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 第288話 制度の模倣

 形だけ真似たものは、形だけしか機能しない。


 ただし、見た目は、同じに見える。


 ――そして、見た目だけで、多くのものは、決まってしまう。

 若樹月、八日。


 ヴァルク男爵領から、一つの報せが、届いた。


 ドガンが、資料を手に、評議会に現れた。


「ヴァルク領内で、弟子制度に似た仕組みが、正式に発表された」


 その言葉に、評議会が、静まった。


──────────────────────────────────────


 資料を、卓に、広げる。


「表面的には、フォルテス領の弟子制度に、酷似している」


「師弟関係、技術継承、給与体系。並べてみると、ほとんど、同じに見える」


 バルドが、資料を、見比べながら、眉を、寄せた。


「ただし……」


「ただし、実態は、違う」


 ドガンが、続けた。


「弟子の自由が、制限されている。技術を覚えたら、囲い込まれる」


「他所への移動も、簡単には認められない仕組みだ」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、腕を、組んだ。


「見た目で、混同させようとしている」


「フォルテス領の評判を、薄めようとしているんだ」


「同じような仕組みが、二つあれば」


 ドガンが、続けた。


「外から見た者は、どちらが本物か、分からなくなる」


──────────────────────────────────────


 セリウスが、その場で、補足した。


「実際、ギルドの内部でも」


「どちらが元祖か、という話が、出始めています」


「フォルテス領が真似た、という逆の噂まで、一部で流れています」


 その言葉に、ガデルが、鼻を、鳴らした。


「馬鹿な話だ」


「こっちが、先に始めたことだろうが」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、資料を、見つめてから、静かに、言った。


「本物は、結果が、違います」


「ただし」


 ヒコが、続けた。


「結果が出るまでは、見分けにくい」


「時間が、かかる、ということですか」


 バルドが、聞いた。


「はい」


 ヒコが、頷いた。


「弟子が、どう育つか。どんな技術が、生まれるか。長い目で見なければ、差は、出ません」


「短期的には、向こうの思惑通りに、なるかもしれません」


「それでも」


 ヒコが、続けた。


「長く見れば、本物は、残ります。模倣は、いずれ、綻びます」


──────────────────────────────────────


 その日の午後。


 ガデルの弟子の一人が、工房で、作業をしていた。


 噂を耳にしたのか、先ほどから、少し、考え込んでいる。


 ガデルが、その様子に、気づいて、声を、かけた。


「どうした」


「いえ……」


 弟子が、手を、止めて、言った。


「ヴァルク領にも、似たような制度が、できたと、聞きました」


「それが、どうした」


「……フォルテス領に、来て、良かったと、思っています」


 弟子が、続けた。


「ここでは、技術を、教えてもらえます」


「覚えた技術を、自分のものとして、これからも、使える」


「向こうが、どんな仕組みかは、分かりませんが」


 弟子が、少し、笑った。


「ここより、いい場所だとは、思えません」


 ガデルが、頷いた。


「その言葉が、一番の答えだ」


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは、《可視化》で、ヴァルク領の方角を、確認した。


 新しい色が、一つ、そこに、生まれていた。


 フォルテス領の色に、似ている。


 だが、決定的に、何かが、違う。


 その違いを、見分けられる者は、まだ、少ない。


 だからこそ、時間をかけて、その差を、証明していくしかなかった。


第288話 制度の模倣 了

【次回予告】南方から、最初の報告が来た。

 現地に行った者だけが、地図に書けないものを、持って帰れる。


──────────────────────────────────────


【領地収支・若樹月八日時点】


・所持金:金貨2753枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第288話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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