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 第299話 正式な回答

 正式な言葉は、内容より、誰が、どこから、言うかで、重さが変わる。


 同じ、言葉でも、発する者によって、意味が、違って聞こえる。


 ――だからこそ、言葉は、慎重に、選ばなければ、ならない。

 収穫月、一日。


 産業省への監査要求に対する、回答書が完成した。


 バルドが、その、文面を、読み上げた。


「『監査を、受け入れる』」


「『ただし、監査の、範囲と、方法については、協議の上で、決定する』」


 その、一文に、評議会の、何人かが、頷いた。


──────────────────────────────────────


 ドガンが、資料を、見ながら、満足そうに、言った。


「今度は、こちらが、土俵を、決める番だ」


「受け入れつつ、範囲を、こちらで、限定する。悪くない、返し方だ」


 ヒコが、頷いた。


「安全管理上、必要な、制限がある、という、理由を、明記しました」


「白金霊鉱に、関わる、区域は、対象外と、しています」


「その、理屈が、通れば、いいがな」


 ドガンが、少し、慎重に、言った。


──────────────────────────────────────


 バルドが、もう一つ、書状を、取り出した。


「ハイム子爵から、書状が、届いています」


「内容は」


 ヒコが、聞いた。


「短いものです」


 バルドが、読み上げた。


「『その方針で、よろしいでしょう。余計なことは、なさらぬよう』」


 その、一文に、評議会の、空気が、少し、揺れた。


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、その、一文を、見つめていた。


「……あの人は」


 ヒコが、静かに、つぶやいた。


「なぜ、こちらを、助けるのですか」


 誰も、その、問いに、すぐには、答えなかった。


 ハイム子爵の、意図は、依然として、読み切れないままだった。


 味方でもなく、敵でもない、その、立ち位置は、この、書状一つでも、変わらなかった。


──────────────────────────────────────


 その、話が、一区切りついたところで、ドガンが、少し、話題を、変えた。


「もう一つ、報告が、ある」


「なんですか」


「ヴァルク領が、評議会制度を採用した」


 その、言葉に、ヒコが、少し、驚いた。


「……早いですね」


「そうだ」


 ドガンが、頷いた。


「資料が、なければ、一年は、かかる。あれば、三か月で、済む」


 ヒコの、表情が、強張った。


「あの、流出した、資料が」


「使われた、可能性が、高い」


 ドガンが、はっきりと、言った。


「弟子制度の、マニュアルだけじゃない。運用の、詳細まで、知られていれば」


「制度の、骨組みを、作るのは、そう、難しくない」


──────────────────────────────────────


 評議会の、間に、重い、沈黙が、流れた。


 流出の、影響が、思っていたより、早く、そして、具体的な形で、現れていた。


「対抗、できますか」


 ガッツが、聞いた。


「形は、真似できても」


 ヒコが、答えた。


「中身までは、真似できません」


「これまでと、同じです。結果で、差を、見せます」


 ドガンが、頷いた。


「それしか、ない」


──────────────────────────────────────


 会議のあと、ヒコは、《可視化》で、ヴァルク領の方角を、確認した。


 新しい色は、もう、模倣の色では、なかった。


 一つの領地として、根を張り始めた色だった。


 その、色を、見ながら、ヒコは、静かに、考えた。


 ――追いつかれる前に、もっと、先へ、進まなければ、ならない。



第299話 正式な回答 了

【次回予告】収穫月が来た。

 実りとは、積み上げてきたものが、形になる瞬間だ。


──────────────────────────────────────


【領地収支・収穫月一日時点】


・所持金:金貨3225枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第299話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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