第303話 紅葉月の収支
落ち着いた瞬間こそ、何かが、動き始めている。
静けさは、終わりの、印ではない。
――むしろ、次の、始まりの、前触れであることが、多い。
紅葉月、末日。
評議会の間に、月末の収支報告のため、いつもの顔ぶれが、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、卓に、広げた。
「今月の、収支を、まとめました」
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バルドが、まず、産業省への、対応を、報告した。
「ハイム子爵の、助言を、使い、地下遺構の、監査除外を、正式に、主張しました」
「産業省の、回答は」
ヒコが、聞いた。
「保留扱いです」
バルドが、答えた。
「即座に、却下は、されませんでした。ただし、承認も、されていません」
ドガンが、腕を、組んだ。
「時間を、稼げた、ということだ」
「悪くない、結果だ」
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ゴルフが、続けて、報告した。
「外部収入は、持ち直しの、傾向です」
「失った、取引先の、穴は、新規の、取引で、徐々に、埋まりつつあります」
ドガンが、頷いた。
「地道な、積み重ねが、実ってきている」
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ヒコが、静かに、聞いた。
「情報流出の、出元は」
ミルヴァが、答えた。
「まだ、特定できていない」
「ただし」
ミルヴァが、続けた。
「候補は、かなり、絞れてきた」
「もう少しで、届く」
その、言葉に、評議会の、何人かが、わずかに、身を、乗り出した。
「時間は、かかりますか」
ヒコが、聞いた。
「そう長くは、かからないと、思う」
ミルヴァが、答えた。
「必ず、突き止める」
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ガッツが、住居拡張の、進捗を、報告した。
「住居拡張、第二段階。家族向け、住宅区。着工中だ」
「進み具合は」
「予定通りだ。大きな、遅れは、ない」
アーヴィンが、頷いた。
「一つ一つ、着実に、進んでいる」
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報告が、一通り、終わったところで、ドガンが、少し、感慨深そうに、言った。
「今年は、守りきった一年だった」
「四方向の、圧力。監査要求。情報流出。どれも、大きな、傷には、ならなかった」
「本当によく、耐えた」
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その、言葉に、評議会の、何人かが、頷いた。
だが、ヒコは、少し、間を、置いてから、静かに、言った。
「守りきった。それは、事実です」
「ですが」
ヒコが、続けた。
「それだけで、終わるわけには、いきません」
評議会の、視線が、ヒコに、集まった。
「情報流出の、出元は、まだ、見つかっていません」
「南方の、答えも、まだ、遠い」
「ヴァルク男爵の、次の手も、分かりません」
ヒコが、続けた。
「守りきったことに、安心して、立ち止まれば」
「次に、来るものに、対応できません」
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ドガンが、少し、笑った。
「その、通りだ」
「まだ、終わってない、ということだな」
評議会の、空気が、引き締まった。
安堵と、緊張。
その、両方が、同居する、収支報告と、なった。
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会議のあと、ヒコは、《可視化》で、この領地の、全体を、確認した。
多くの、色が、この一年で、確かに、濃くなっていた。
ただし、その、色の外側に、まだ、いくつもの、影が、残っていた。
紅葉月の、赤い葉が、やがて、落ちるように。
この、静けさも、やがて、次の、何かへと、移っていく。
その、予感だけが、秋の風と、ともに、静かに、残っていた。
第303話 紅葉月の収支 了
【次回予告】長影月が来た。
影が最も長くなる季節に、自分の輪郭が、最も鮮明に見える。
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【領地収支・紅葉月末時点】
・所持金:金貨3464枚(+122)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 105枚
・ギルド収益 金貨 60枚
合計 金貨 219枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・第303話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:89%(変動なし・第二段階工事中)
・インフラ:105%(変動なし)




