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 第270話 循環医療兵団、発足

 守ることには、二つある。


 戦うこと。


 ――そして、戦える者を、失わないことだ。

 白雪月、十五日。


 医療棟の前に、人が、集まっていた。


 コリンが、その中心に、立っていた。


 いつもの穏やかな表情が、この日は、少しだけ、引き締まっていた。


「本日をもって、循環医療兵団を、正式に、発足します」


 コリンの声は、静かだったが、確かだった。


 ヒコが、隣で、頷く。


「思想は、一つです」


 コリンが、続けた。


「命を繋ぎます」


「傷ついた者を、育て、回復させ、現場に、戻す」


「戻って、また、働ける」


「その循環を、絶やさない」


「これが、循環医療兵団の、全てです」


 集まった団員たちが、静かに、頷いた。


──────────────────────────────────────


 ガデルが、少し、離れた場所から、その様子を、見ていた。


「守りが、また一つ、増えたな」


 隣にいたガッツが、頷く。


「剣で守る。壁で守る。そして、人を、生かして守る」


「これで守りは三本柱になったな」


 ガデルが、腕を、組んだ。


「ようやく領地らしくなってきた」


──────────────────────────────────────


 発足の式のあと、コリンが、団員たちに、実技を、指導していた。


「怪我人が出たとき、まず、何を見ますか」


 若い団員が、答える。


「傷口、ですか」


「違います」


 コリンが、首を、振った。


「まず、呼吸を、見ます。次に、意識を、見ます。傷は、その後です」


「順番を、間違えると、助かる命も、助かりません」


 団員たちが、それぞれ、メモを、取った。


 コリンの指導は、丁寧だった。


 一つ一つの手順に、理由が、あった。


──────────────────────────────────────


 夕方、評議会で、予算の話が、出た。


 ゴルフが、資料を、確認しながら、言う。


「医療予算も、これで、正式に、兵団運営費として、機能し始めます」


「薬草、治療器具、術式記録の紙代」


「すべて、この枠から、出ます」


 コリンが、頷いた。


「無駄には、しません」


「ただし、命に関わる場では、出し惜しみもしません」


 ドガンが、頷く。


「その方針で、いい」


──────────────────────────────────────


 夜、コリンは、一人、薬草庫の、在庫を、確認していた。


 記録簿と、棚の中身を、照らし合わせる。


 ――あれ。


 記録より、少し、薬草の量が、少なかった。


 コリンは、首を、傾げた。


「使い切った、のかな」


 最近、訓練は増えている。


 消費が増えていても、不思議ではない。


 そう考えて、コリンは、追加発注の、書類を、書いた。


 棚の薬草を、もう一度、数える。


 記録簿を見る。


 もう一度、棚を見る。


 ……やはり、少ない。


 誤差にしては、少しだけ、大きい気がした。


 ただし、それも、気のせいかもしれない。


 コリンは、その感覚を、そのまま、飲み込んだ。


 次回の棚卸しで確認すればいい。


 書類を、書き終えて、薬草庫の、灯りを、消した。


 薬草庫の扉が、静かに閉まる。


 棚には、誰も気づかないほどの、小さな空きが、一つだけ残っていた。


──────────────────────────────────────


 医療棟の外に、夜の風が、吹いていた。


 新しい兵団が、また一つ、この領地に、根を、下ろした。


 その根の下で、誰にも気づかれないまま、小さな穴は、静かに、広がり始めていた。



第270話 循環医療兵団、発足 了

【次回予告】住居の工事が、始まった。

 帰る場所がある者は、戦い方が変わる。


──────────────────────────────────────


【領地収支・白雪月十五日時点】


・所持金:金貨2211枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第270話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:85%(変動なし)

・インフラ:103%(変動なし・循環医療兵団正式発足により組織体制拡充)

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