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 第286話 南方へ

 答えがある場所に、行くことを決めなければ、答えは来ない。


 待っているだけでは、何も、動かない。


 ――だから、いつか、誰かが、行かなければ、ならない。

 若樹月を迎える直前。


 評議会で、第一調査隊の編成が、正式に、決まった。


 メンバーが、発表される。


「ゼド。タウルス様。コリン、医療兼調査として」


 バルドが、名前を、読み上げていく。


「そして、騎士団から、二名」


 アーヴィンが、その二名を、自ら、選んだ。


「腕も、頭も、確かな者を、選んだ」


「何が、起きても、対応できる、二人だ」


──────────────────────────────────────


 目的は、明確だった。


 地図欠損の現地確認。


 認識阻害の痕跡調査。


 原因究明のための情報収集。


 サヤは、今回は、同行しない。


 《可視化》の精度に、問題が残っている。


 その状態で、未知の場所へ、送り出すには、リスクが、高すぎた。


──────────────────────────────────────


 編成会議の場で、ヒコが、留守を、預かることも、決まった。


 産業省への対応。


 ヴァルク男爵の、四方向からの圧力。


 白金霊鉱の警戒。


 どれも、目を、離せない状態が、続いていた。


「私は、今回は、行けません」


 ヒコが、静かに、言った。


「この領地を、離れるわけには、いきません」


 マユミが、その言葉に、少し、眉を、寄せた。


「行かせるのか」


 短い、問いだった。


 心配。


 不安。


 そして、ヒコを、案じる気持ち。


 その一言に、すべてが、込められていた。


「行ってもらいます」


 ヒコが、答えた。


「私は、ここを、守ります」


 マユミは、しばらく、ヒコを、見つめていた。


「……分かった」


 それ以上、何も、言わなかった。


──────────────────────────────────────


 出発の、前日。


 ヒコは、コリンを、呼んだ。


「体調管理、しっかりしてください」


「はい」


 コリンが、頷いた。


「南方は、まだ、分からないことが、多い土地です」


 ヒコが、続けた。


「無理は、しないでください」


「気をつけます」


「一つだけ」


 ヒコが、コリンを、まっすぐ、見た。


「調査の成功よりも、大事なことがあります」


「……何でしょう」


「帰ってきてください」


 その一言に、コリンは、少し、驚いたような、顔を、した。


 それから、静かに、頷いた。


「必ず、戻ります」


──────────────────────────────────────


 出発の朝。


 ゼド、タウルス、コリン、そして、騎士団の二名。


 五人が、施設の門の前に、揃った。


 ヒコが、見送りに、立つ。


「行ってきます」


 ゼドが、短く、言った。


「気をつけて」


 ヒコが、それだけ、返した。


 多くの言葉は、必要なかった。


 行く者と、送る者。


 それぞれの役割が、この日、はっきりと、分かれた。


──────────────────────────────────────


 馬車が、南へ、向かって、動き出す。


 ヒコは、その後ろ姿が、見えなくなるまで、見送った。


 《可視化》で、その色を、見送り続ける。


 遠ざかる色は、まだ、五つ。


 帰る時も、五つであってほしい。


 ヒコは、静かに、そう願った。


第286話 南方へ 了

【次回予告】若樹月が、来た。

 離れた場所で何かが動いているとき、手元の数字だけが、確かなものに見える。


──────────────────────────────────────


【領地収支・花灯月末〜若樹月境目時点】


・所持金:金貨2638枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第286話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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