第290話 陽炎月の収支
同じ暑さが、去年とは違う重さで、やってくることがある。
季節は、繰り返す。
だが、迎える人間は、同じではない。
――一年前とは、違う自分が、この暑さを、受け止めていた。
陽炎月、一日。
評議会の間に、月次給与支払いに伴う、収支報告のため、いつもの顔ぶれが集まっていた。
ゴルフが、帳簿を卓に広げる。
「今月の収支を、まとめました」
外部収入は、堅調に伸びていた。
ただし、ゴルフの表情は、少し複雑だった。
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「一部の取引先では、まだ、揺れが続いています」
ゴルフが、続けた。
「ヴァルク領の模倣制度と、蒼鋼の噂。その両方の影響が、まだ、残っています」
「ただし、全体としては堅調です。悪い流れではありません」
ドガンが、頷いた。
「一つ一つ、地道に返していくしかない」
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バルドが、住居拡張の次の段階について、報告した。
「住居拡張の第二段階。家族向け住宅区の設計を、開始します」
「第一段階が完成した勢いを、そのまま活かします」
ガッツが、腕を組んだ。
「今度は、家族連れの住民が増えることを見越した設計にする」
「悪くない話だ」
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バルドが、続けて、報告した。
「南方調査隊は、まだ、帰還していません」
「予定より、少し、長引いています」
その報告に、評議会の空気が、少し、緊張した。
「連絡は」
ヒコが、聞いた。
「定期連絡は、続いています。ただし、調査対象が、当初の想定より、広がっているようです」
「危険な兆候は」
「今のところ、報告されていません」
バルドが、答えた。
ヒコは、少し、考えてから、頷いた。
「引き続き、連絡を、待ちましょう」
「無理に、急がせる必要は、ありません」
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報告が、一通り、終わりかけた頃。
バルドが、少し、話題を、変えた。
「もう一つ、忘れては、いけないことが、あります」
「今月、十五日は――」
バルドが、ヒコを、見た。
「ヒコ様の、誕生日です」
評議会の何人かが、微笑んだ。
「今年は、婚約してから、初めての誕生日ですね」
ゴルフが、少し、からかうような、口調で、言った。
ヒコは、少し、照れたように、答えた。
「そう、なりますね」
マユミが、隣で、静かに、それを、聞いていた。
表情は、いつもと、変わらなかった。
ただ、その口元には、わずかな、笑みが、浮かんでいた。
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会議のあと。
ヒコは、《可視化》で、南方へ、続く道を、確認した。
五つの色は、まだ、遠くに、あった。
消えては、いない。
ただ、その位置は、以前より、さらに、奥へと、進んでいるように、見えた。
何を、見つけようとしているのか。
その答えを、待つしか、今は、なかった。
第290話 陽炎月の収支 了
【次回予告】ヒコの誕生日が来た。
三度目の誕生日は、一度目の自分が、想像もしなかった場所にいる。
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【領地収支・陽炎月一日時点】
・所持金:金貨2868枚(+115)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 102枚
・ギルド収益 金貨 56枚
合計 金貨 212枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・第290話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:88%(変動なし・第二段階は設計開始段階)
・インフラ:105%(変動なし)




