↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
447/472

 第304話 長影月の輪郭

 影が最も長くなる季節に、自分の輪郭が、最も鮮明に見える。


 光が、低い角度から、差し込むからこそ。


 ――普段は、見えない、細部まで、浮かび上がる。

 長影月、上旬。


 夜、ヒコは、一人、施設の前で、《可視化》を、発動した。


 この一年、幾度となく、繰り返してきた、日課だった。


──────────────────────────────────────


 まず、ヴァルクの、流れを、見た。


 以前より、細くなっている。


 四方向からの、圧力も、監査要求も、この一年を、かけて、少しずつ、押し返してきた。


 その、成果が、確かに、この、細さに、現れていた。


 ――ただし、消えては、いない。


 まだ、そこに、確かに、あった。


──────────────────────────────────────


 次に、ハイムの、流れを、見た。


 色が、変わっていた。


 以前より、わずかに、温かみが、ある。


 助言と、等価交換。その、一つ一つの、積み重ねが、その、色に、表れているようだった。


 ――ただし、その、輪郭は、まだ、読めない。


 敵でも、味方でもない、その、曖昧さは、この一年を、通しても、変わっていなかった。


──────────────────────────────────────


 最後に、ロウの、流れを、見た。


 変わらず、深く、沈んでいる。


 その、深さは、一年前と、ほとんど、変わっていなかった。


 ――ただし。


 以前より、近い、気が、した。


 距離が、縮まっている。


 その、感覚が、確かに、あった。


 姿を、見せぬまま、その、存在だけが、少しずつ、この領地へ、近づいていた。


 その、予感を、ヒコは、静かに、受け止めた。


──────────────────────────────────────


 翌日、評議会で、サヤが、情報の共有を、行った。


「《可視化》の、ノイズについて、共有します」


 サヤが、続けた。


「最近は、ノイズの、発生頻度が、落ち着いています」


 その、報告に、評議会の、何人かが、安堵の、表情を、見せた。


「ただし」


 サヤが、続けた。


「消えては、いません」


 その、一言に、安堵は、すぐに、引き締まった、緊張へと、変わった。


「安定はしているが、原因は、まだ、解決していない、ということですね」


 ヒコが、確認した。


「はい」


 サヤが、頷いた。


──────────────────────────────────────


 その、報告の後、ミルヴァが、静かに、手を、挙げた。


「一つ、報告が、ある」


 全員の、視線が、ミルヴァに、集まった。


「情報流出の、出元」


 ミルヴァの、声は、いつもより、低かった。


「特定した」


 その、言葉に、評議会が、一斉に、緊張した。


「誰、ですか」


 ドガンが、聞いた。


 ミルヴァは、少し、間を、置いてから、答えた。


「詳細は、もう少し、確認してから、報告する」


「今、この場で、断定するには、まだ、早い」


 ヒコは、その、様子から、何かを、察した。


「分かりました」


 ヒコが、頷いた。


「準備が、整ったら、報告してください」


──────────────────────────────────────


 会議の終わり、ヒコは、静かに、評議会全体を、見渡した。


「南方の、答えは、まだ、遠い」


 ヒコが、続けた。


「来年、南方廃址に、もう一度、行く、必要が、あります」


「今度は」


 ヒコが、少し、間を、置いた。


「今度は、もっと、深いところまで、踏み込みます」


 その、言葉に、評議会が、静かに、頷いた。


 この、一年で、多くのことを、学んだ。


 だが、まだ、答えに、届いていない、問いが、いくつも、残っていた。


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは、もう一度、《可視化》を、発動した。


 ヴァルク、ハイム、ロウ。


 三本の、流れ。


 それぞれが、この一年で、確かに、その、形を、変えていた。


 そして、もう一つ。


 三本の、流れの、足元には。


 情報流出という、もう一つの、影が、残っていた。


 その、輪郭も、もうすぐ、明らかになる。


 長い、影の、季節。


 その、長い、影の中で、この一年の、答えが、一つずつ、姿を、現そうとしていた。



第304話 長影月の輪郭 了

【次回予告】今回の出来事の締めくくりの一日が来た。

 奪われなかったものの重さは、奪われかけた後でしか、分からない。


──────────────────────────────────────


【領地収支・長影月上旬時点】


・所持金:金貨3464枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第304話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:89%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。