
ドガンが、腕を組んだまま、言う。
「一度、断る人間を見せれば」
「後は、断りやすくなる」
「単純な話だ」
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ヒコは、しばらく、考え込んだ。
「ヴァルク男爵の圧力が」
「以前ほど、効かなくなっている」
「それは、良いことだと思います」
「ですが」
ヒコは、一拍、置いた。
「このまま」
「同じ手を、使い続けるでしょうか」
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ドガンが、僅かに、目を細めた。
「良い、着眼点だ」
「効かない手を、続ける理由は」
「二つしかない」
「一つは、他に手がないから」
「もう一つは」
ドガンは、一拍、置いた。
「これが、本命ではないから、だ」
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その言葉に、誰も、すぐには口を開かなかった。
バルドが、小さく、呟く。
「本命が、別にある、ということですか」
「分からん」
ドガンは、正直に、答えた。
「だが、警戒は、しておいた方がいい」
「表の手が、鈍る時は」
「裏で、何かが、動いている時だ」
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会議の後。
ヒコは、《可視化》で、領地の外側を、確認した。
ヴァルク領の方角に伸びる流れは、以前より細くなっていた。
消えたのではない。
力の向きを、変えただけのようにも見えた。
その先が、どこなのか。
ヒコには、まだ、見えなかった。
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同じ手を、何度も使えば、いつか見透かされる。
それでも、使い続ける者がいるとしたら。
本命は、まだ、姿を見せていない。
ヒコは、そう思いながら、静かに、《可視化》を、閉じた。
第312話 凍氷月の兆し 了
【次回予告】深部への接近。
進むほどに、戻れる距離が、遠くなる。
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【領地収支・凍氷月一日時点】
・所持金:金貨3712枚(+123)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 108枚
・ギルド収益 金貨 58枚
合計 金貨 220枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・凍氷月一日時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:89%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




