↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
397/478

 第254話 弟子たちの正式発足

 育てると決めたものは、形にしないと、育たない。


 形にしないままの「いつか」は、いつまでも、いつかのままだ。


 ――いつかを、今日に変える瞬間が、必ず、どこかで要る。

 評議会が、招集された。


 議題は、技能別弟子制度の正式発足だった。


「適正可視化の試験運用から、もう、一年近くが過ぎました」


 ヒコが、口を開いた。


「今日、この場で、正式に、制度として、発足させます」


──────────────────────────────────────


「ガデルさん」


 ヒコが、声をかけた。


「弟子は、決まっていますか」


「決まっている」


 ガデルが、答えた。


「あの、穀物運びの男だ。金属感知の適性を見つけてから、ずっと、工房で見てきた」


「正式に、迎えますか」


「迎える」


 ガデルが、頷いた。


「あいつは、もう、穀物を運ぶより、鉄を見ている方が、よっぽど、目が、輝いている」


──────────────────────────────────────


「ガッツさんも」


 ヒコが、聞いた。


「土質感覚の適性者を、見ています」


 ガッツが、答えた。


「若い男だ。土の硬さを、手で当てる。基礎工事に、ちょうどいい」


「マルティナさんは」


「私も、決めたよ」


 マルティナが、答えた。


「畜産から流れてきた女の子だ。味の違いに、敏感でね」


「エルナさんは」


「畜産の方は、若い男の子です」


 エルナが、答えた。


「土質感覚と、動物への観察力が、両方、強いです」


──────────────────────────────────────


「これで、四部門で、正式に、弟子を迎える形になります」


 ヒコが、評議会全体に、確認した。


「適正可視化は、これで、試験運用から、組織的な運用に、移ります」


「悪くない」


 ガッツが、言った。


「見つけて、終わりじゃなく、育てる場所まで、繋がった」


──────────────────────────────────────


「もう一つ、決めたいことがあります」


 ヒコが、続けた。


 評議会の空気が、少し、変わった。


「個人の給与は、これまでと、変えません」


 ヒコが、言った。


「ただし、部門ごとに、使える運営費を、別に、持ってもらいます」


「運営費、というのは」


 アーヴィンが、聞いた。


「騎士団、近衛、研究魔法、医療結界、錬金鍛冶、土木建築、農業畜産、食料加工

それぞれの部門ごとに、月ごとの運営費を設定します」


「俺たちが、自分で、使い方を決める、ということか」


 ガッツが、聞いた。


「ええ」


 ヒコが、答えた。


「現場が、一番、何が要るか、分かっています」


──────────────────────────────────────


「……現場に、金を持たせるのか」


 ガッツが、わずかに、眉を寄せた。


「危なくないか」


「危なさは、あります」


 ヒコが、認めた。


「ただし、毎回、私が、全部の判断を、下していたら、いつか、間に合わなくなります」


「間に合わなくなる、というのは」


「私一人の決裁では、いずれ、処理が詰まります」


 ヒコが、続けた。


「弟子制度も、同じです。育てるのは、私じゃなく、それぞれの師匠です。予算も、それぞれの部門に、任せます」


「対象は」


 ドガンが、聞いた。


「アーヴィン、マユミ、リア、コリン、ガデル、ガッツ、エルナ、マルティナ。八部門です」


 ヒコが、答えた。


「ゴルフさんは、純利益の一割という形を、続けます。セリウスさんのギルド、ドガンさんの商業ギルドも、これまでと同じです」


「いいか」


 ガッツが、聞いた。


「ヒコは、何を決める」


「施設建設。大型の設備投資。装備の更新」


 ヒコが、答えた。


「この三つだけは、引き続き、私が決裁します」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、しばらく、考えていた。


「帳簿の分け方を、決めておいた方がいい」


 ドガンが、言った。


「人件費。材料費。設備投資。予備費。この四つに、分けて管理する」


「それぞれの部門も、同じ形式で」


 ヒコが、聞いた。


「そうだ。同じ形式なら、後で、比べやすい」


 ドガンが、続けた。


「どこに、無駄があるか。どこに、足りないか。すぐに、分かる」


「いいですね」


 ヒコが、頷いた。


「築城クラスの現場監督みたいなやり方だ」


 ドガンが、わずかに、笑った。


「お前の、本来の仕事だろう」


 ヒコは、その言葉に、少し、懐かしさを覚えた。


「そうですね」


 ヒコが、笑った。


「数字を分けて、見る。それが、一番、得意なことです」


──────────────────────────────────────


「異論は」


 ヒコが、評議会全体に、確認した。


 誰も、何も、言わなかった。


「では、決定します」


 ヒコが、続けた。


「弟子制度、正式発足。部門別運営費、来月から、導入します」


「来月、というのは」


 ガッツが、聞いた。


「準備に、少し、時間が要ります」


 ヒコが、答えた。


「帳簿の形式を、整えてから、始めます」


──────────────────────────────────────


 評議会が終わった後、ガデルが、ヒコに、一言だけ、声をかけた。


「お前、本当に、変わったな」


「変わりましたか」


「最初の頃は、全部、一人で、抱え込もうとしていた」


 ガデルが、言った。


「今は、任せる場所を、選んでいる」


「任せる方が、怖いです」


 ヒコが、正直に、言った。


「ただし、抱え込み続ければ、いつか、私自身が、追いつかなくなります」


「それが、領主になった、ということだ」


 ガデルが、短く言って、工房へ戻っていった。


 工房では、ガデルの弟子になった青年が、初めて、自分専用の工具を、受け取っていた。


 まだ、手つきは、ぎこちない。


 それでも、その目は、真っ直ぐに、工具を見つめていた。


 ガデルは、何も言わなかった。


 ただ、一度だけ、静かに、頷いた。


──────────────────────────────────────


 その夜、ヒコは記録をつけた。


 技能別弟子制度、正式発足。ガデル・ガッツ・マルティナ・エルナ、それぞれ弟子を迎える。


 部門別運営費、八部門に導入決定。来月から開始。帳簿は、人件費・材料費・設備投資・予備費に区分。


 ヒコ決裁項目:施設建設・大型設備投資・装備の三つに限定。


 ペンを置いた。


 育てると決めたものを、ようやく、形にした。


 今度は、その形が、どう育っていくか。


 ヒコには、それを、見守る番だと、分かっていた。



 第254話 弟子たちの正式発足 了

【次回予告】新しい弟子たちが、動き出した。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第254話時点】


・所持金:金貨1609枚(変動なし)


【発展進捗・第254話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:85%(変動なし)

・インフラ:103%(技能別弟子制度・正式発足)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。