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 第295話 逆手

 自分の言葉が、自分に返ってくるとき、それは罠だったと気づく。


 善意で、示したものが、刃に、変わることがある。


 ――それでも、その刃を、恐れて、何も示さなくなれば、もっと、失うものが、大きい。

 雷鳴月、三日。


 評議会で、監査要求への、対策を、議論する場が、設けられた。


 ヒコが、まず、論点を、整理した。


「ヴァルク男爵の、論理は、こうです」


「『公共の利益を、主張したなら、公共の、監査を、受けるべきだ』」


「この論理の、前提を、整理する必要があります」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、資料を、めくった。


「一つ、案がある」


「聞かせてください」


「公共性の、範囲を、明確に、区切る」


 ドガンが、続けた。


「全部を、公共に、開くと、言ったわけじゃない。」


「示したのは、運営体制の透明性だ。」


「採掘技術や、内部情報まで、公開すると、約束したわけではない。」


「その、区別を、はっきり、させれば、逆手を、防げる」


 バルドが、頷いた。


「法的な、根拠が、必要ですね」


「そこが、難しい、ところだ」


 ドガンが、腕を、組んだ。


──────────────────────────────────────


 ゴルフが、少し、遠慮がちに、口を、開いた。


「あの……ハイム子爵に、頼ることは、できないでしょうか」


 その、一言に、評議会の、空気が、少し、揺れた。


「ハイム子爵に、内部情報の、提供を、求める、ということですか」


 バルドが、確認した。


「はい」


 ゴルフが、頷いた。


「向こうは、内政に、詳しい。法的な、根拠についても、何か、知っているかも、しれません」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、すぐに、首を、振った。


「ハイムに、頼るのは、まだ、早い」


「なぜ、ですか」


 ヒコが、聞いた。


「借りを、作ることに、なる」


 ドガンが、答えた。


「あの男は、今のところ、味方でも、敵でもない。だが、頼れば、頼るほど、こちらの、弱みを、見せることに、なる」


「今は、まだ、自分たちで、返せる、うちだ」


──────────────────────────────────────


 ガッツが、それに、反論した。


「頼れる相手が、いるなら、頼ればいい」


「プライドで、負けたら、意味がない」


 ドガンが、ガッツを、見た。


「プライドの、話じゃない。戦略の、話だ」


「今、頼れば、次も、頼ることに、なる」


「そうやって、少しずつ、あの男に、依存していけば」


 ドガンが、続けた。


「いずれ、こちらの、判断は、あの男の、都合に、左右される」


──────────────────────────────────────


 議論は、しばらく、平行線を、たどった。


 ヒコは、その、やり取りを、静かに、聞いていた。


 やがて、口を、開いた。


「まず、自分たちで、返します。それが、できるうちは。」


 その、一言に、評議会の、視線が、集まった。


「ただし」


 ヒコが、続けた。


「手が、足りなければ、その時は、考えます」


「今、頼るか、頼らないかを、決め切る必要は、ありません」


「まず、動いて、それでも、届かないと、分かった時に、判断すれば、いいと、思います」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、少し、考えてから、頷いた。


「その、進め方で、いい」


 ガッツも、渋々、頷いた。


「まあ、それなら、文句は、ない」


 ヒコが、続けた。


「監査要求への、正式な回答方針を、決めます」


「範囲は、こちらから、限定して、提示します。安全管理上、必要な、制限がある、という形で」


「時期は、こちらの、準備が、整い次第、応じます」


 バルドが、資料に、メモを、取った。


「その方針で、正式な、文書を、作成します」


──────────────────────────────────────


 会議のあと、ヒコは、《可視化》で、ヴァルクの流れと、ハイムの流れを、両方、確認した。


 二つの、流れは、それぞれ、違う色を、していた。


 一つは、明確な、敵。


 一つは、まだ、敵とも、味方とも、言えない。


 だからこそ。


 まだ、自分たちの足で、立つ。


 その決意だけは、揺らがなかった。



第295話 逆手 了

【次回予告】ヴァルク男爵が、領地の中を、狙い始めた。

 領地を奪う最も確実な方法は、その領地を動かしている人を、奪うことだ。


──────────────────────────────────────


【領地収支・雷鳴月三日時点】


・所持金:金貨3113枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第295話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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