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 第285話 花灯月の収支

 花が咲く月に、影も、また浮かび上がる。


 美しいものと、不穏なものは、同じ季節に、並んで現れる。


 ――それが、この年の、花灯月だった。

 花灯月、末日。


 評議会の間に、月末の収支報告のため、いつもの顔ぶれが、集まっていた。


 ゴルフが、帳簿を卓に広げた。


「今月の収支を、まとめました」


 ただし、その口調は、いつもより、少し、重かった。


──────────────────────────────────────


「外部収入は、引き続き、安定しています」


 ゴルフが、続けた。


「ただし……一部の取引先で、微細な変動が、出ています」


「噂の影響ですか」


 ヒコが、聞いた。


「はい」


 ゴルフが、頷いた。


「蒼鋼の品質が不安定だという話が、ギルド内で広まっています」


「もちろん、否定して回っていますが……」


 ゴルフが、言葉を濁らせた。


──────────────────────────────────────


 セリウスが、その場で、補足した。


「ギルドの中でも、噂の出所が分からない」


「誰が最初に言い出したのか、追えない」


「止めにくい噂だ」


 ドガンが、腕を組んだ。


「意図的に、拡散されている可能性が高い」


「単なる噂話にしては、広がり方が早すぎる」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、考えてから、静かに、言った。


「本物は、結果が違います」


「結果を出し続けることが、一番の反論になります」


「噂を、言葉で打ち消すよりも」


 ヒコが、続けた。


「これまで通り、良い蒼鋼を作り続けます」


「それが、一番、強い答えです」


 ガデルが、頷いた。


「言われるまでもねぇ」


「品質は、落とさん」


──────────────────────────────────────


 ゴルフが、それでも、少し、明るい表情で、資料をめくった。


「多少の変動はありますが」


「今年の収支を含めても、備蓄資金は、すでに二千五百枚を超えています」


「見通しは、まだ、悪くありません」


 ドガンが、頷いた。


「それだけの足腰がある」


「噂ごときで、揺らぐような土台じゃない」


──────────────────────────────────────


 会議のあと、ヒコは、《可視化》で、外部取引の流れを確認した。


 一部の色が、以前より、わずかに細くなっている。


 ただし、全体としては、まだ、大きく揺らいではいなかった。


 ヒコは、その色を、しばらく、見つめた。


 噂は、実体のないものだ。


 だからこそ、実体で、押し返す。


 それしか、方法は、なかった。


第285話 花灯月の収支 了

【次回予告】南方廃址の調査が、動き出した。

 答えがある場所に、行くことを決めなければ、答えは来ない。


──────────────────────────────────────


【領地収支・花灯月末時点】


・所持金:金貨2638枚(+107)


 収入内訳

 ・冒険者固定給  金貨   42枚

 ・勲爵士給与   金貨   12枚

 ・外部取引    金貨   95枚(噂の影響で一部減)

 ・ギルド収益   金貨   55枚

  合計      金貨  204枚


 支出内訳

 ・幹部級給与   金貨   24枚

 ・準幹部級給与   金貨    9枚

 ・一般職給与   金貨   40枚

 ・部門運営費   金貨   24枚(8部門合計)

  合計      金貨   97枚


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第285話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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