第278話 凍氷月の収支
寒い月は、余分なものが、削られていく。
削られた後に、残るものだけが、残る。
――それを見れば、この領地が、本当に、何を支えにしているかが分かる。
凍氷月、末日。
評議会の間に、月末の収支報告のため、いつもの顔ぶれが、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、卓に、広げた。
「今月の収支を、まとめました」
バルドが、続けた。
「専門兵団発足後、初めての、正式な部門別運営費の執行報告になります」
ゴルフが、資料を、指し示す。
「魔法兵団、循環医療兵団ともに、予定通りの、支出に、収まっています」
「無駄な支出は、ありません」
リアが、頷いた。
「毎月の消耗は、想定の範囲内です」
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ガッツが、住居拡張の、進捗を、報告した。
「職員寮、兵舎、共に、着実に、進んでいる」
「予定より、遅れは、ない」
アーヴィンが、少し、安堵した様子を、見せた。
「あと一月半で、団員たちも、新しい兵舎に、入れる」
「悪くない、ペースだ」
ヒコが、頷いた。
「その調子で、進めてください」
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バルドが、もう一つ、報告を、続けた。
「産業省への、定期報告。第一回を、送付しました」
「これで、報告義務の、履行も、正式に、始まります」
ドガンが、頷いた。
「見せることに、慣れておく必要が、ある」
「毎回、同じように、丁寧に、対応しよう」
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報告が、一通り、終わったところで、ドガンが、少し、声を、落とした。
「一つ、気になることが、ある」
全員の視線が、ドガンに、集まった。
「ヴァルク男爵。最近、静かすぎる」
「以前は、いろいろな方向から、圧力を、かけてきていた。ここのところ、それが、少ない」
「良い兆候ではないんですか」
ガッツが、聞いた。
「そうとも、限らない」
ドガンが、首を、振った。
「静かな時ほど、裏で、何かを、準備している。商人なら、そう考える」
「実際、いくつか、報告が、入っている」
ドガンが、続けた。
「技術者への、個別接触が、始まっているらしい」
「金ではない。地位や、待遇での、誘いのようだ」
評議会の空気が、少し、引き締まった。
「合法的な、引き抜き、というわけですか」
ヒコが、聞いた。
「その形に、変わりつつある」
ドガンが、頷いた。
「これまでの、取引先への圧力とは、違う。人そのものに、直接、手を伸ばしてきている」
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ヒコは、少し、考えてから、言った。
「今のところ、実害は、出ていませんか」
「今のところは」
ドガンが、答えた。
「ただし、これから、どうなるかは、分からない」
「注意しておいてください」
ヒコが、短く、言った。
「一人一人の、様子も、気にかけておきます」
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会議のあと、ゴルフが、最終的な数字を、まとめていた。
今月は、堅実な、伸びを、見せていた。
数字は、悪くない。
人も、増えている。
仕組みも、整っている。
だからこそ。
その堅実さの裏で、静かに、次の圧力の形が、育ち始めていることに、この時点では、まだ、誰も、気づいていなかった。
第278話 凍氷月の収支 了
【次回予告】南方廃址から、ゼドが戻った。
遠い場所からの話は、届いた順番ではなく、重さの順番で、受け取る。
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【領地収支・凍氷月末時点】
・所持金:金貨2406枚(+125)
収入内訳
・冒険者固定給 金貨 42枚
・勲爵士給与 金貨 12枚
・外部取引 金貨 108枚
・ギルド収益 金貨 60枚
合計 金貨 222枚
支出内訳
・幹部級給与 金貨 24枚
・準幹部級給与 金貨 9枚
・一般職給与 金貨 40枚
・部門運営費 金貨 24枚(8部門合計)
合計 金貨 97枚




