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 第292話 調査隊帰還

 帰ってきた者の顔が、行くときと違うとき。


 そこには、何かが、あった証だ。


 同じ顔のまま、帰ってくることは、少ない。


 ――見てきたものは、必ず、その人間に、何かを、残していく。

 若樹月に、南方へ、出発してから、ふた月あまり。


 南方調査隊が、フォルテス領に、帰還した。


 門の前には、迎えの、人だかりが、できていた。


 馬車から、ゼド、タウルス、コリン、そして、騎士団の二名が、降りてくる。


 全員、旅の、埃を、まとっていた。


 だが、無事な、姿だった。


 ヒコは、その顔を、一人一人、確認した。


 ――五つ。


 全部、揃っている。


 安堵の、息を、吐いた。


──────────────────────────────────────


 休息を、挟んだ後。


 ゼドが、サヤとヒコに、調査結果を、直接、報告することになった。


 三人だけの、部屋。


 ゼドが、地図を、卓に、広げた。


「まず、結論から、言います」


 ゼドの、声は、いつもより、少し、重かった。


「認識制御の、痕跡は、人工的な、ものです」


「かなり古い、技術です。タナール期以前の、可能性も、あります」


 その言葉に、サヤの、表情が、強張った。


「タナール期より、前……」


「はい」


 ゼドが、頷いた。


「私たちが、これまで、想定していたよりも、はるかに、古い」


──────────────────────────────────────


 ゼドが、続けた。


「もう一つ、重要な、ことが、あります」


「地図から、その場所を、消したのは……そこを、見せないためでは、ありません」


 ヒコが、視線を、上げた。


「では、何のため、ですか」


「その場所へ、行かせないため、です」


 ゼドが、はっきりと、言った。


「見せないのと、行かせないのは、違います」


「見せないだけなら、地図が、あっても、構わない」


「ただ、行かせたくない場所が、ある」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、その言葉を、飲み込んでいた。


 やがて、静かに、口を、開いた。


「誰かが……」


 ヒコの、声が、少し、低くなった。


「誰かが、私たちが、そこへ、行くことを、止めようとしている」


 ゼドが、頷いた。


「その、可能性が、高いと、考えています」


 サヤが、地図を、覗き込んだ。


 その瞬間。


 サヤの、頭の、奥に、小さな、痛みが、走った。


「……痛っ」


「大丈夫ですか」


 ヒコが、聞いた。


「はい……ただ、この地図を、見ると、少し、頭痛が、します」


 サヤが、答えた。


「《可視化》の、ノイズと、同じ、感覚です」


──────────────────────────────────────


 その、やり取りを、聞いていたコリンが、口を、開いた。


「全員の、体調を、報告します」


「基本的に、身体的な、異常は、出ていません」


「ただし……」


 コリンが、続けた。


「ゼドさんだけ、少し……」


 全員の、視線が、ゼドに、向いた。


 ゼドが、少し、苦笑した。


「大した、ことでは、ありません」


 そう、言いながら。


 ゼドは、無意識のように、片手で、何かを、軽く、振り払うような、仕草を、した。


 ヒコは、その、仕草に、気づいた。


「今の、仕草は」


「……癖です」


 ゼドが、答えた。


 だが、その視線が、もう一度、卓の上の、地図に、落ちた瞬間。


 ゼドの、表情が、一瞬、完全に、止まった。


 感情のない、静止した、顔。


 それは、ほんの、一瞬だった。


 すぐに、いつもの、表情に、戻った。


 ヒコと、サヤは、その、一瞬を、見逃さなかった。


──────────────────────────────────────


 二人は、目を、見合わせた。


 だが、その場では、何も、言わなかった。


 言葉にするには、まだ、確証が、足りなかった。


 ヒコは、静かに、思った。


 ゼドの中にも、何かが、起きている。


 それが、何なのか。


 まだ、答えは、出ていなかった。


第292話 調査隊帰還 了

【次回予告】青天月の収支。

 夏の空は、何もかもを、明るく見せる。だからこそ、影が、見えにくい。


──────────────────────────────────────


【領地収支・調査隊帰還時点】


・所持金:金貨2868枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第292話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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