第298話 雷鳴月の収支
数字は、感情を持たない。
だから、数字を見ることが、一番、落ち着く。
――今、この領地に、必要なのは、その、落ち着きだった。
雷鳴月、末日。
評議会の間に、月末の収支報告のため、いつもの顔ぶれが、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、卓に、広げた。
「今月の、収支を、まとめました」
その、口調は、いつもより、静かだった。
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バルドが、まず、口を、開いた。
「今月、二十日は、ガデル様の、誕生日でした」
「忙しい、時期に、なってしまい、あまり、祝う、余裕が、ありませんでしたが」
ガデルが、鼻を、鳴らした。
「それで、いい」
「来年、まとめて祝えばいい」
「祝うより、今は、腰を、据えて、対処する方が、大事だ」
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ゴルフが、資料を、指し示した。
「失った取引先の、分、収入は、確かに、減っています」
「ただし」
ゴルフが、続けた。
「減少分は、新規取引先で、およそ七割まで、回復しています」
「新規の、取引先が、いくつか、増えました」
ドガンが、頷いた。
「噂に、惑わされない、目利きが、いる、ということだ」
「本物を、見る者は、ちゃんと、見ている」
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ガッツが、住居拡張の、報告を、行った。
「住居拡張、第二段階。家族向け、住宅区の、設計が、完了した」
「来月から、着工できる」
アーヴィンが、頷いた。
「良い、知らせだ」
「こういう、時こそ、前に、進んでいることを、実感できる、報告が、ありがたい」
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報告が、一通り、終わったところで、ヒコが、静かに、言った。
「先日の、流出の件」
その、一言に、評議会が、少し、緊張した。
「まだ、出先は、特定できていません」
「ただし」
ヒコが、続けた。
「数字を、見てください」
「収入は、落ちました」
「ですが、止まってはいません」
「領地も、同じです」
「取引先は、新しく、増えています。住居は、次の、段階へ、進んでいます」
ヒコが、続けた。
「前に、進みます」
「立ち止まれば、そこが、終わりです」
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その、言葉に、評議会の、空気が、少し、和らいだ。
ドガンが、頷いた。
「その通りだ」
「一度、損をした商人が、店を閉めるなら、誰も、商売なんぞ、できん」
ガデルも、頷いた。
「石は、傷を、負っても、鍛え直せば、また、使える」
「人も、同じだ」
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会議のあと、ゴルフが、最終的な、数字を、まとめていた。
今月は、痛みを、伴う、月だった。
それでも、数字は、確かに、プラスを、記録していた。
数字は、感情を、持たない。
だからこそ。
この領地が、まだ、前へ、進んでいることだけは、誰にも、否定できなかった。
第298話 雷鳴月の収支 了
【次回予告】監査要求への、正式な返答をした。
正式な言葉は、内容より、誰が、どこから、言うかで、重さが変わる。
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【領地収支・雷鳴月末時点】
・所持金:金貨3225枚(+112)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 98枚(失った取引先分・新規取引先で一部補填)
・ギルド収益 金貨 57枚
合計 金貨 209枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・第298話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:88%(変動なし・第二段階設計完了、着工は来月)
・インフラ:105%(+1・第二段階設計完了により回復)




