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 第277話 等価交換

 対等な取引は、どちらも、何かを手放すことで成立する。


 どちらかだけが、得をする取引は、長く続かない。


 ――だからこそ、何を渡し、何を受け取るかに、その人間の本質が、映る。

 凍氷月、二十八日。


 ハイム子爵との、情報交換が、行われた。


 評議会の一室に、ヒコ、バルド、ドガン、そして、ハイムが、席に、着いていた。


 バルドが、まず、評議会の運用概要を、まとめた資料を、差し出した。


「先日、ご覧いただいた範囲の、要点です」


 ハイムが、資料を、丁寧に、受け取る。


「ありがとうございます」


 そして、ハイムも、自らの、資料を、差し出した。


「約束していた、他領の内政事例です」


──────────────────────────────────────


 資料は、思った以上に、詳細だった。


 いくつかの領地の、行政運営における、失敗例と成功例。


 その中の一つに、産業省内部の、最近の動きに関する記述が、含まれていた。


 ドガンが、その部分を、読んで、目を、細めた。


「……この情報は、正確だ」


「本来、外に出ないはずの、内部事情まで、書かれている」


 ドガンが、ハイムを、見た。


「あの男、本当に、内政に近い場所に、いるようだ」


──────────────────────────────────────


 会談が、終わったあと、ヒコが、ドガンに、聞いた。


「信用できる、相手ですか」


「まだ、分からない」


 ドガンが、正直に、答えた。


「ただし、使える」


「情報の質は、確かだ。少なくとも、嘘は、書いていない」


「信用と、利用は、別だ」


 ドガンが、続けた。


「今は、使える相手として、扱っておけば、いい」


──────────────────────────────────────


 ハイムが、帰り際、ヒコに、一言だけ、残した。


「この資料は、差し上げます」


「ですが」


 ハイムの視線が、まっすぐ、ヒコに、向いた。


「私は、あなたの、味方ではありません」


「ただし、敵でも、ありません」


「そのことだけ、覚えておいて、ください」


 それだけ、言って、ハイムは、馬車へと、向かった。


 その背中は、来たときと、同じくらい、静かだった。


──────────────────────────────────────


 ハイムが、去ったあと、評議会の空気が、微妙に、変わっていた。


 誰も、口には、出さなかった。


 だが、その場にいた全員が、同じことを、感じていた。


 この人物は、敵でも、味方でもない、その中間にいる、第三の存在として、この領地に、確かな、位置を占め始めていた。


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは、《可視化》で、遠くへと、続いていく、ハイムの流れを、確認した。


 その色が、以前より、少しだけ、変わっている気が、した。


 読み取りにくいことは、変わらない。


 ただ、その読み取りにくさの質が、以前とは、少し、違っていた。


 完全な、闇ではない。


 ただし、光でも、ない。


 その、中間の、色。


 ヒコは、その色を、しばらく、見つめていた。



第277話 等価交換 了

【次回予告】凍氷月の収支が来た。

 寒い月は、余分なものが削られていく。残るものだけが、残る。


──────────────────────────────────────


【領地収支・凍氷月二十八日時点】


・所持金:金貨2281枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第277話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:85%(変動なし・工事進行中)

・インフラ:105%(変動なし・ハイム子爵の「静かな協力関係」段階への移行)

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