第279話 ゼドの報告
遠い場所からの話は、届いた順番ではなく、重さの順番で、受け取る。
軽い話から、聞くわけには、いかない。
――重い話ほど、後回しにされる。
そして、最後に、すべてを、覆す。
白雪月から、ひと月あまり。
ゼドが、フォルテス領を、訪れた。
長い旅の埃を、まだ、まとったままだった。
タウルスとの記録照合の結果を、持ってきていた。
その報告を受けるため、評議会が、急遽、招集された。
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ゼドは、まず、サヤに、視線を向けた。
「伝えたいことが、あります」
「はい」
「地図の欠損した部分。あの箇所と、類似した認識阻害の記録が、別の遺構にも、あることが、分かりました」
サヤの表情が、わずかに、強張った。
「別の遺構、ですか」
「タウルス様の記録の中に、同じ痕跡の報告が、複数、ありました」
ゼドが、続けた。
「一つの遺構だけに、起きた現象では、ありません」
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サヤとゼドが、初めて、正面から、地脈の乱れについて、言葉を交わしていた。
「サヤさんの方でも、《可視化》に、何か、変化は、ありましたか」
「……はい」
サヤが、少し、間を置いてから、答えた。
「地図の欠損を、確認して以来、精度に、わずかな、ノイズが、入るようになりました」
「風景の輪郭が、ときどき、揺れて見えます」
ゼドが、頷いた。
「その感覚には、覚えがあります」
「タナール期の記録を、読み解いているときにも、似た感覚が、ありました」
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評議会の全員が、二人のやり取りを、静かに、聞いていた。
ゼドが、そこで、一度、言葉を、止めた。
「ここから先は、まだ、確証のない、私の見解です」
「聞かせてください」
ヒコが、促した。
ゼドは、ゆっくりと、口を開いた。
「この痕跡は……誰かが、消したんじゃ、ない」
「誰かが、見えないように、した」
部屋の空気が、変わった。
「消すのと、見えなくするのは、違います」
ゼドが、続けた。
「消せば、痕跡が、残る。消した跡が、必ず、見つかる」
「見えなくすれば、最初から、なかったように、見える」
「痕跡を、痕跡として、残さない」
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サヤが、ゆっくりと、口を開いた。
「……それを、今も、できる者が、いる、ということですか」
その問いに、ゼドは、すぐには、答えなかった。
しばらく、視線を落とし、考え込む。
「……可能性は、あります」
その一言に、評議会が、静まり返った。
誰も、次の言葉を、すぐには、発せなかった。
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ヒコが、その沈黙を、破った。
「もし、その可能性が、あるなら」
「南方廃址の調査は、より慎重に、進める必要が、ありますね」
「はい」
ゼドが、頷いた。
「ただし、慎重すぎても、答えには、辿り着けません」
「いずれ、直接、確かめる必要が、出てくると、思います」
サヤが、ゼドを、見た。
「その時は、私も、一緒に、行きます」
その言葉に、ゼドは、少しだけ、驚いた表情を、見せた。
「……分かりました」
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会議の終わり、リアが、静かに、つぶやいた。
「見えないようにする力、か」
「その力は、私たちの《可視化》とは、正反対のものかもしれません」
その言葉に、ヒコは、しばらく、考え込んだ。
この領地には、確かに、見えているものがある。
ただし。
見えていないものは、もっと、多いのかもしれない。
その事実だけが、この日、はっきりと、突きつけられた。
第279話 ゼドの報告 了
【次回予告】芽吹月が、来た。春が、また、来た。
同じ季節は、二度と来ない。
ただし、似た季節は、必ず来る。
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【領地収支・白雪月から、ひと月あまり時点】
・所持金:金貨2406枚(変動なし)
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【発展進捗・第279話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:85%(変動なし・兵舎工事進行中)
・インフラ:105%(変動なし)




