第287話 若樹月の収支
離れた場所で何かが動いているとき、手元の数字だけが、確かなものに見える。
遠くのことは、すぐには、分からない。
――だから、手元にあるものを、まず、確かめる。
若樹月、一日。
評議会の間に、月次給与支払いに伴う、報告のための資料が、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、卓に、広げる。
「今月の収支を、まとめました」
バルドが、まず、口を、開いた。
「南方調査隊が、出発してから、十日が、経ちました」
「定期連絡も、来ています。今のところ、問題は、ありません」
その報告に、評議会の何人かが、安堵の表情を、見せた。
ヒコも、静かに、頷いた。
「良かった」
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バルドが、続けて、報告した。
「産業省への、第二回定期報告も、送付しました」
「第一回に、続いて、丁寧に、対応しています」
ドガンが、頷いた。
「その調子で、いい」
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バルドが、さらに、もう一つ、資料を、取り出した。
「ハイム子爵から、返信が、届いています」
全員の視線が、そちらに、向いた。
「内容は、短いものです」
バルドが、読み上げた。
「『報告を、拝見しました。丁寧な、仕事ですね』」
その短い一文に、評議会の空気が、微妙に、揺れた。
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ドガンが、少し、眉を、寄せた。
「……なぜ、報告の内容を、知っている」
「産業省への、報告書を、見たのか」
「あの男、報告書の写しを、入手したのかもしれん」
バルドが、少し、驚いた顔を、した。
「産業省内部に、それだけの繋がりが、あるということですか」
「あるいは」
ドガンが、続けた。
「産業省の中に、ハイムと、繋がっている、誰かが、いる」
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ヒコが、しばらく、考えてから、静かに、言った。
「……それも、見越して、書きました」
評議会の視線が、一斉に、ヒコに、集まった。
「見越して、というと」
ドガンが、聞いた。
「誰が、この報告を、読むか、分かりません」
ヒコが、答えた。
「産業省だけとは、限りません」
「だから、誰が、読んでも、恥じない内容に、しています」
「見られること自体を、前提に、しています」
ドガンが、少し、感心したように、ヒコを、見た。
「……その心構えは、悪くない」
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報告が、一通り、進んだところで、ミルヴァが、口を、開いた。
「一つ、気になる情報が、入っている」
「ヴァルク男爵の、王都への、工作だ」
評議会の空気が、また、引き締まった。
「有力貴族、数名に、フォルテス領の、不安定性を、吹き込んでいるようだ」
ミルヴァが、続けた。
「具体的な、内容までは、まだ、掴めていない」
「ただ、動きは、確実に、ある」
ヒコが、頷いた。
「引き続き、追ってください」
ドガンが、低く、つぶやいた。
「四方向の、外側に、手を、伸ばしてきたか」
「王都への、工作。これは、想定に、なかった」
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会議の終わり、ヒコは、《可視化》で、南方へ、続く道を、確認した。
五つの色は、まだ、遠くに、見えている。
問題なく、進んでいる証だった。
ただし、その遠くの色を、追いながら、ヒコの中には、新しい緊張が、生まれていた。
外からの圧力は、もう、四方向だけでは、なかった。
ヴァルク男爵の手は、フォルテス領の外側へ。
そして、さらに、その先へと、伸び始めていた。
第287話 若樹月の収支 了
【次回予告】ヴァルク男爵の、新たな動きが、見えた。
形だけ、真似たものは、形だけしか、機能しない。ただし、見た目は、同じに、見える。
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【領地収支・若樹月一日時点】
・所持金:金貨2753枚(+115)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 100枚
・ギルド収益 金貨 58枚
合計 金貨 212枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・第287話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:88%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




