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 第282話 出口を探す

 漏れ続けているものは、止める前に、どこから漏れているかを知らなければならない。


 場所も分からずに、塞ぐことはできない。


 ――だから、まず、探すことから、始める。

 花灯月、十日。


 ミルヴァ率いる影部隊による、内部調査が、始まっていた。


 ミルヴァが、評議会に、経過を、報告する。


「先日、まとめていただいた、九つの出来事。もう一度、一つずつ、洗い直した」


 資料を、卓に、広げる。


「帳簿の誤差、工具の紛失、薬草の在庫不足、名簿の書き直し、紙質の違い、そして、子どもへの声かけ」


「発生した場所、時期、関わった可能性のある人物。すべて、整理し直した」


──────────────────────────────────────


 バルドが、資料に、目を、通した。


「発生している場所は、どれも、外部との、接点が、ある区画ですね」


「ああ」


 ミルヴァが、頷いた。


「工房、薬草庫、教室の周辺、書類の保管庫」


「すべて、登録外の者が、比較的、出入りしやすい、区画だ」


 ドガンが、腕を、組んだ。


「登録外の出入り者が、情報流出の経路として、浮かんできた、というわけか」


「その可能性が、高いと、見ています」


 ミルヴァが、答えた。


──────────────────────────────────────


 バルドが、少し、感慨深そうに、言った。


「領民登録制度を、作っておいて、良かったです」


「登録者と、登録外の者。その動きの差が、はっきり、見えます」


「もし、この制度が、なければ」


 バルドが、続けた。


「誰が、どこにいるのか。そもそも、把握することさえ、できませんでした」


 ヒコも、頷いた。


「制度は、こういう時のためにも、あります」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、資料を、見ながら、考えを、まとめた。


「登録外の動きを、もう少し、精緻に、見ます」


「見張りを、増やす、ということか」


 ミルヴァが、聞いた。


「それだけでは、ありません」


 ヒコが、続けた。


「こちらから、偽の情報を、一つ、流してみます」


 評議会の何人かが、少し、驚いた顔を、した。


「偽情報、ですか」


 ゴルフが、聞き返した。


「はい」


 ヒコが、頷いた。


「本物と、少しだけ、違う情報を、限られた場所にだけ、置きます」


「その偽情報が、外に、出てくれば」


「出所が、絞り込めます」


 ドガンが、少し、感心したように、言った。


「罠を、仕掛けるわけだ」


「悪くない」


──────────────────────────────────────


 議論が、一区切りついたところで、ミルヴァが、少し、声を、落とした。


「一つ、共有しておきたいことが、ある」


「なんですか」


「登録外の出入り者が、経路である可能性は、高い」


 ミルヴァが、続けた。


「ただし……内部に、もう一つ、出口が、ある可能性を、排除できない」


 その言葉に、評議会の空気が、少し、張り詰めた。


「内部、というのは」


 ヒコが、聞いた。


「この領地の中にいる、誰かが、関わっている可能性だ」


 ミルヴァが、静かに、言った。


「今の段階では、確証は、ない」


「ただし、可能性として、頭の隅に、置いておく必要が、ある」


──────────────────────────────────────


 その言葉に、その場の全員が、しばらく、沈黙した。


 誰かを、疑うわけでは、ない。


 ただ、その可能性が、確かに、あるという事実だけが、重く、その場に、残った。


 ヒコが、静かに、言った。


「その可能性も、含めて、調べを、進めてください」


「疑うことと、決めつけることは、違います」


「まず、事実を、集めましょう」


 ミルヴァが、頷いた。


「承知」


──────────────────────────────────────


 夜、ミルヴァは、一人、影部隊の詰め所で、資料を、見返していた。


 内部に、出口が、ある可能性。


 その言葉を、口にしたとき、ミルヴァの脳裏には、いくつかの顔が、浮かんでいた。


 誰か一人を、疑うつもりは、ない。


 ただ、可能性から、目を、逸らすつもりも、なかった。


 真実は、いつも、見たくないものの、その先に、ある。


 ミルヴァは、そう、知っていた。


第282話 出口を探す 了

【次回予告】サヤの異変が、深刻になった。

 見えていたはずのものが、ある日、見えなくなる。その日まで、気づかない。


──────────────────────────────────────


【領地収支・花灯月十日時点】


・所持金:金貨2531枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第282話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:88%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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