第256話 収穫月の収支
実りの月は、積み上げてきたものが、数字になって現れる。
数字は、嘘をつかない。積み上げた分だけ、そこに、ある。
――ただし、数字には出ないものも、確かに、積み上げられている。
収穫月、一日。
月次の給与支払いが、行われた。
「外部収入、また、伸びています」
ゴルフが、帳簿を見せながら、言った。
「弟子制度の効果も、少しずつ、数字に表れ始めています」
「良かったです」
ヒコが、頷いた。
「ただし、予算配分の軋みも、少しずつ、出ています」
「それも、数字ですね」
「ええ」
ゴルフが、苦笑した。
「良い数字と、悪い数字が、同時に、出てくる月です」
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「ドガンさん、誕生日、過ぎましたね」
ヒコが、思い出して、言った。
「雷鳴月の、四日でしたね」
「ああ」
ドガンが、短く答えた。
「忘れていたか」
「いえ、忙しくて、お祝いの場を、設けられませんでした」
ヒコが、答えた。
「すみません」
「気にするな」
ドガンが、続けた。
「俺は、商人だ。誕生日より、数字の方が、気になる」
ヒコは、その答えに、少し、笑った。
「来年は、忘れません」
「楽しみにはしていない」
ドガンが、わずかに、口の端を上げた。
その言い方に、いつもの皮肉と、わずかな親しみが、混ざっていた。
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評議会で、半年前の検討期限について、改めて、振り返りが行われた。
「王国産業省の、半年の検討期限」
ドガンが、口を開いた。
「あれから、もう、一年近くが、経つ」
「正式な、反応は」
ヒコが、聞いた。
「まだ、ない」
ドガンが、答えた。
「資料を、先手で提出した。それ以降、産業省からは、何の音もない」
「沈黙が、続いている、ということですね」
ヒコが、確認した。
「そうだ」
ドガンが、続けた。
「悪い意味とは、限らない。ただし、良い意味とも、限らない」
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「ヴァルク男爵の方は」
ガッツが、聞いた。
「動きがない」
ミルヴァが、答えた。
「ディルク商圏領の網の起点も、まだ、断定できていない」
「ハイム子爵は」
「変わらず、静か」
ミルヴァが、続けた。
「ただ」
「何か、ありますか」
ヒコが、聞いた。
「分からない。ただ、最近、わずかに、動きの気配がある」
ミルヴァが、答えた。
「気配だけだ。証拠は、まだ、ない」
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「人口も、かなり、増えました。名前と顔だけでは、もう、管理しきれません」
バルドが、帳簿を見ながら、言った。
「移住者、弟子候補、雇用者。人の出入りも、以前より、ずっと、多いです」
「そうですね」
ヒコが、頷いた。
「そろそろ、管理方法を、見直す時期かもしれません」
「名前だけではなく、誰が、どこで、何を担っているか。それも、整理しないといけませんね」
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夜、ヒコは一人、施設の前に立った。
《可視化》で、領地全体を確認した。
星形要塞、外堀、稜堡。
全部の色が、落ち着いていた。
ヴァルクという、太く絡みつく筋。
ハイムという、細く落ち着いた筋。
どちらも、変わらず、そこにあった。
ただし、ハイムの筋に、ほんのわずかな、揺れが走った。
前にも、一度だけ、同じ揺れを、見たことがあった。
ヒコは、その揺れを、しばらく、見つめた。
何かが、近づいているのか。
まだ、判断は、できなかった。
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その夜、ヒコは記録をつけた。
収穫月一日。月次給与支払い、完了。ドガン誕生日、過ぎていたことを確認。
外部収入、着実に成長。王国産業省、正式な反応、依然なし。
人口増加、管理方法の見直しが必要。
ヴァルク男爵、動きなし。ハイム子爵、わずかな気配のみ。証拠なし。
ペンを置いた。
実りの月だった。
数字には出ないものも、確かに、この領地に、積み上がっていた。
第256話 収穫月の収支 了
【次回予告】領民登録制度の話が出た。
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【領地収支・収穫月一日時点】
・所持金:金貨1735枚(+126)
収 入:冒険者固定給 金貨 30枚
勲爵士給与 金貨 12枚
外部取引 金貨 約106枚
ギルド収益 金貨 約38枚
合計 金貨 約186枚
支 出:月次固定 金貨 約46枚
弟子制度運用費(工具・教材等)
金貨 約14枚
合 計 金貨 約60枚
【発展進捗・第256話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:85%(変動なし)
・インフラ:103%(変動なし)




