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 第296話 狙われる人

 領地を奪う最も確実な方法は、その領地を動かしている人を、奪うことだ。


 剣で、奪えないなら。


 ――人の流れを、変えればいい。

 雷鳴月、九日。


 ミルヴァが、急ぎの、報告を、持って、評議会に、現れた。


「ドガンに、直接、接触が、あった」


 その、言葉に、評議会が、緊張した。


「接触、というと」


 バルドが、聞いた。


「引き抜きだ」


 ミルヴァが、答えた。


「ヴァルク男爵領からの、使者を、名乗る者が、ドガンに、接触してきた」


──────────────────────────────────────


 ドガン自身が、その場に、いた。


 少し、渋い顔を、していた。


「話は、俺から、しよう」


 ドガンが、口を、開いた。


「昨日、商談の帰りに、声を、かけられた」


「金の、話じゃ、なかった」


 ドガンが、続けた。


「『ヴァルク男爵領で、より高い、地位を、用意する』という、話だった」


「商業ギルドの、統括か、それに、準じる、立場を、示唆された」


──────────────────────────────────────


 ヒコが、静かに、言った。


「また、自分から、来ましたか」


 その言葉に、ドガンが、少し、笑った。


「これで、何人目に、なる。俺の、方にまで、来るとは、思っていなかった」


「断ったんですか」


「当たり前だ」


 ドガンが、鼻を、鳴らした。


「俺を、何年、見ているつもりだ、ということだ」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、続けた。


「あの男が、俺を、金で、動かせると、思ったなら、見くびられたもんだ」


「俺は、この領地で、商売を、育てることが、一番、楽しい」


 ドガンが、少し、真剣な、顔に、なった。


「地位なんぞ、この領地を、勝たせるための、道具の一つに、過ぎん」


「あちらの、地位は、俺の、目的には、要らない」


──────────────────────────────────────


 その、報告を、聞いていたミルヴァが、すぐに、言った。


「今回の、報告を、聞いて、すぐに、来た」


「ドガンの、判断は、正しい。ただ」


 ミルヴァが、少し、間を、置いた。


「接触は、一人だけでは、ないかもしれない」


 評議会の、空気が、また、引き締まった。


「一人だけでは、というのは」


 ヒコが、聞いた。


「同じ、時期に、同じ、種類の、誘いが、複数の人物に、来ている可能性が、ある」


 ミルヴァが、答えた。


「まだ、確証は、ない。ただ、ドガンの件は、単発では、ないと、思う」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、考えてから、言った。


「他の、幹部にも、同様の、接触が、あったかどうか、確認してください」


「もし、あったとしても、隠す必要は、ありません」


「断った者が、責められるような、空気には、絶対に、しないでください」


 ミルヴァが、頷いた。


「その、方向で、動く」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、少し、真面目な、顔で、言った。


「一つ、言っておきたい」


「なんですか」


「今回、俺は、自分で、報告した」


 ドガンが、続けた。


「隠す理由が、ない。だから、隠さなかった」


「もし、これが、隠される、環境なら」


 ドガンが、視線を、上げた。


「それこそ、あの男の、思う壺だ」


 ヒコは、その言葉に、深く、頷いた。


「その通りです」


「報告できる、環境を、守ります」


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは、《可視化》で、評議会の、幹部たちの、色を、一人一人、確認した。


 どの色も、まだ、フォルテス領へ、確かに、繋がっていた。


 ただし、その流れの周囲を、別の流れが、静かに、絡みつこうとしている。


 その、感覚だけは、消えなかった。



第296話 狙われる人 了

【次回予告】守れなかった何かがあった。

 守れなかったものは、守ろうとした意志まで、否定しない。


──────────────────────────────────────


【領地収支・雷鳴月九日時点】


・所持金:金貨3113枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第296話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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