第259話 紅葉月の収支
色づいた葉が落ちるとき、次の季節が、すぐそこにいる。
落ちる葉は、惜しくない。落ちることで、また、春が来る。
――何かが終わることと、何かが始まることは、同じ瞬間に、起きている。
紅葉月、末日。
月次収支の締めが、行われた。
「収穫月に続いて、今月も、外部収入、伸びています」
ゴルフが、帳簿を見せながら、言った。
「領民登録の手続きも、少しずつ、形になっています」
「バルドさんの方は」
「順調です。一ヶ月で、大半の登録が、終わりそうです」
ゴルフが、続けた。
「人口の把握が、できれば、領地運営そのものが、進めやすくなります」
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「予算配分の件は」
ヒコが、聞いた。
「ゴルフとドガンで、配分案を、まとめました」
ゴルフが、答えた。
「各部門の優先度を、数値で整理しました」
「評議会に、かけます」
ヒコが、頷いた。
「来週、提示します」
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「ヴァルク男爵の動きは」
ヒコが、ミルヴァに、聞いた。
「変わらず、静かだ」
ミルヴァが、答えた。
「ただし、止まっているだけ、という印象は、変わらない」
「ハイム子爵は」
「少し、気配が、強くなっている」
ミルヴァが、続けた。
「まだ、証拠はない。ただ、何かが、動き始めているのかもしれない」
ヒコは、その言葉を、静かに、受け取った。
先月の《可視化》での揺れが、頭の奥に、残っていた。
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評議会の終わりに、ヒコが、ふと、言った。
「来月、ミルヴァさんの誕生日ですね」
「長影月の十九日だ」
ミルヴァが、短く、答えた。
「……覚えていたんだな」
「覚えています」
ヒコが、頷いた。
「ルナに、花冠の用意を、頼んでおきます」
「……毎年、律儀なことだ」
ミルヴァが、わずかに、目を細めた。
「祝われることに、慣れていないのですか」
「慣れていない」
ミルヴァが、正直に、答えた。
「……嫌いではない」
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夜、ヒコは一人、施設の前に立った。
工房では、ガデルの弟子が、自分の手で作った工具を、誇らしそうに、磨いていた。
建設現場では、ガッツの弟子が、一人で、測量杭を、打ち込んでいた。
少し前まで、教わるだけだった者たちが、少しずつ、支える側に、変わり始めていた。
《可視化》で、領地全体を確認した。
星形要塞、外堀、稜堡。
全部の色が、落ち着いていた。
ハイムへ伸びる、細い筋が、また、わずかに、揺れていた。
先月より、少し、はっきりしている気がした。
何かが、近づいているのかもしれない。
そんな予感が、先月より、少しだけ、強くなっていた。
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その夜、ヒコは記録をつけた。
紅葉月末。月次収支の締め、完了。
外部収入、安定継続。領民登録、大半の完了が見込まれる。
予算配分案、ゴルフ・ドガンより提示予定。来週、評議会で確認。
ミルヴァ誕生日、来月長影月十九日。花冠の準備を指示。
ハイム子爵の気配、やや強まる。証拠はまだない。
ペンを置いた。
紅葉の月が、終わろうとしていた。
次の月は、この静けさが、続かない気がした。
ヒコには、その予感が、まだ、確信ではなかった。
ただし、目を離すべきではないと、分かっていた。
第259話 紅葉月の収支 了
【次回予告】長影月の声が聞こえた。
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【領地収支・紅葉月末時点】
・所持金:金貨1856枚(+121)
収 入:冒険者固定給 金貨 30枚
勲爵士給与 金貨 12枚
外部取引 金貨 約107枚
ギルド収益 金貨 約38枚
合計 金貨 約187枚
支 出:月次固定 金貨 約46枚
弟子制度運用費 金貨 約14枚
住居拡張見積費 金貨 約 6枚
合 計 金貨 約66枚
【発展進捗・第259話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:85%(変動なし)
・インフラ:103%(変動なし)




