第271話 白雪月の収支
積み上げてきた数字が、新しい形になって、動き始める。
数字は、嘘をつかない。
――だが、数字だけでは、人の動きまでは、見えない。
白雪月、末日。
評議会の間に、月末の収支報告のため、いつもの顔ぶれが、集まっていた。
ゴルフが、帳簿を、卓に、広げた。
「今月の収支を、まとめました」
バルドが、まず、口を開いた。
「専門兵団の発足に伴って、予算の再配分が、必要になります」
「リクの、近衛副隊長への昇進もあります。給与体系の更新も、併せて、報告します」
ゴルフが、頷いた。
「リクの給与は、準幹部級から、幹部級へ、格上げしました」
「これにより、幹部級給与の合計が、増えています」
「一方で、準幹部級給与の合計は、その分、減っています」
ドガンが、腕を、組んだ。
「人が育てば、当然、そうなる」
「悪い変化じゃない」
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ゴルフが、続けて、報告する。
「魔法兵団と、循環医療兵団。両方とも、正式に、運営費が、動き始めています」
「訓練資材、詠唱補助具、術式記録の紙代。これが、魔法兵団の分です」
「薬草の追加発注、治療器具の維持。これが、循環医療兵団の分です」
リアが、静かに、頷いた。
「無駄には、していません」
コリンも、頷く。
「命に関わる部分だけは、出し惜しみしていません」
「それで、いい」
ヒコが、短く、言った。
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バルドが、資料を、めくった。
「もう一つ、報告があります」
「領民登録が、ほぼ、全員、完了しました」
「創設領民、準領民、新規移民。分類も、ほぼ、整理し終えています」
ヒコが、頷いた。
「よくやってくれました」
ゴルフが、少し、笑って、言う。
「今年の目標は、備蓄資金、金貨三千枚です」
ヒコは頷いた。
「使わないために、貯めるわけではありません」
「必要なときに、迷わず使えるように、備える。それが、領地の備蓄です」
その数字に、何人かが、わずかに、驚いた。
「去年の伸びを、そのまま、続けられれば、届く数字です」
「届かせて見せる」
ドガンが、短く、言った。
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報告が、一通り、終わりかけた頃。
ミルヴァが、静かに、口を、開いた。
「一つ、気になることが、ある」
全員の視線が、ミルヴァに、向いた。
「門番の日誌を見ていて気づいた。同じ顔を二、三度見かけるようになった。」
「通過商人か、短期の旅人でしょうか」
「はっきりとは、分からない。ただ、以前より、数が、多い気がする」
バルドが、少し、考えて、言った。
「物流量が増えれば、出入りも増えます。現時点では、不自然とは言えません」
「そうかもしれない」
ミルヴァが、頷いた。
その場の誰も、それ以上、深くは、考えなかった。
報告は、次の議題へ、進んだ。
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会議のあと、ゴルフが、最終的な数字を、まとめていた。
今月の収支を、もう一度、確認する。
最後の一枚を、綴じようとして、手が止まる。
一枚だけ、紙の質が、違っていた。
ゴルフは、新しく補充した紙だろうと、そのまま綴じた。
紙の端だけが、妙に、真っすぐだった。
数字は、合っていた。
だからこそ。
誰も、その数字の外側で、少しずつ失われているものに、気づかなかった。
第271話 白雪月の収支 了
【次回予告】兵舎の工事が、本格的に始まった。
帰る場所がある者は、戦い方が変わる。
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【領地収支・白雪月末時点】
・所持金:金貨2331枚(+120)
収 入:冒険者固定給 金貨 42枚
勲爵士給与 金貨 12枚
外部取引 金貨 105枚
ギルド収益 金貨 58枚
合計 金貨 217枚
支 出:幹部級給与 金貨 24枚
(リク昇格反映/準幹部級より+3)
準幹部級給与 金貨 9枚
(リク分減/-1)
一般職給与 金貨 40枚
部門運営費 金貨 24枚
(8部門運営費※)
※魔法兵団・循環医療兵団運営費を含む
合計 金貨 97枚
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【発展進捗・第271話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:85%(変動なし・工事は次話より本格着工)
・インフラ:104%(+1・領民登録制度の完了・両兵団の運営体制安定化)




