第311話 白雪月の収支
数字は、嘘をつかない。
だが、全てを語りもしない。
――だからこそ。
数字の後ろにあるものを、見なければならない。
評議会の間。
白雪月、最後の日。
ゴルフが、帳簿を、テーブルに広げた。
「今月の、収支報告です」
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「収入は、概ね、安定しています」
「先月から、大きな変動は、ありません」
ゴルフが、順に、読み上げていく。
「冒険者固定給、勲爵士給与、共に変動なし」
「外部取引は、やや、増加傾向」
「南方への準備物資の発注が、周辺の商会にも、波及しているようです」
ドガンが、腕を組んだまま、頷く。
「準備が、仕事を生む」
「領地としては、健全だ」
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「支出は、ほぼ、例年通りです」
ゴルフが続ける。
「調査隊の装備費は、既に、先月中に処理済みのため」
「今月の追加支出は、ありません」
バルドが、資料に、目を通す。
「今月の増減は」
「123枚増」
ゴルフが、即答した。
「所持金は、金貨3712枚となります」
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評議会の空気は、穏やかだった。
だが、ミルヴァが、静かに、口を開く。
「一つ、報告がある」
全員の視線が、ミルヴァへ集まった。
「セドリックの背後にいる、仲介組織」
「その輪郭が、もう少し、見えてきた」
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「まだ、確定ではない」
ミルヴァは、慎重に、言葉を選びながら、続けた。
「だが、金の流れを、追っていくと」
「一つの、共通点に、辿り着いた」
「マユミの父親の件と」
「動き方が、よく似ている」
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マユミの表情が、僅かに、強張った。
だが、すぐに、平静を取り戻す。
「同じ、組織?」
「断定はできない」
ミルヴァは、首を、横に振った。
「ただ、手口が似ている、というだけだ」
「人を、弱みで縛り」
「使い捨てる」
「そういう、やり方をする組織は」
「一つとは、限らない」
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ヒコは、しばらく、考え込んだ。
「もし、同じ組織だとしたら」
「マユミさんのお父さんの件とも」
「繋がってくる、ということですね」
「その可能性は、ある」
ミルヴァが、頷いた。
「だが、今は、まだ」
「線を引くには、早い」
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バルドが、話を、まとめる。
「引き続き、慎重に、調べていただければと」
「はい」
ミルヴァが、答えた。
「焦って、繋げようとすると」
「見誤る」
「一つずつ、確かめる」
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会議の後。
マユミが、一人、窓の外を、見ていた。
ヒコが、隣に立つ。
「大丈夫ですか」
「うん」
マユミは、小さく、頷いた。
「昔のことだから、もう、平気」
「でも」
マユミは、少し、間を置いた。
「もし、本当に同じ組織なら」
「セドリックも」
「父と同じように」
「逃げられなかったのかもしれない」
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ヒコは、その言葉に、静かに、頷いた。
「だとしたら」
「セドリックさんも」
「被害者、なのかもしれません」
「うん」
マユミは、遠くを見つめたまま、呟いた。
「早く、見つけてあげたい」
「悪い人として、じゃなくて」
「助けが、必要な人として」
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ヒコは、《可視化》で、領地全体を、見渡した。
多くの色は、穏やかに、流れている。
だが、その流れの奥に、まだ、見えない、繋がりがある。
数字は、嘘をつかない。
だが、数字の向こうにある、人の事情までは、語らない。
その先を見るのは、《可視化》ではなく。
いつも、人の役目だった。
第311話 白雪月の収支 了
【次回予告】凍氷月の兆し。
止まっているように見えても、水面の下では、何かが、動いている。
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【領地収支・白雪月末時点】
・所持金:金貨3589枚(変動なし)
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【発展進捗・白雪月末時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:89%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




