第304話 長影月の輪郭
影が最も長くなる季節に、自分の輪郭が、最も鮮明に見える。
光が、低い角度から、差し込むからこそ。
――普段は、見えない、細部まで、浮かび上がる。
長影月、上旬。
夜、ヒコは、一人、施設の前で、《可視化》を、発動した。
この一年、幾度となく、繰り返してきた、日課だった。
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まず、ヴァルクの、流れを、見た。
以前より、細くなっている。
四方向からの、圧力も、監査要求も、この一年を、かけて、少しずつ、押し返してきた。
その、成果が、確かに、この、細さに、現れていた。
――ただし、消えては、いない。
まだ、そこに、確かに、あった。
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次に、ハイムの、流れを、見た。
色が、変わっていた。
以前より、わずかに、温かみが、ある。
助言と、等価交換。その、一つ一つの、積み重ねが、その、色に、表れているようだった。
――ただし、その、輪郭は、まだ、読めない。
敵でも、味方でもない、その、曖昧さは、この一年を、通しても、変わっていなかった。
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最後に、ロウの、流れを、見た。
変わらず、深く、沈んでいる。
その、深さは、一年前と、ほとんど、変わっていなかった。
――ただし。
以前より、近い、気が、した。
距離が、縮まっている。
その、感覚が、確かに、あった。
姿を、見せぬまま、その、存在だけが、少しずつ、この領地へ、近づいていた。
その、予感を、ヒコは、静かに、受け止めた。
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翌日、評議会で、サヤが、情報の共有を、行った。
「《可視化》の、ノイズについて、共有します」
サヤが、続けた。
「最近は、ノイズの、発生頻度が、落ち着いています」
その、報告に、評議会の、何人かが、安堵の、表情を、見せた。
「ただし」
サヤが、続けた。
「消えては、いません」
その、一言に、安堵は、すぐに、引き締まった、緊張へと、変わった。
「安定はしているが、原因は、まだ、解決していない、ということですね」
ヒコが、確認した。
「はい」
サヤが、頷いた。
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その、報告の後、ミルヴァが、静かに、手を、挙げた。
「一つ、報告が、ある」
全員の、視線が、ミルヴァに、集まった。
「情報流出の、出元」
ミルヴァの、声は、いつもより、低かった。
「特定した」
その、言葉に、評議会が、一斉に、緊張した。
「誰、ですか」
ドガンが、聞いた。
ミルヴァは、少し、間を、置いてから、答えた。
「詳細は、もう少し、確認してから、報告する」
「今、この場で、断定するには、まだ、早い」
ヒコは、その、様子から、何かを、察した。
「分かりました」
ヒコが、頷いた。
「準備が、整ったら、報告してください」
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会議の終わり、ヒコは、静かに、評議会全体を、見渡した。
「南方の、答えは、まだ、遠い」
ヒコが、続けた。
「来年、南方廃址に、もう一度、行く、必要が、あります」
「今度は」
ヒコが、少し、間を、置いた。
「今度は、もっと、深いところまで、踏み込みます」
その、言葉に、評議会が、静かに、頷いた。
この、一年で、多くのことを、学んだ。
だが、まだ、答えに、届いていない、問いが、いくつも、残っていた。
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夜、ヒコは、もう一度、《可視化》を、発動した。
ヴァルク、ハイム、ロウ。
三本の、流れ。
それぞれが、この一年で、確かに、その、形を、変えていた。
そして、もう一つ。
三本の、流れの、足元には。
情報流出という、もう一つの、影が、残っていた。
その、輪郭も、もうすぐ、明らかになる。
長い、影の、季節。
その、長い、影の中で、この一年の、答えが、一つずつ、姿を、現そうとしていた。
第304話 長影月の輪郭 了
【次回予告】今回の出来事の締めくくりの一日が来た。
奪われなかったものの重さは、奪われかけた後でしか、分からない。
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【領地収支・長影月上旬時点】
・所持金:金貨3464枚(変動なし)
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【発展進捗・第304話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:89%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




