↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
406/476

 第263話 結束

 外から押されたとき、内側がどれだけ固いかが分かる。


 固さは、力で作るものではない。それぞれが、ここにいる理由を持っているとき、初めて固くなる。


 ――理由が揃ったとき、集団は、組織になる。

 長影月、下旬。


 ドガンが、ヒコを、呼んだ。


「ヴァルク男爵について、少し、全体像が、見えてきた」


「分かりましたか」


 ヒコが、聞いた。


「断定はできない。ただし、これまでの動きを、並べると、一つの絵が、見えてくる」


 ドガンが、続けた。


「蒼鋼の件。取引先への圧力。人材への接触。どれも、フォルテス領を、外から、あるいは内側から、崩そうとした手だ」


「崩す目的が、何か、ですね」


「そうだ。欲しいのは、蒼鋼でも、土地でもない」


 ドガンが、低い声で、言った。


「フォルテス領が、成長するための、仕組みだ」


──────────────────────────────────────


「仕組みを、欲しがっている、ということですか」


 ヒコが、確認した。


「ガルム鉱区領を、持っている。ディルク商圏領も、持っている。あの男には、資源も、流通も、ある」


 ドガンが、続けた。


「ただし、人が、育たない。制度が、根付かない。ヴァルク男爵の領地は、力で抑えているだけで、自然には、育たない」


「だから、フォルテス領の、育て方を、欲しがっている」


「そういうことだ」


 ドガンが、頷いた。


「適正可視化。弟子制度。評議会。あれらは、人を育てるための仕組みだ。それを、金で買おうとした」


──────────────────────────────────────


「ベルン商会との繋がりは」


 ヒコが、聞いた。


「ベルン商会は、資金の流れを、作る役割だろう。ヴァルク男爵が、直接手を出さずに動かせる、中間の存在だ」


「その更に後ろに、別の意思がある可能性は」


「ある」


 ドガンが、答えた。


「ただし、今の段階では、証拠がない。ヴァルク男爵を、証拠で押さえる方が先だ」


──────────────────────────────────────


 その日の午後、評議会が、招集された。


 ドガンの分析が、全員に、共有された。


 評議会の空気が、少し、変わった。


「ヴァルク男爵の狙いが、仕組みそのものだったとは」


 アーヴィンが、腕を組んで、言った。


「ならば、仕組みを、壊させなければ、いい」


「そのためには、全員が、ここにいることが、必要です」


 ヒコが、評議会全体を、見渡した。


「改めて、確認させてください。この領地に、留まる意思は、ありますか」


──────────────────────────────────────


 誰も、すぐには、答えなかった。


 しばらくの沈黙の後、アーヴィンが、最初に、口を開いた。


「俺は、ここで、戦う」


 マユミが、続いた。


「私は、ヒコの隣にいる」


 ガッツが、短く言った。


「建てるものが、まだ、残っている」


 ガデルが、工房の方を向いたまま、言った。


「弟子が、まだ、育っていない」


 ゴルフが、帳簿を見ながら、言った。


「まだ、黒字を、もっと、積み上げられます」


 セリウスが、静かに、言った。


「ギルドが、まだ、根を張り切っていない」


 リアが、淡々と、言った。


「研究は、まだ、始まったばかりです」


 コリンが、言った。


「治せていない人が、まだ、います」


 ミルヴァが、最後に、短く言った。


「私は、影を、続ける」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、その言葉を、一つずつ、静かに、聞いていた。


 理由は、それぞれ、違った。


 ただし、ここにいる理由が、全員に、あった。


「分かりました」


 ヒコが、言った。


「この領地は、みなさんと、一緒に、前へ進みます」


「……これで、ようやく、一つの領地になりました」


 バルドが、小さく、頷いた。


──────────────────────────────────────


 夕方、ドガンが、ヒコに、一言だけ、言った。


「ヴァルク男爵への、正式な対応を、そろそろ、決める必要がある」


「はい」


 ヒコが、答えた。


「証拠が、集まり次第、動きます」


「急ぐな。ただし、遅すぎるのもダメだ」


 ドガンが、言った。


「タイミングが、全てだ」


──────────────────────────────────────


 夜、ヒコは一人、施設の前に立った。


 《可視化》で、領地全体を確認した。


 星形要塞、外堀、稜堡。


 全部の色が、落ち着いていた。


 ただし、その色の中に、以前より、確かな、温かみが、混ざっていた。


 人が、増えた色だった。


 理由を持った人たちの、色だった。


 その色は、どんな石壁よりも、強く見えた。


──────────────────────────────────────


 その夜、ヒコは記録をつけた。


 ヴァルク男爵の全体像、ほぼ判明。狙いは、仕組みそのもの。ベルン商会は中間役。


 評議会、全員の意思を確認。それぞれの理由で、留まる意思あり。


 ヴァルク男爵への正式対応、証拠が揃い次第、実行する方針。


 ペンを置いた。


 外から押されたことで、この領地は、組織になった。


 それが、この領地の、今の姿だった。



 第263話 結束 了

【次回予告】対応の日が来た。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第263話時点】


・所持金:金貨1975枚(変動なし)


【発展進捗・第263話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:85%(変動なし)

・インフラ:103%(変動なし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。